家電の取扱説明書

 

 

 

お次は、テクニカルライティング経験を持つもりれいさん(@_Mori_Rei)。マイナーなジャンルなので知らない人が多いと思いますが、家電などの取扱説明書を書く仕事です。

 

 

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関西在住フリーテクニカルライター。ブログ「もりれいのいつもはらぺこ」にてアホっぽいことを執筆中。

デイリーポータルZに掲載中の記事は『“紅茶占い”を煎茶でやると都市伝説になる』『雰囲気でわかる「囲碁ってあれなにやってるのか」講座

 

 

 

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文章だけでなく、紙面のデザインまでやっていただきました~。取扱説明書の文章は「無駄な文字が1つもない状態にしたら完成」らしく、マジで作り込まれているそう。作るのキツそうだな~!

 

 

各項目にはちゃんと意味があり、たとえば「安全上のご注意」は、事故を起こないように注意喚起するために書かれています。そのため、メーカーが事故情報を入手すると内容が増えることも。

 

 

芳一こと「パーソナルBIWAプレイヤー」も過酷な環境で使う人が多いと、「ギターを与えると、J-POPしか演奏しなくなります」とか「失恋中くらいは好きな懐メロを弾かせてあげてください」とか書かれるようになるんですかね。

 

 

 

 

 

イベントレポ風

 

 

次は、モトタキさん(@motoyaKITO)。「耳なし芳一」をムリヤリ、ライブイベントのレポート風にしていただきました~。

 

 

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紀州生まれのサブカル物書き。アニメとマンガが生きる糧で妖怪にうるさい。教科書に載らない知識を発信して、あなたのサブカルな好奇心を充たします。

 

ブログ「文藝PIERROT~サブカルに光りあれ」を運営。

 

 

 

【盲目のミュージシャン・芳一氏のプライベートライブに突撃してみた】

 

 

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いま、京都でもっともホットな盲目のミュージシャン・芳一氏をご存知だろうか。鬼神すらも涙する歌声は一度聞いてみる価値ありと評判だ。

 

そんな彼が近頃なぜか墓でライブを開催しているとの情報をキャッチした。確かに彼の持ち歌である「平家物語」のもつ物悲しさを発揮するにはぴったりの場所だと言えるが…。

 

実際、現場はどのような空気に包まれているのだろうか。今回、ドラマ撮影現場からゲーム実況イベントまでレポートしてきた突撃ライター・モトタキが、噂の耳なし芳一氏のライブに飛び込んできた。

 

 


 

 

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現場に到着したものの、芳一氏の姿はまだ見えない。早めに到着しすぎたようだ。空には人魂や鬼火が、墓石の周りには青白く光る落ち武者たちがたむろっている。今回のプライベートライブの観客だろうか。話を聞いてみることにした。

 

 

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モトタキ「どうもです! 今日のライブに参加する方ですか?」

 

妙にテンションの高い人魂A「そうでござる。初日を逃しちゃったので、今回は絶対に参加しようと思ってきたのでござる。壇ノ浦で一緒に散った戦友が初日に参加していて、そいつがすげえ泣けたっていうので連れて来てもらったのでござる」

 

モトタキ「平家の落武者の方たちなんですね! そちらの落ち武者さんは前回のライブに参戦したそうですが、いかがでしたか?」

 

すでに感極まって泣いている人魂「芳一、まじ尊いでござる。最高でござるよ。拙者の死に様をあのように厳かに歌いあげてくださるとは、成仏しちゃうーって感じでござる」

 

テンションの高い人魂A「そうそう、今回のプライベートライブは安徳天皇陛下の一声で開催が決まったようでござるよ。さすが我らが信じた王でござる。こういう催しがあるから平家の落武者は辞められないでござるよ」

 

モトタキ「楽しいお時間をお邪魔しちゃって申し訳ないです。とても面白いお話をお聞かせくださり、ありがとうございました!」

 

