飽きっぽい性格のおかげか、そこそこいろいろな種類のアルバイトをやってきたと思う
そしてバイトを決める上で毎回重視した部分が「このバイトやってたらなんかお得になりそう」という部分だ。コンビニだったら廃棄の食べ物を持って帰れるとか、そういうやつだ
例えばレンタルビデオ屋でバイトをしていたときは旧作DVDが一本10円で借りられるなどしたもんだから、バイト特典はかなり重要だ
他にも本屋で働いてたときには本が安くなったし、ガソリンスタンドで働いてたときにはインパクトドライバーやトルクレンチ、タイヤチェンジャーなどの買えばウン万もする工具や設備が使い放題だった。あと肉を切る機械を洗う仕事をしてたときは、指がカイジみたいになるリスクが常人の1000倍に跳ね上がっていた。そうだ、だからこれはすぐ辞めたんだ
そんな中でも特にバイト特典が良かったのは映画館だった
ズバリ、映画がタダで観られる
もちろん席が埋まってる映画は観られなかったり、ちょっとした感想文を書かないといけなかったり、シフト表に○をつけた日にしか観られなかったりとある程度の縛りはあり、特に最後の少なくともたくさん働く気概を見せないといけない部分だけは大きな誤算だったが僕の狙いはおおむね当たっており面接の結果が返ってきた日には「ようし、映画観放題だ」と小躍りなどしていた
しかしバイトを初めて一ヶ月もしない内に僕はこのシステムの抱える致命的な欠陥に気付いてしまった
以下に事実を羅列する
・平均的な映画の上映時間、120分
・映画のチケット料金、大人1枚1800円
・映画館の時給、845円
この情報から君は映画館バイトの矛盾に気づいただろうか?
わからなかった人のためにもう少しわかりやすく書いてみよう
・映画1時間=900円
・バイト1時間=845円
そう。バイトで1時間働いて得られる金額より映画1時間観るのに必要な金額の方が高い。そしてこれは、こう言い換えることも出来る
「真面目にバイトしてお金を稼ぐよりもバイト特典で映画を見続けた方が得」と!!
たかが15円と侮るなかれ。120時間後には差額が1800円にまで膨れ上がる!すなわち映画60本観たら1本無料ということだ!!
あ??「タイタニックとかばっかり観てたら元取れないじゃん」だ?うるせぇ!!
プリキュアの映画は70分だぞ、ナメるなよ
バイト代すべてを映画鑑賞につぎ込むことが前提のムチャな計算とはいえ、このバグに気づいた瞬間、オレの中の勤労意欲は弾け、以降バイト前日から徹夜をして勤務時間直前にアルコール9%を飲み干しそのまま布団に潜り込むなどを頻繁に行うようになった
そして目が覚め、通知でいっぱいになったスマホの画面を見るたび思うのだ
「6回観たら1本無料になるユナイテッドシネマってすげぇな」と