最後の挑戦者:原宿

原宿僕、むかし本屋で働いていたことがあるんですよ。

岡田え、書店員だったんですか!?

原宿だから今日は当然のようにいい本と出逢いながら、宝箱も見つけて、完璧な本屋巡りをしたいと思います。

ジュンク堂 中﨑 宝箱については、ぜひお願いします。

岡田10個置いたのに、まだ1つしか見つかってない。

 

期待が高まる中…

原宿まずはここを見ないとですね。1Fの新刊コーナー。

ジュンク堂 森今日はじめて見てくれた…。

原宿僕も書店員だった頃、こんな感じで並べてました。新刊の底に箱を挟んで、底上げするんです。

岡田いきなり書店員目線だ。

原宿あ、この本はすごくよかったですね。

『苦しかったときの話をしようか』
[森岡毅著・ダイヤモンド社]
稀代のマーケターが、大学生になった我が子のために、就活・昇進・転職・起業などキャリア形成について書きためていた文書。

原宿著者が娘さんに語りかけるように書いてらっしゃるんですけど、なんかもうそれがね。ものすごい入ってくるっていうか。僕にも娘がいるんで、すごく共感できます。一番近い人に向けて書いてる本っていうのは、良いなと。

岡田書店員の紹介を聞いてるみたいだ。

原宿そして出た出た、話題書のタワーですよ!

原宿ここですよね、やっぱりね。もうジュンク堂池袋本店といえば、このタワーです。みてください、この立体的な美しさ。

岡田本屋のレポートがうますぎる。

原宿これなんかも、かなりおすすめです。

『たったひとつの冴えたやりかた』
[ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア著・早川書房]
16歳の少女コーティー・キャスは、誕生日にもらった宇宙船で、未知の宇宙へ大冒険の旅に出る。

原宿マジで泣けますよ、これ。

岡田レポートは上手いけど、さっきから読んだ本ばっかりだ。

原宿なんか年をとると、若いときに良かった本を何度も読んじゃうんだよな。昔の記憶を噛み締めて生きていく。

岡田今日は新しい本と出会ってください。

原宿そうだな…

原宿こういうポップの紹介文は、やっぱり読んじゃいますよね。

原宿書店員さんの本への偏愛を感じ取れるっていうのが、本屋に来る醍醐味の一つだと思うんですよ。多分みんなめちゃくちゃ本を読んできた人なんで、そんな人がここまで推してくれるなら……と納得しちゃう。

岡田ジュンク堂 中﨑ジュンク堂 森(目の前に宝箱があるのに、全然気づいてない…!)

原宿そういう風に熟練者の熱を感じることで、どんどん購買意欲が湧いてくるのも、本屋の面白いところですよね。

岡田あの、何か見えませんか?

原宿え? あ、10倍ポイントフェアをやってますね!

岡田そうじゃなくて、宝箱的な…。

原宿え…? あ、あるじゃん!!

原宿本に夢中で、マジで気づかなかった。

岡田宝箱の中身は…

原宿「ヒント」って書いてありますね。

岡田「財宝は、社会の案内人が持っている」

原宿え?

岡田これは、一番大きな財宝…つまり予算が増えるアイテムのありかを示したヒントです。

原宿なるほど、予算が増えるのはありがたいですね。「社会の案内人」って誰だろう…。

原宿気になるけど、このタワーが面白くて出られない。

『くじ引きしませんか? ― デモクラシーからサバイバルまで』
[瀧川 裕英 編著・信山社] 人生に対して運が作用することをどう評価するか。運の平等主義と結果の不平等を多角的な視点から考究する。

原宿「くじ引き民主主義」って考え方があるんですけど。例えば、マンション理事会ってくじ引きで決まるんですが、それでもちゃんと議論ができる。政治もそうあっていいんじゃないか? という問題提起なわけです。これからの時代に重要な概念じゃないかと思っていて、この本はぜひ読んでみたいですね。

 

『あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれない』
[クリステン・R・ゴドシー著、河出書房新社]
旧東側の女性は西側の女性に比べセックスの満足度が高かった!?時代の閉塞感を打破する一冊。

原宿これもすごく興味深いですね。なんか最近、「セックス」っていうものが社会の表側で語られなくなっている気がして。本来は人間の幸せの根本に関わる重要なものなのに、避けて通る人もかなりいるよなと。例えば、僕と岡田さんも、セックスの話をしたことがないわけじゃないですか?

