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という耳慣れない競技を皆さんご存知でしょうか? こんにちは、オモコロ編集長の原宿です。

 

 

 

 

 

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こちらは鳩です。しかも由緒ある血統書付きの良血鳩。日本鳩レース協会の会報には、鳩の調教の仕方などが書いてあってなかなか興味深いのですが、掲載されている鳩は1羽で120万円ぐらいするケースもあり、「鳩一羽にそんな大金出す人いるんだ!」という新鮮な驚きに包まれます。

 

 

僕は競馬が趣味でして、過去に自動車教習所に通うために親から借りた20万円を全て馬券に使い込んだことがあるのですが、120万円の鳩は僕がパクった教習場代のおよそ6倍です。しかも鳩レースは競馬と同じく血統が重要なスポーツだとか……。こんな高い鳩買わなくても、公園で捕まえてきた鳩を出走させりゃいい気がするんですが、そもそも「鳩レース」ってどんな競技なのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

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そこで冒頭の写真にもありました、上野にある日本鳩レース協会さんに実際に聞きにやってきたというわけです。上野公園からほど近い場所にあるので、たまたま通りかかって違和感を感じた経験のある方人も結構いるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

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今回は協会の常任理事で、ご自身もレース鳩の育成を手がける小黒良作さんにお話を伺うことができました。

 

 

icon_h (2) 本日はよろしくお願いいたします! 僕、レース鳩を見たことがないんですが、実際に鳩を見せていただくことは可能でしょうか?

 

 

icon_k (1) はい、そう思って鳩を連れてきたんですよ。

 

 

 

 

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icon_h (2)おおお!これがレース鳩……! 何となく普通の鳩より表情に気品がある気がしますね。

 

 

 

 

 

【比較画像】

 

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icon_k (1)レース鳩は公園にいる土鳩(どばと)と比べて、骨格や脚などが見るからに強健です。比較してみるとハッキリその違いが分かるかと思います。

 

 

icon_h (2)確かに! ガタイが良くてエリート感がすごいです。高いレース鳩を買わなくても、公園の鳩を育てればいいんじゃ?と思ってたんですが、こうして比べると明らかにレース鳩の方が強そうですね。

 

 

icon_k (1)どちらも鳩であることに変わりはないのですが、レース鳩は長年の品種改良により帰巣本能や飛翔能力が遥かに向上しています。それに公園の鳩は病気の予防をしてないので、扱いには注意してください。

 

 

icon_h (2)そもそも捕まえるなって話ですね。鳩レースは競馬と同じで血統が大事だと聞いたことがあるんですが、やはりそうなんでしょうか?

 

 

 

 

 

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「非常に重要ですね」

 

 

 

 

 

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「力強い………」

 

 

 

 

icon_k (1)レース鳩は血統によって「長距離に強い」「悪天候に強い」「風に乗りやすい」など、色々な適正が決まるんです。オーナーがどういう鳩を育てたいかにもよりますが、まずは自分好みの血統の種鳩(たねばと)から全てが始まると言っていいでしょうね。

 

 

icon_h (2)競馬にも同じく短距離に強い血統、ダートに強い血統、雨馬場に強い血統とかありますもんね。鳩レースには競馬で言うディープインパクトみたいな伝説の最強鳩っているんですか?

 

 

icon_k (1)そうですねぇ。ディープインパクトというのは1頭の馬の名前ですが、レース鳩の血統には、その鳩を育て上げたオーナーの名前がつくことが多いんです。なので有名なところで言えばモーリス・デルバールとか……

 

 

icon_h (2)デルバール……

 

 

icon_k (1)短距離レースで言えば、やはりヤンセン兄弟の鳩が有名ですね。

 

 

icon_h (2)すいません、ちょっとヤンセン兄弟のお話を読者に伝える自信がないので、一度「鳩レースとは何ぞや?」という基本的な質問に立ち戻らせてください!

 

 

 

 

 

鳩レースってなに?

