ある日、バイトの休憩室にいると突然甲高いアニメ声が聞こえてきた
後輩がスマホゲーのサウンドをガンガンに鳴らしながら休憩室に入ってきたのだ
そして入ってくるなり聞いてきた
「山下さん声優詳しいッスか?」
正直あまり自信はなかったがここで「別に・・・」と返すほど無愛想ではないのと生来の見栄っ張りが災いして「まあまあかな?」と答えてしまった
すると彼は目を輝かせながら
「じゃあ今からボイス流すんで当ててくださいよ!」
などととんでもないことを言う
「いきますね~」
ダメだ、もう止まらない
『~♪』
「どうです?わかります?」
突如始まった声優ドレミファドン
そんなつもりで言ったわけじゃないのに
しかも、まったくわからない
というかなんて言ってるのかすら聞き取れなかったので素直に
「う~ん、ちょっとわかんないなぁ」
とやや気だるそうに、かつ興味がなさそうに答えた
「残念!大原さやかです」
残念!じゃないんだそもそも答えてないんだから
「じゃ!次はどうですか?」
この感じ、まだまだ終わらないらしい
その後も
「佐倉綾音です」「名前は聞いたことあるな~」
「種田梨沙です」「あ~これがそうなんだ」
「坂本真綾です」「ふーん」
と全てが噛み合わないまま不毛な時間が流れていく
このままだと休憩時間いっぱいまで続くような気がしたのでさっさと切り上げることにした
「いやー、やっぱオレ声優ってエンドロールとか見ながらじゃないとわかんなかったみたいだわ!ごめんなっ」
「ハハハッ、じゃあ次いきますね」
無敵かよ
全然伝わってない
どうにかコイツに終わらせたい気持ちを伝えないと
「あーオレあれかもな、女性声優とかあんま聞き分け出来ないみたいだわ、ごめんね」
「じゃあ次は男性でいきますね!」
これは完全にオレが悪い
「浪川大輔です」「あー、うん」
「中村悠一です」「わかる、わかるよ」
「遊佐浩二です」「ウラタロスの人か」
「ウラタロス?」「いや、なんでもない」
相変わらず噛み合わないままだけど、どうやらこれは正解しないと終わらない感じみたいだ
そろそろ一発当てて終わりにしたい
「これは流石にわかるんじゃないですか?」
『~♪』
(あっ!!!!知ってる!!わかるよ!あの、ほら、えーっと、名前が出てこない、ほらたまに新聞のテレビ欄の下の方でさ、子ども店長と一緒にいる!!顔の下半分にやや特徴のある・・・えっとさー・・・・・・・・・・あのーーーーーーー)
「・・・オカリンの人」
「宮野真守です」
「わかってんのよ」
最大のチャンスをオレは逃した
もう正解できる気がしない
「じゃあ次はマジで簡単ですよ」「ホントか~?(終わってくれ・・・)」
マジで、終わってくれ
『オッス、オラ悟空!!』
「野沢雅子!!!!!」
「正解です」
「「はははははは」」
なんだよーーー!そういうこともできんじゃん!!
キミのことちょっとだけ好きになった。ありがとう、今日の休憩はなんだか楽しかったよ
「じゃあ次いきますねー」
終われ