岡田ないです。

原宿話す内容がセクハラ的になると問題ですが、もっとオープンかつ理性的にセックスの話を、できないものですかね? この言い方自体がなんかキショくなっちゃうんですけど。

 

『私たちはなぜ犬を愛し、豚を食べ、牛を身にまとうのか: カーニズムとは何か』
[メラニー・ジョイ 著・青土社]
カーニズムの成り立ちを、社会心理学的視点から分析し、その仕組みを解き明かす書。

原宿確かになんで? なんで犬を愛し豚を食べるの? なんでだろう。

岡田ずっと素直に気になってる。

原宿このタワー、一冊一冊がめちゃくちゃ刺さってきます。ずっといられる。

岡田このタワーだけで終わりそう。

 

原宿やばい、どうしたらいいんだこれ。このタワー、マジで終わらないじゃん。

岡田宝箱のこと忘れてません?

原宿いや、宝箱はさっき取ったし…

原宿あ!? また目の前にあった。びっくりした…

岡田本に夢中になりすぎてる。

原宿マジでわかんなかったな。今回の宝箱は…「召喚」って書いてある。

岡田ベテランの書店員さんを召喚して、原宿さんの興味のありそうな本を紹介してくれます。

原宿じゃあちょっと趣向を変えて、「リトルプレス」を読んでみたいです。

1Fのタワーで長時間を過ごした原宿。書店員を召喚し、その横にある「リトルプレス」の棚に移動します。

 

召喚書店員リトルプレスの担当者です。

原宿リトルプレスって、個人で作ってる本ですよね?

召喚書店員そうですね。最近は個人で作るのが楽しい、という動きが広がっているんです。個人制作とは思えないほどクオリティが高い本が、たくさんありますよ。

『LOCKET 第5号』
編集者・内田洋介による独立系旅雑誌

岡田これ個人で作ってるんですか!?

原宿やばすぎる。こういう本はどうやって見つけてくるんですか?

召喚書店員例えば文学フリマを見に行って、お声がけしたりしてます。

原宿文フリルートがあるのか。

召喚書店員この本なんかもそうですね。

『往復書簡 ひとりになること 花をおくるよ』
[植本一子/滝口悠生著] 写真家の植本一子と、小説家の滝口悠生の往復書簡

召喚書店員そして『すばる』最新号に、文フリの会場でこの本が販売された様子が紹介されてます。

『すばる 2022年8月号』[集英社]

原宿流れるように本を紹介される。

岡田これがプロの紹介か…。

召喚書店員こちらの本なんかは、原宿さんにおすすめですよ。

『大人ごはん Vol.4』[Incline]
食を通して人・社会・文化を考えるリトルプレス『大人ごはん』。最新号は「いろんな状況で食べる」

原宿え!?黒沢清監督のインタビューが載ってるの!? 僕、めちゃくちゃ好きなんですよ。

召喚書店員黒沢さんが、食事についてここまで話されることは滅多にないと思います。映画関連のライターの方が、ツテでお話を伺えたらしくて.…..これもある意味、リトルプレスならではかもしれません。

原宿これ絶対買います。

岡田一撃で仕留めた。

原宿やっぱりこういう棚から、次の業界を担う人材が出てくる気がする。読者としても、あのリトルプレスのときから知ってたよ..…みたいな顔ができて、要チェックのジャンルだと思いました。

 

原宿まだ1Fしか見てない。

岡田キープした本は10冊近くありますね。

原宿三千円じゃ全然足りないんだけど。

岡田宝箱を見つければ、買える本も増えますよ。

原宿そうだった。「社会の案内人」って誰だろう….ひろゆき?

岡田違います。フロアマップをよく見てください。

原宿…あ、5Fは「社会」のフロアだって書いてあるな。

岡田そうです。だから5Fに行きましょう。

原宿謎解きが投げやりになってない?

岡田だって誰も見つけてくれないから。

 

スタート付近で30分を過ごした原宿。キープした大量の本を抱え、最後に予算を増やすべく5Fへと向かいます。

原宿ビジネス書がたくさん並んでる。

原宿本屋で働いていた時は、僕もビジネス書担当だったんですよね。で、こんなふうに、背表紙を棚にピッタリ合わせろって言われてたんです。全部揃えると、めちゃめちゃ綺麗に見えるので、徹底してやってました。

岡田本をちょっと手前に持ってくるってことですよね。お客さんが触るたびにずれるから、揃えるのが大変そう。

原宿それがポイントなんですよ。お客さんが一度手に取った本は、奥まで凹んでる。それでどの本が人気なのか、このテーマがきてんのかな、みたいなのが視覚的にわかるんです。

ジュンク堂 中﨑 買われるまでいってないけど、「気になられてる」本がわかるんですよね。

岡田アナログだけどすごい。

原宿あとは財宝を見つけるだけなのに、「案内人」がわからないな…。案内人って何!?

