ハリー・ポッターシリーズ。
今更説明するまでもないだろう、魔法使いの男の子が主人公の名作ファンタジー小説だ。
小説は読んだことがなくても映画は見たという方も多いかもしれない。
俺も主人公ハリーと同じくらいの年齢の頃にハリー・ポッターに出会い、夢中で読んだ一人だ。
ハリー・ポッターは1~2年に一作のペースで発行されていたので、近い世代の読者はハリーたちとともに青春時代を過ごし、ハリーたちとともに大人になった。なんて、そんな方も多いのではないだろうか。
だが俺の中でハリー・ポッターは4作目、ハリー・ポッターと炎のゴブレットで止まっている。5作目以降は読んでいない。映画も見てない。
ハリー・ポッターが嫌いになったわけではない。今でも大好きだし名作だと思っている。でも4作目より後が読めなかった。これには理由がある。
ハグリッドのせいだ。
ハリー・ポッターにはハグリッドというキャラクターがいる。
ハリーたちの通うホグワーツの森番、ヒゲの大男でハリーの良き理解者だ。俺はハグリッドというキャラクターが大好きで、学校にこんな先生がいたら絶対に楽しいだろうなと思っていた。
ハリー・ポッターシリーズの5作目、ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団が発売された頃だったと思う。
俺は出遅れた。すぐに読まなかった。
親に駄々こねて買ってもらってでもすぐに読むべきだったんだ。でもそうしなかった。
そのせいでネタバレを食らってしまった。
学校にて、今は名前も思い出せないクラスメイトとハリー・ポッターの話になった。そいつはすでに不死鳥の騎士団を読んだという。
そいつはこうぬかしたのだ。
「ハグリッドが死ぬなんてねー」
俺はショックだった。
いいじゃないかネタバレくらい、読めよ。
そう思われるかもしれないが、俺には耐えられなかった。
何も知らずに自分で読んで、自分で見届けるなら良い。だが目の前のアホから適当に告げられたハグリッドの死がショックで仕方なかった。
なんで大好きなハグリッドが死ぬとわかりきっている本を読まなきゃいけないんだよ。
俺のハリー・ポッターはそこで止まってしまった。
それから十年近くたったある日、妹とハリー・ポッターの話になった時にこの話をした。すると妹は言うのだ。
「え、ハグリッド死なないよ?」
……マジ? じゃあ俺のこの十年ちょいは何? あいつが嘘ついたの?
いや、この妹、俺を騙そうとしてるのか? そしてハグリッドが死ぬシーンで悲しむ俺を笑う気だな?
…………もしかして本当にハグリッド死なない?
それからさらに数年たった今でも俺はまだ続きを読めずにいる。妹と元クラスメイトのアホ、どちらを信じればいいのかわからない。
先日、妹から郵便物が届いた。
USJのハリー・ポッターのとこで買ったと思われる、ハグリッドのでかいピンズだった。
特に手紙などは同封されていなかった。
あいつ、俺を試してやがる。