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icon_k (1)実際のレースに例えてお話しましょう。鳩レースの大きな大会の一つに、「東日本稚内グランドナショナル」というレースがあるのですが。

 

 

icon_h (2)競馬で言うG1、ジャパンカップや有馬記念のような格のレースということですね。

 

 

icon_k (1)はい。このレースが開かれる時、まずトレーナーは育てたレース鳩を、関東地方の鳩舎(きゅうしゃ)からスタート地点の稚内へと連れて行き、そこで一斉に鳩を放ちます。

 

 

icon_h (2)一斉に!

 

 

 

 

 

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実際のレーススタート、放鳩(ほうきゅう)の様子。

 

 

 

icon_k (1)二千羽以上の鳩が、大きな羽音を響かせて空に舞い上がっていく瞬間は、言葉にできないほど壮観です。

 

 

icon_h (2)すごい迫力! ヒッチコックの「鳥」みたいですね!

 

 

icon_k (1)あれは鳥が人を襲う映画ですけどね。

 

 

 

 

 

img_hato02

 

 

icon_k (1)遥か遠く稚内の空に放たれた鳩たちは、「帰巣本能」により自分が生まれ育った鳩舎へと帰ってきます。約1000~1200kmの道のりを2日かけて飛び、故郷へと戻ってくるんです。

 

 

icon_h (2)1000kmを2日でって結構なスピードですね。しかも間違えずにちゃんと自分の家に帰ってくるなんて……。家から1000kmも離れているのに、鳩はなぜグーグルマップも無しに自分の生まれた場所が分かるんですか?

 

 

icon_k (1)鳩の帰巣本能については、育った場所の太陽の位置と、スタート地点の太陽の位置のズレから、巣の方向を知るという太陽コンパス説。あるいは地磁気をとらえて巣の方向を知るという説もありますが……。実は詳しいことはまだ解明されていません

 

 

icon_h (2)えっ……よくわかんないけど、なんか帰ってきちゃうんですか!?

 

 

icon_k (1)帰ってきちゃうんです。そのなんか帰ってきちゃうまでのスピードを競うのが、鳩レースです。

 

 

icon_h (2)鳩の帰る才能すごすぎるな……。

 

 

 

 

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icon_k (1)レース鳩のつけている個体認識用の足輪には、ICチップが埋め込まれています。これを鳩舎に設置してある記録機が即座に認識して、帰還タイムを自動で計測します。

 

 

icon_h (2)なるほど、そのタイムの速い鳩が……っと、ちょっと待って下さい。スタート地点は同じですが、それぞれの鳩の帰る場所はバラバラではないですか? それだと単純に走破タイムの速さでは競えないのでは?

 

 

icon_k (1)はい。なのでスタート地点からそれぞれの鳩舎までの距離を正確に測定し、帰還までに要した時間で割ることで、鳩の1分間あたりの平均分速を割り出します。鳩レースはその分速が一番速かった鳩が優勝ということになります。

 

 

icon_h (2)なるほど。総距離でも全体のタイムでもなく、平均的に飛び続けたスピードを競う競技なんですね。

 

 

icon_k (1)あとは「帰還率」などのデータもとりますね。鳩レースは全羽が無事に故郷に帰れるわけではなく、途中で外敵に襲われて命を落としたり、方向を見失って迷い鳩になってしまったり、かなり過酷なサバイバルレースなんですよ。

 

 

icon_h (2)外敵というのは、野良猫とかですか?

