こんにちは。リモートワーク中の、ライターの加味條です。
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皆さんは、漫画「ドラえもん」のこんな話をご存じだろうか。
のび太の両親は貸家暮らしを脱したい。しかし、家を買うにはお金が足りない。
そこでドラえもんが提案するのが、ドイツの古城を買うことだった。「どこでもドア」があれば、ドイツと日本を自由に行き来できるからだ。ドラえもんとのび太は、早速予算(1000万円)に見合った古城「ミュンヒハウゼン城」を見つけ、両親も下見に向かう。しかし城はあまりに広く、中で迷ってしまったり、掃除が大変すぎたりといった理由で、移住計画はとん挫するのだった。
(※その後、話は思わぬ方向へ進んでいくのだが、それはこの場では割愛させていただく。)
子供の頃に読んで、強烈に印象に残ったエピソードだ。
残念ながら「どこでもドア」はまだ発明されていない。しかし、ここ一年での急速なテレワークの普及により、職業次第では自由な場所で働くことが可能になった。そう、極端な話を言えば日本で働きながらヨーロッパの古城に住むことも夢ではなくなったのだ。
自分で言っててワクワクしてきた。城に住みたい。リモート会議の背景に甲冑とか映したい。
しかし、城に住むとなるといくつかの疑問も生じる。
まずはこれだ。
迷うほど広い城の”間取り”はどうなっているのか、気になる。
何LDKなんだろうか。
そして、これだ。
先述の通り、のび太の両親は城に住もうと一度は試みるも、挫折している。
だがそれはあくまで、漫画の中での話。
現実世界では果たしてどうなのだろうか……?
ところで、あなたは引っ越しをする際、何を見て「家の住みやすさ」を判断するだろうか。
間取り、設備、築年数、駅からの距離……。
引っ越し先を吟味する際には、様々な情報が必要になる。
それらを、見やすくまとめた”資料”と言えば…
そう、物件広告だ。
そこで今回は、実在の城の物件広告を作ってみて、「城の中ってどうなってるのか?」「城って住みやすいのか?」という疑問を解き明かしてみたい。
実際に買える城:ディヴァイザズ城
まずは『ドラえもん』同様、実際に買える城を探してみよう。
ざっと検索しただけでも、ヨーロッパ、北米に売り出し中の城がかなりの数あるようだ。
その中で、特に気になったものがこれである。
ディヴァイザズ城(イギリス)だ。名前が濁点ばっかりでかっこいい。
いったい、どんな城なのか?
早速物件広告にまとめてみたので、ご覧いただきたい。
■ディヴァイザズ城 物件広告
文字が小さくて恐縮である。
A、B、C、Dの項目ごとに、細かく見ていこう。
A.概要
まず、築年だ。この城が最初に出来たのは、資料によると西暦1080年にまでさかのぼる。12世紀にはジョン王やヘンリー3世、エドワード1世など、世界史の授業で出てくる名だたる王たちが訪れたというのだから、めちゃくちゃ由緒ある城だ。その後、破壊と再建を繰り返し、現在の姿になったのは1830年代とのことだ。築190年である。
床面積は、256坪(846㎡)。これは東京ドーム0.02個分の広さになる。もう少しわかりやすく言うと、オリンピックで使うプールぐらいの広さらしい。
ちなみにこれは、僕が今住んでいる1LDK(約44㎡)だ。
これをディヴァイザズ城と並べると…
こうなる。城、デカい。
立地は、ロンドンの東、ウィルシャー。
ロンドン・パディントン駅からグレート・ウェスタン鉄道に1時間乗って、ピュージー駅で降り、そこから更に車で25分間走った場所にある。都市部からのアクセスは最悪だ。
ただ、間取りは驚異の15LDK+2S。
※便宜上1階の物置2つを2Sとしています。地下室も入れれば4S?
詳しい間取りは、次のようになっている。
B. 間取り
まずは地下1階と1階から。
イギリスでは1階を「グラウンドフロア」、2階を「1階」と呼ぶが、わかりやすいようにここでは日本式の呼び方を採用している。
注目すべきポイントは、1階にある「朝食室」「ファミリールーム」という聞きなれない部屋である。
欧米の邸宅では、朝食を簡単に食べる「朝食室」と、ディナーを囲むための「ダイニングルーム」が別々に用意されていることが多い。海外ドラマでよく、食卓で家族が手をつないでお祈りをしているのが「ダイニングルーム」で、シリアルだのオートミールだのをかっこんでいるのが「朝食室」だ。
また、欧米の文化として、家内で子供が入っていい場所と、大人の生活空間をはっきり分ける風習があるらしい。いわゆるリビングルームは大人の社交場であり、子供は入れない。その代わりにあるのが、ファミリールームだ。洋画で、親子がソファに並んでポップコーンを食べながらテレビを観ている部屋が、ファミリールームである。
2階にあるドローイングルームとは応接間のようなもので、これが上で言うリビングルームにあたる。
そして見ての通り、2階~4階には、おびただしい数の寝室が並ぶ。毎日違う部屋で寝ても、1週間で1周できない。特に気になるのが、3回右奥の主寝室だ。なんと、風呂場を経由しないとたどり着けない構造になっている。不便。
また中には、塔の中の寝室(右側の丸いやつ)のように明らかに手狭な部屋もある。おそらくここは、使用人が使う部屋と考えるのが妥当だろう。もともとお城というもの自体が、少人数で済むことを想定していない、ということがわかる。
ちなみに、不動産サイトの画像を確認したところ、2階のロングギャラリーにはしっかり甲冑があったし、ダイニングルームの机はちゃんと長くて燭台が並べてあったし、主寝室のベッドはフリフリの天蓋付きだった。我々が思う「城に求めるポイント」はバッチリ押さえている。素晴らしい。
さて、続いては、設備周りを見ていこう。
C: 設備
築190年のディヴァイザズ城だが、売り出し中だけあってしっかりとリフォーム済みだ。インフラもバッチリ整っている。
さすがにWi-Fiが飛んでいるかはわからないが、工事をすればなんとかなるだろう。(広すぎて、端の方まで電波が届かなそうだが)
セントラルヒーティングを採用している上に、当然ながら暖炉もある。冬でもストーブいらずだ。
ただ、記録によるとこの城は、中世では罪人を収容していたり、近世のイングランド内戦では戦場にもなった場所らしい。当然、死者も少なからず出ていることがうかがえるので、「告知事項あり」、つまり事故物件である。
D. 値段
そして最後に気になるお値段だが……
275万ユーロ。
ん? いくらだ?
日本円に換算すると……
およそ、
3億4千万円。
ふーん。
なるほどね。やるじゃん。
まあ、そういうことらしいです。
さて、ここまでは実際に買えるお城の間取りを見てきたが、次からは少し趣向を変えてみよう。
どうせ実際に買えようと買えまいと結局買えないのだから、どうせならもっと大きくて、もっと夢のある城について見てみたいと思う。
というわけで、ここからは世界的に有名な名城の「間取り」や「住みやすさ」を調べてみたい。