芳一談義に花を咲かせはじめた落ち武者たちに礼をすると、その場を離れた。

 

この墓で行われるフェスは霊界セレブたちに注目度が高いようだ。今、人気急上昇中の芳一氏がこのライブをやり終えた時、平家物語で平家の亡霊たちを慰撫したことで更なるBIGな男へと成長するに違いない。

 

しかし、肝心の芳一がなかなか来ないのはなぜだろう。情報によると、すでに開始の時間のはずなのだが…。

 

 

「お客様方に残念なお知らせがござる。本日のライブは中止とあいなりもうした」

 

 

豪胆な声が墓場に響き渡る。あちらこちらでざわめきが生まれている。声の主は大柄で見るからに逞しい体つきをした落ち武者だった。

 

 

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モトタキ「恐縮です。なぜ、今回のライブは中止なのでしょうか」

 

威勢のいい落ち武者「芳一の姿が消えたのでござる。それも不思議な話でござるが、耳だけを宙に残していったのでござる。しかたがないので、それを持ち帰ってきた次第。では拙者は主に、この度の報告をせねばならぬので失礼」

 

落ち武者は言うが早いがその場を立ち去っていった。

 

芳一氏の姿が来ないのであれば、これ以上、この会場に留まる必要はないだろう。一度、芳一氏が滞在しているという寺を訪ねてみて、住職にでも話を聞いてみることにしよう。なにかわかるかもしれない。

 

 

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深夜の訪問は失礼過ぎると判断し、朝になるのを待って阿弥陀寺を尋ねた。すると中は慌ただしい様子。どうやら耳をひきちぎられた芳一氏の治療が行われているようだ。

 

 

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モトタキ「あの、大丈夫ですか」

 

涙を流し続ける住職「あ、ああ、私の不手際だったのです。なぜ、なぜ耳の経文を確認してやれなかったのか。ああ…」

 

住職は自責の念で完全に亡失していた。彼と共に芳一氏の治療終了を待つことにした。

 

しばらく経つと、障子がするすると開けられる。治療していた医者が「治療は無事に終わりました。命に別状はありません」と笑顔を見せた。安堵のためか泣き声を更に大きくして崩れる住職。

 

住職はそのままに、芳一氏のいる間へと入る。

 

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モトタキ「このたびは、大変な目に遭いましたね」

 

芳一「いえ、まあ、これぐらいで済んでよかったなというのが正直な感想です。最初は軽い気持ちで、これで今よりももっと上のステージに昇れちゃうなぐらいにしか考えてなかったんですよ。

 

でも、住職が相手は平家の亡霊で、最後の日まで通いつめれば命をとられるぞ、と忠告してくださって。もう、昨晩は死ぬのは嫌だしか考えていませんでした。耳がとられちゃったのも、あんまり覚えてません」

 

モトタキ「たしかに命あっての物種ですね。しかし、無事に今回のライブを生き延びることができた。今後も音楽活動は続けていく予定でしょうか」

 

芳一「世間には懲りないなって思われるかもしれませんが、ボク的にはここで止まるわけにはいかないんですよね。正直、音楽を失うと、ボクは生きる意味がないんです。目が見えてないからってこともありますが、歌うために生きてるんですよね。

 

まだ歌える。なら歌うしかない。この耳の傷が癒えたら、これからもどんどんライブをやっていこうと思います。もっと多くの人にボクの歌声を届けていければなって、そう考えています」

 

モトタキ「それは楽しみです。噂の歌声、今回は聞きそびれてしまったので、次の機会に期待しております」

 

芳一「ありがとうございます。今日から、生まれ変わった気持ちでやっていきます」

 

これが、後にその名を千年以上も残す琵琶法師「耳なし芳一」の新たなる門出の瞬間だった。

 

 

イベントレポ風ということで「ライブを楽しむ一般客(人魂)の声を紹介 → 関係者(住職、芳一)の話を聞く」という展開に。第三者の意見、感想を入れることで、臨場感が伝わりやすくなるそうです。

 

 

芳一にはマネージャーも何もいないから、いくら誇張してもNGが出ない。むっちゃ楽」とのことで、芳一がむっちゃアツいバンドマンみたいな設定になっています。キャラの崩壊っぷりがスゴい……!

