本文を読み終わった後で構わない。オモコロでの僕のプロフィール欄を確認して欲しい。下手くそな猫のイラストがアイコンに描かれているはずだ。
この猫にはモデルがいる。僕の実家の飼い猫の「ライ」だ。
先日の土曜日、そのライが永眠した。6歳だった。
その日、一人暮らしのアパートで作業をしていると、僕のスマホが突如鳴り響いた。祖母からだった。電話の向こうで、激しい嗚咽と共に祖母は叫んだ。
「ライが死んだあ!」
「うそやろ!?」
信じられない。ついこの前見た時は元気だったのに。沖縄土産のミミガージャーキーを欲しがって鼻をヒクヒクさせていたのに。母に電話を変わってもらったが、しゃくり上げるばかりで会話にならない。
すぐさま実家へ急いだ。悲しみよりも「なんで」という独り言が止まらなかった。病気で弱っていたなら覚悟も出来たが、いくらなんでも急すぎるじゃないか。
実家に着くと、毛布に包まれたライが居間のカーペットの上に横たわっていた。
眠るように前足を投げ出して、瞼が半分ほど開いている。そばでは母と祖母が泣き崩れていた。僕もその場にしゃがみ込み、ライの体にそっと触れた。
耳の付け根のあたりを指で掻いてやる。普段だったら気持ちよさそうに顔を僕の手に押し付けるのに、ピクリとも動かない。「ライちゃん」と呼びかけてから、深くため息をついた。
翌日の日曜日。僕たちはライをペット火葬場へ連れて行った。
重たいライの体を火葬炉の台に載せ、その上に花束とエサを置く。最後の別れを済ませると、火葬炉の扉は閉じられた。
職員の「送風機が回ってから10秒後に点火となります」という言葉を聞いた途端、母は泣き崩れた。祖母から渡された数珠を握りしめ、僕たちは炉の前で手を合わせた。
それから1時間半後、ライは真っ白な骨だけの姿になった。骨を割り箸で拾い上げる。涙は滲んだが、目から溢れ出すことはなかった。
その後、母たちと別れて一人きりのアパートに戻った途端、涙がボロボロ溢れてきた。
最後のライの姿を思い出すとたまらなくなり、目が痛くなるほど泣いた。こんなに簡単に泣ける男が、なんでこの涙を眠るライの前で見せてやれなかったのだろう。
可哀想なライちゃん。なんで死んじゃったんだ。
健康に悪いからと、ちゅーるも与えなかった。こんなことなら沢山食べさせてあげたかった。香箱座りでくつろぐライの背中を指でつつくと、ニャアと抗議の声を上げる様子が好きだった。もうそんな姿も見れないなんて。
なんで、こんないい子が死なないといけないんだ。
せめて夢でいいから会いたい。
夢の中ならなんだって食べさせてあげるから。蛇口から直接、水を飲ませてあげるから。
だから、もう一度会わせてくれ。
それだけを願いながら眠りについた僕は、ひとつの夢を見た。
会社の上司が「ホビー・フィギュア営業部」に転属されるという内容の夢だった。
なんで。