インターネットが消費行動と結びついていないから
今回の調査結果を踏まえて、東京・地方の両方で広告関係のお仕事をされている方に、大阪名物・お好み焼きを食べながらご意見を伺いました。
すると、こういう意見が返ってきました。
「セブ山さんの“インターネットは地方にもあるのか?”という疑問はある意味ではすごく鋭い疑問だと思います。というのも、地方で広告仕事をする際に痛感するのが、インターネットがそこに住む人たちの消費行動と結びついていないということです」
消費行動とは「消費者の行動」のこと。
地方の人は、インターネットと消費行動が直結しておらず、ネットで見かけたものを買ってみようとする行動が起こりにくいそうです。
じゃあ、何を見てモノを買うのでしょうか?
「結局はテレビなんですよね。テレビCMで見たから、テレビで紹介されていたからというのが消費行動のもとになっているんです」
「一応、断っておきますがこれはどっちが偉いとか劣っているとかいう話ではなくて、体験談としてこう感じたという話です」という補足を挟みつつ、話は続きます。
「インターネットを消費行動の参考にしている人は、言い方を変えれば、それだけインターネットをよく見ている人たちということになります。Webメディアは、見に来てくれる人が多いネタを扱った方がページビューを稼げるわけですから、必然的に“インターネットを自分の消費行動の参考にしている人たち”に向けた記事が多くなるわけですよね」
インターネットは東京
「その結果、セブ山さんの言うようにインターネットが東京の話題ばかりになってしまうわけです。そうすると、インターネットから少し距離を置いて見ている人たちはますます“インターネット=東京”というイメージが強くなる。インターネットで話題になっていても、どこか自分とは関係のない遠くの世界の話のように感じて、消費行動から遠のくわけです」
みんなで同じ「インターネット」というものを見ているつもりでいましたが、それを見る場所によってもインターネットのイメージは変わるようです。
世界につながっていると思っていたインターネットは、ただ小さな村の集合体でしかないのかもしれませんね。
「ただ、厳密にいうとインターネットと消費行動の結びつきが強いのは、東京というより東京のまわりの茨城や千葉なんですよね。行こうと思えばすぐに東京に出ることができ、なおかつ車を持っていて郊外のお店にもいける。そういった人たちが一番インターネットとの距離が近いですね。都心に近付くほど、単純に入ってくる情報は多くなるので、地方とはまた違った理由で消費行動から遠のいているようです」
最後の最後で、意外な話が出てきました。
たしかに言われて見れば、IKEAなど車がないとなかなか行きづらい郊外のお店や、車がないとなかなか行くのが面倒臭い関東圏のレジャー施設の話題をインターネットで目にすることも多いような気がします。
つまり、インターネットに東京の話題が多いのは、インターネットを見て消費行動を起こす首都圏の人たちに向けたネタの方が、必然的にたくさんの人に読んでもらいやすいからという「変な実験をせずに最初から聞きに行っておけばよかった」という結論になりました。
インターネットは距離を問わず世界中につながっていますが、皮肉なことにインターネットと私たちの距離感は場所によって異なっているようです。
「インターネット」と一言でいってしまうと何か得体のしれない巨大なものに感じられますが、正体は「小さな村の集合体」に過ぎないのかもしれませんね。
というわけで、「ちょっとネットでウケたからって思い上がるなよカス!」という格言を残しつつ、本日の講義はこれまで!
ご清聴ありがとうございました!
(おわり)
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