 

 

ちなみに、モトタキさんの解釈によると、耳なし芳一は成功を夢見る才能ある盲目の男を主人公としたホラー設定の作品で、ストーリーは「芳一を殺そうとする現世を超越した権力者(平家の怨霊)と、特殊能力を持つ人間(住職)が対決する」という厨二設定

 

作家がその気になれば、ラノベ化も可能だろう、とのこと。マ、マジっすか……?

 

 

 

 

 

 

学術メディア

 

 

次は、オピニオンサイト「SYNODOS」の編集・山本さん。社会問題、政治動向などを扱う同サイト風にしてもらいました。

 

 

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「山本ぽてと(@YamamotoPotato)」名義でフリーライターとしても活動中。最近の取材は夜間中学と日米地位協定。

 

 

【「耳なし芳一」事件から考える平家への亡霊対策とは】

 

 

先日、琵琶法師の男性の耳が、平家の亡霊によって切り取られる事件が発生した。お経を身体中に書く人々が事件の影響で増加するなど、亡霊対策が話題になっている。今回は、平家亡霊研究の第一人者である〇〇氏に、亡霊の生態と、今後の対策についてお話を伺った。(聞き手・構成/山本菜々子)

 


 

 

 

――まず、平家の亡霊の実態について教えてください。

 

1185年に、下関海峡の壇ノ浦で、平家と源氏の合戦が行われました。その後、壇ノ浦周辺の岸や海岸では、「闇夜に無数の青い炎が浮かぶ」「合戦の雄叫びのような大声が聞える」といった怪異が報告されます。また、源頼朝の落馬も平家の怨念として噂されました。

 

とはいえ、その怪異のうち、平家の怨念が原因である確率は1割にも満たないと言われています。ほとんどは、自然現象や偶然を「平家の怨念だ」と勘違いしている場合がほとんどです。

 

たとえば、甲羅に平家の顔を持つと言われる「平家蟹」などは有名な例ですが、この種は日本以外の北西太平洋でもその存在を認められています。平家との関わりはかなり薄いでしょう。源頼朝の落馬も、平家というよりは源義経の怨念ととらえた方が自然です。

 

以前の平家は、夜中に通りかかる舟を沈めようとしたり、泳ぐ者を海に引きずりこむなど、悪質な行動で知られていました。しかし、墓場や寺の建築が進み、定期的に仏教の法要が営まれるなどの対策が取られると、怪異は年々減少しています。1225年ごろからは、ほぼ横ばいと言えるでしょう。現在の平家の亡霊が起こす事件は、ほとんど人に害を及ぼさない軽微なものです。

 

 

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――怪異が減少する中で、今回のようなショッキングな事件が起こったのですね。亡霊対策のエキスパートとも言える僧侶がサポートしていたにも関わらず、平家の亡霊によって被害者の耳が切られてしまいました。このような事故を防ぐことはできるのでしょうか。

 

まず、前提として今回のケースが非常に珍しいことを理解しておいてください。

 

被害者の住んでいた阿弥陀寺は、平家の亡者を鎮めるために建てられたもので、亡霊が多く生息する場所でした。また、亡霊が殿様のもとに連れていきたいと思うほど、被害者は琵琶の才能を持っており、平家の亡霊が感情移入してしまう「壇之浦」が得意であったと聞いています。その上、目が見えなかったことにより、亡霊と気が付かずにコンタクトを何度も重ねてしまいました。さらに、全身にお経が書かれているのかどうかも、自身で確認できない状況もありました。これほどの条件が揃った上で、事故が起こったのです。

 

 

