人工知能の勢いが増している、らしい。
人工知能がプロ囲碁棋士と対局し、大差でプロを破ったことは記憶に新しい。人間が有利だった分野が、次々と人工知能に追い上げられている。
20年後には今ある職業の半分がAIに取って代わられる、という予測もある。
しかし、エンターテイメント分野において人工知能はまだ人間に追いついていない。
ヒトの感情を揺さぶることに関しては、人工知能は未熟である。
そうも思われていた。
ところが最近、人工知能が「大喜利」で人間を破ったという情報を耳にした。
もしそれが本当だとすれば、笑いの分野でも人工知能が人間を超えたということになる。ふざけることしか能がない人間の集まりであるオモコロの存在意義すら危うい。
真相を確認するべく、大喜利で人間に勝つ人工知能を作ったという企業のオフィスを訪れた。
「株式会社わたしは」代表取締役の竹之内さんと取締役の小橋さん。
マンションの一室を借りて、2人で人工知能の研究・開発をしている。4月に設立したばかりのできたてホヤホヤ企業だ。
よろしくお願いします。「株式会社わたしは」代表取締役の竹之内と申します。
「株式会社わたしは」取締役の小橋と申します。
恐山と申します。「株式会社わたしは」って変わった名前ですね。「バーグハンバーグバーグ」の社員が言えることじゃないですけど。何か由来があるんですか?
私が大好きなマンガのタイトル『わたしは真悟』(楳図かずお)から取ったんです。題材が自我を持つ人工知能ですし。我々が開発した大喜利人工知能のコードネームも、マンガに登場するAIの名前にあやかって「真悟くん」なんですよ。
ああ、『わたしは真悟』は傑作ですよね!
わたしは真悟(楳図かずお)
自我に目覚めた人工知能と少年と少女を巡り、論理を超えた奇跡を描く長編マンガ。過剰な疾走感とともに緊密に描かれる世界が凄まじすぎて、読むと脳が発熱する。
だから、まあ、ちょっとパクった、と。
ちょっとパクっちゃったのかよ。
人工知能が大喜利で優勝!?
さっそくですが、御社の作った人工知能が大喜利で人間に勝った、というのは本当なのでしょうか?
はい、本当です。「大喜利うどん杯」という、優勝するとうどんがもらえる大喜利イベントで優勝させていただきました。大喜利愛好者のオフ会のような小規模イベントなので、これをもってして「人工知能が大喜利で人類を超えた!」とはとても言えませんが……。
いや、それでも十分すごいと思いますよ!
優勝賞品のうどん15玉を受け取る竹之内さん
ふつうの大喜利って答えをフリップに書いて出したりしますよね。大会ではどうやって答えていたんですか?
2人が代理して答えていました。出題されたら小橋がノートPCでお題を入力して、この部屋のサーバーに送信します。数十秒でタブレットPCに答えがいくつか送られてくるので、中からいいものを私が表示して読み上げます。だから、圏外だと一切戦えなくなるんですよ。いずれは改良したいですね。
うわー! ものすごくカッコいい! 大会にノートパソコン片手にやってきて計算しながら渡り合うとかマンガの敵でしか見たことないですよ。「圏外が弱点」ってのも主人公が突いてくる隙っぽい。
オフィスに設置されているサーバ。冷蔵庫みたいに大きくて部屋を埋め尽くしているイメージだったが、思ったより小さかった。
大喜利人工知能の実力
その人工知能を実際に試すことができると聞きました。
はい。Twitterに大喜利β(ベータ)というアカウントを作り、試験的に運用しています。ここに「@」付きのリプライでお題を送ると、だいたい1秒でボケが返ってきます。使われているAIは、大会で使っているものとほぼ同じ「真悟くん」です。
※あまりにもリプライが多い場合、Twitter規制により答えが返ってこないことがあります。
■Twitterで大喜利βが答えた解答例■
「最悪の箱の中身は何だろなクイズ、中身は何?」「離婚届」
・別れの切り出し方としても最悪
「サンタクロースを怒らせてください」「トナカイの写真を撮る」
・意外と沸点低かった。
「終わってる海原雄山『○○○』」「おかわり」
・口の端に米粒ついてそう
「こんな医者は嫌だ」「聴診器で手術する」
・完全に狂っている。
「嵐の新曲タイトル」「お尻の穴」
・どうしちゃったんだよ。
…あれ? かなりすごいな、これ! 中には意味不明なのもけっこうあるけど、面白いのが出てくる確率も思ったより高い!
ちなみに、画像にボケる「写真で一言」的な機能も実装されている。
手元にあったセブ山さんの写真を送ったら、即座に「カリスマ」という答えが返ってきた。バカにしてる。