俺は就活中だ。

半年ほど無職を満喫したがお金が少なくなってきたので渋々就職活動を始めたのだ。

先日ネットでハロワの求人を見ていると、ある求人が目に入った。

 

詳細は伏すが、それなりに専門的な仕事でありながら経験不問の求人だった。
おまけに急募ときている。一刻も早く人が欲しいというわけだ。

 

早い者勝ち、そうに違いない。

俺は早速愛車に跨りハロワへの道を法定速度でブッ飛ばした。俺は真面目だからだ。

 

職員にその求人の応募状況を尋ねてみる。すでに数名応募していたが選考はまだのようだ。

出遅れたがまだチャンスはある。すぐに紹介状をもらい、帰って応募書類を書き上げた。

 

郵送して数日後、企業から面接したいと電話があった。書類選考は通過したというわけだ。

この求人は俺のために出されていたのだ。そうに違いない。

 

当日、待ち合わせ時刻から少し前。待ち合わせ場所には俺の他にもう一人いた。そいつも面接を受けに来た者だ。

かわいそうに、俺のために出された求人だとも知らずに。

 

俺はそいつに話しかけた。世間話だ。

「就活大変ですよねー、前職は何をされていたんですか?」

そいつは答えた。答えを聞いた俺はその場に泡を吹いて倒れた。(これは俺の気持ちを表す比喩表現で実際は「そうなんですかすごいですね〜」と返した)

ガチガチ経験者だった。例えるならトイガンメーカーに元軍人が来るような前職だった。

オメー、経験不問の求人にガチガチ経験者きちゃうの、ちびっこ相撲大会にスペースゴジラ出てるようなもんじゃんよ。

話が違うぞ、俺のために出された求人ではなかったのか。

 

だがまだ決まったわけじゃない。相手が有能ならば面接でその能力が出せないようにすればよい。自分を高めるだけが面接対策じゃねえ。

待ち合わせ時刻まで少し時間がある。俺は近くのコンビニへ駆け込んである買い物をした。

 

その後俺達は迎えに来た企業の人に本社へ連れて行かれた。適正検査を終え、休憩後に面接だ。

休憩時間、昼食は各自持参するように言われている。

俺は鞄からベーコンエピを取り出した。さりげなく、しかしベーコンエピをアピールしながら食べた。

そして次に鞄からおにぎりを取り出した。見ろ。ベーコンマヨネーズおにぎりだ。

ベーコンに次ぐベーコン。乱れベーコン。

ギギー! 俺はベーコン人間! 威圧されろ。お前の常識覆れ。

もうお前の頭の中はベーコンでいっぱいのはず。

面接中に「よろしくお願ベーコン」などと口走れ。ガハハ。

 

……面接はそいつからだった。一人ずつだったのでそいつが「よろしくお願ベーコン」と言ったかはわからなかったが、やれることはやった。

ただ、なぜか俺の面接の方がやけに時間が短かった。

 

翌日、俺は不採用の電話で目が覚めた。

結果の連絡が早いのはホントありがたいよね。就活でさ。

 

 

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