――現在、都ではお経を体中に書く人が増えていますが、この対策についてはどう思われますか。

 

「お経を書かなければ、子どもの耳を切り取られる」と煽るような業者も出てきていると聞きますが、過剰な対策と言わざるを得ません。繰り返しますが、今回のケースはかなり珍しいものです。都に住んでいるような一般の方々を、平家が狙うことはほとんどないと言えるでしょう。琵琶も弾けない、平家物語も語れない子どもであればなおさらです。

 

もしどうしても心配なのであれば、良心的なお寺でお守りをもらい、家の玄関につるしておくなどの対策は考えられるでしょうね。

 

 

(その後、怪異と自然現象や偶然を見分ける方法、平家の亡霊による怪異に悩まされた場合、どのような専門機関に相談するべきなのかなどを聞いてゆく。)

 

 

マジメなメディアだけに、怪談と組み合わせるのにかなり苦労したそう。「平家幽霊の怪異を、外国人犯罪やテロリズムに重ね合わせていると、思われないような展開にしたかった」としていましたが、組み合わせがぶっ飛びすぎて……あまり理解できませんでした。専門としているライターならではの悩みなんでしょうか。

 

 

感情的な意見を提示せず、エビデンスに基づいて書くのがモットー。今回は「芳一の事件はショッキングだが、統計的に減少する平家の怪異に対し、過剰な対策を取らない」ことを主張した書き回しで、感染症対策のような体裁になっているそう。

 

 

 

 

少女漫画

 

 

 

お次は少女漫画雑誌で仕事をしているライターさん。

 

 

 

 私、阿弥陀寺の和尚☆ おっちょこちょいなのがたまにキズ。実は琵琶法師の芳一くんのことが気になって仕方ないんだ。目は見えないけど、弾き語りがとっても上手なの!

 

 最近、芳一くんの様子がおかしくて…。なんと知らないうちに平家の亡霊のところに通ってたみたい! このままじゃあ芳一くんが殺されちゃうかも! それを防ぐため、芳一くんの体に、般若心経を書いたんだけど、耳には書き忘れちゃって…。

 

 亡霊がやってきて、芳一くんの耳は取られちゃったけど、命は助かってよかった☆

 

 

これは少女漫画のあらすじ紹介風にした文章。雑誌に掲載する場合、紙面の都合があるため、こんな風に短い文章に恋愛要素を入れ、主人公の性格を紹介する必要があるそう。登場人物が男しかいないせいで、住職が一途に想いを寄せるBL作品になってます。

 

なお、今回は披露できませんでしたが、少女漫画系の仕事をしていると、常陸院(ひたちいん)みたいなカッコいい苗字をでっち上げるスキルが付くとのこと。というか「少女漫画好きとは、そういう能力を持った生物」らしいですよ。マジで……?

 

 

 

 

まとめ

 

 

 

 

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……というわけで、この記事はこれでおしまい。ネットを調べると「これだけ知っておけばカンペキ! 文章を書くための3つのコツ」みたいな記事がホイホイ出てきますが、実際にはジャンルによってこれだけ差が出るんですね~。書くときに考えてることが違いすぎるので、専門の人の文章はマネできる気がしません。

 

 

ちなみに、ライターでなくても文体模倣をする機会はあります。ビジネスメール、結婚式のスピーチの台本などが好例ですね。筆が進まくなって「自分には文章力ないんだ……」と悩んだ経験のある人は多いのではないでしょうか。ホントは文章力うんぬんじゃなくて、まだ書き慣れてないからかもしれませんよ。

 

 

 

 

 

 

さて、僕はそろそろ仕事に戻って別の記事を書こうと思います。

 

 

 

 

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え~と、内容は「かわいいねこ動画を紹介」か。

 

 

チャチャっと終わらせるぞ~!

 

 

 

 

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小汚いオッサンが書いてても、みんな気付かないんだろうなあ……。

 

 

 

(おしまい)