原宿やっぱひろゆき?

岡田違います。案内してくれる人ですよ。

原宿案内…

岡田地図をよく見てください…

原宿あ!

原宿「ご案内カウンター」だ!!!

岡田ジュンク堂 中﨑ジュンク堂 森やっと気づいてくれた!!

 

原宿ご案内カウンターへ急げ…!

 

原宿ここか…?なんもないけど…

 

原宿あ、この本、なんか怪しいな…

 

原宿本型の宝箱になってる!!!

岡田おめでとうございます!図書カードの贈呈です!

原宿よっしゃあああ!

岡田原宿さんが3人分を総取りです。9千円プラスで、予算は1万2千円になりました。

原宿引くくらい金が増えた。

原宿っしゃあ!

 

書店員時代を懐かしみながら、見事「ご案内カウンター」にて図書カードをゲット。足を運んだ階こそ少なかった原宿ですが、多岐にわたる本を手に取りました。

本を買う

原宿大体買える。こんな豪遊が許されるなんて…。

原宿最高。

感想戦

原宿やっぱり本屋に来ないと、こんなにいろんなジャンルの本を手に取らないんで、本屋は日常的に行った方がいいなと思いましたね、マジで。

原宿ネットだけだと、こんなにいろんな中から選ぶってことはないんで。分母を広げる意味でも、本屋っていうのを絶対使った方がいいなと。

原宿選んでる方の熱も感じられる本屋があるっていうのは、本当に社会の財産ですよ。公共資本ですよ。コモンズですよ。

岡田本がいっぱい買えて上機嫌だ。

原宿あと、宝箱はまじで気づかない。

岡田本屋では本に目がいく。

 

大量の本を抱え、満足げに帰宅していきました。

終了後…

岡田ご協力ありがとうございました。

ジュンク堂 森我々も非常に勉強になりました。今後の棚づくりの参考にしたいと思います。

ジュンク堂 中﨑 宝箱は全然見つからなかったですが、それくらい本に集中してもらえるのは、嬉しかったです。

ジュンク堂 森 でも、誰もダンジョンの最深部、「ふるさとの棚」までは辿り着きませんでしたね。

9Fの最深部には、「ふるさとの棚」というコーナーがありました。

岡田洋書コーナーの奥にあったんですよね。

ジュンク堂 森みんな洋書が見えた途端、引き返してました。配置を考え直した方がいいかな…

岡田あそこに一番大きな宝箱を用意してたのにな。

ジュンク堂 中﨑 なんのアイテムでしたっけ?

岡田「停止」です。終了までずっとふるさとの棚の前で停止してもらう予定でした。

ジュンク堂 中﨑 めちゃくちゃ罠だ。

岡田今回は撮影の都合上、制限時間がありましたが、本屋ってゆっくり過ごしたい場所ですよね。一日中だっていられます。だからちょっと、立ち止まる時間もつくりたいなと思って。

ジュンク堂 森「知らない棚を歩く」という話がありましたが、そういう普段知らない場所で立ち止まるのも、本屋の魅力だと思います。

ジュンク堂 中﨑  これからも、いろんな「宝」との出会いを楽しんいただきたいですね。

立ち止まるのも、ただ歩くのもいい。巨大書店も、街の小さな本屋もいい。
みなさんも、ふらりと近所のダンジョンへ、冒険に出かけてみてはいかがでしょうか。

 

お知らせ:本屋と本を語るイベントをやります

本屋のことをもっと語りたいので、トークイベントを開催します!

「本屋って、ダンジョンみたいだ。 〜本と本屋と積ん読と〜

今回ご協力いただいたジュンク堂書店池袋本店にて、本の魅力から自慢の積ん読本の紹介まで、本に関するいろんなことを岡田と原宿が話します。オンライン配信チケットが500円で販売中です!安すぎる。よければ是非!

*追記:会場チケットは好評につき完売となりました。

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