突然だけど、今度の水曜日の夜に飲み会を開こうと思ってる。参加してくれるかな?

 

 こう尋ねると皆さんは酷く狼狽え、ヌガキ(牡蠣のヌガー)を喰わされたような表情を浮かべるだろうが、ご安心を。僕だって同じだ。平日の飲み会など冗談じゃない。

 

 全く、世の中は納得できないことばかりだ。

 

 「赤ちゃんのウンコは炊きたてご飯の香り」なんて例えるくせに「炊きたてご飯は赤ちゃんのウンコの臭い」と言い換えると怒り出すし、空は青いし、先程の水曜日の飲み会も然り。

 

 よってここから数百文字、水曜日の飲み会の悪口を叫ばせてもらうが、近隣の皆さまにはご迷惑をお掛けします。

 

 さて、確かに水曜日はいつもより早く退社できることも多く、平日のオアシス的なポジションを得ている曜日だが、決して休日ではない。

 

 明日も仕事は手ぐすね引いて待っているのに、メガハイボール飲みながら唐揚げ食べて同期の桜を歌えるか?無理だ、どうしても明日の作業がチラつく。

 

 あまり怒っていても仕方がないので、逆になぜ人々は水曜日の飲み会を許容できるのかを考えてみる。

 

 水曜日の飲み会に違和感を抱かないのは、その行事に慣れているからということに他ならない。

 

 学生時代から、平日もバイト先や学校の友達たちと飲んでいたからこそ、社会に出てからも同じように楽しめるというわけで。

 

 そんな青春を放り投げてきた僕たちは、数ヶ月に1回、金曜日に開かれる会社の懇親会などでしか羽目を外すことが出来ない。そうか、答えは案外、スープの冷めない距離に存在していた。

 

 すべては僕に友達がいなかったから。若い娘(ニャン)たちと親睦を深めてこなかったから。あの日あの場所で「おれはソファで寝るからいいよ」なんて気の利いたセリフも言えなかったから。

 

 だから、だから僕は水曜日の飲み会を受け入れられなくなったんだ……、デュ~ン!(探偵ナイトスクープでCMに移行したときに流れる音)

 

 しかし。実は僕も過去に一度だけ、水曜日の飲み会を経験している。

 

 それは3年前、水曜日の仕事終わりのこと。

 

 以前街コンで知り合ったとある男性から突然、二人で飲もうという内容のLINEが届き、小さな居酒屋で夢や仕事について楽しく語り合った。

 

 すっかり意気投合した僕たちは次の休日、隣県までカニ鍋を食べにいったのだが、その帰りの車中のこと。

 

 高速道路走行中という逃げ場のない状況で、天竺のお経よりも有り難いお話を彼から頂戴した。

 

 曰く「高品質のシャンプーや歯ブラシを友達に勧めるだけで、働かずに収入を得られる」という、素敵なビジネスの話を。

 

 以降の展開については、文字数の関係で割愛する。

 

 それはさておき、冒頭の飲み会の誘いだけど、来てくれるだろうか。

 

 後生だから是非来て欲しい、なんと良い儲け話があるんだ。

 僕と一緒にリンパが熱くなるほど儲けて、失われた20年を取り戻さないか。 

 

 

 

 

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