 

 

icon_k (1)多くの場合はハヤブサやオオタカなどの猛禽類ですね。最近は猛禽類の個体数が増え、エサの減少からレース鳩を襲撃することが増えてきたと感じています。猛禽類に追いかけられると、鳩たちはパニックになって方向感覚を見失ってしまうんです。

 

 

icon_h (2)そういった数々の障害をくぐり抜けて、鳩たちは生まれた場所に帰ってくるんですね。「帰ってくる」って、何か熱いですねえ。

 

 

 

 

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icon_k (1)そうなんです。我が子のように愛情をかけて育てた鳩が、遠くの空から生まれた鳩舎へと帰ってくる瞬間……これは何度見ても胸に熱いものがこみ上げてくる光景です。時間にしたらわずか5秒~10秒ぐらいの出来事なんですが、この瞬間の感激、感動というのはそれはそれは凄いですよ。

 

 

icon_h (2)いいな~。

 

 

icon_k (1)鳩という生き物の素晴らしさ、命の尊さを、理屈ではなく心で感じますね。鳩のヒナもすごく可愛いんですよ。今、ちょうど鳩舎にヒナがいるので、触ってみませんか?

 

 

icon_h (2)ぜひ!

 

 

 

 

 

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鳩レース協会には『こち亀』の秋本治先生のサインも。鳩レースのお話は190巻に掲載されています。

 

 

 

 

 

 

鳩のヒナあったかすぎ問題

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icon_k (1)こちらが鳩舎です。

 

 

icon_h (2)完全にうちより陽当りいいですわ。

 

 

 

 

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icon_k (1)そして、こちらが鳩のヒナです。

 

 

icon_h (2)あんれまあ! 意外と大きい!

 

 

 

 

 

 

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icon_k (1)鳩は飼い主の匂いや足音、口笛の音なんかをちゃんと聞き分けるんですよ。可愛いですよね。

 

 

icon_h (2)ひー! なんと無垢な瞳……

 

 

icon_k (1)手のひらにのせてみてください。

 

 

 

 

 

 

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あったか!

 

 

鳩のヒナ、ちょうどレンチンされた牛の金玉ぐらいあったかいです。

 

と言っても、レンチンされた牛の金玉を触ったことはありませんが、これは……この感触は、そう……

 

 

 

 

 

 

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(THE LIFE)

 

 

 

 

 

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まさに命……命そのもの感がすごい……

 

 

 

 

 

icon_k (1) 私は幼い頃から鳩を育てることが、子供たちの情操教育にもいいのではと考えています。鳩レース協会では実際、小学校に飼育用の鳩を寄付したりもしていますよ。

 

 

icon_h (2)確かにこの感触はたまらんですねえ。鳩って何を食べて大きくなるんですか?

 

 

icon_k (1)普通、鳥類のヒナは親鳥が昆虫などを与えて育てますが、鳩は『ピジョンミルク』という特殊な液体で子育てするんです。

 

 

icon_h (2)ピジョンミルク?

 

 

icon_k (1)はい。鳥類にはほ乳類のようなお乳を出す機能はないのですが、鳩だけは「素嚢(そのう)」という器官からピジョンミルクを出して、ヒナに与えることができるんです。成分も脂肪とタンパク質に富み、ほ乳類のミルクと似た物質です。

 

 

icon_h (2)へえー! そのミルクはやはりメスが与えるんですか?

 

 

icon_k (1)いえ、オスもメスもピジョンミルクを出すことができます。

 

 

icon_h (2)オスもおっぱい出すんだ!

 

 

icon_k (1)厳密には「おっぱい」ではないんですけどね。

 

 

icon_h (2)オス鳩のイクメンぶり、今の時代には評価されそうですね。大人になってからのレース鳩の食事はどういう感じなんでしょうか? やっぱり豆?

 

 

 

 

 

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icon_k (1)こちらが通常の鳩のエサです。とうもろこしや麻の実、色々な植物の種など、栄養バランスの考えぬかれた特別ブレンド飼料となってます。

 

 

icon_h (2)公園や駅にいる鳩が見たら、「うまそすぎ!」ってなる感じの豪華ディナーかもしれませんね。僕も食べてみていいですか?

 

 

icon_k (1)人間の口には合わないと思いますが……

 

 

icon_h (2)朝メシを食べてないので、多分今ならいけるはずです!

 

 

 

 

 

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かってえ。

 

 

ただただ堅い。そして青臭い。グラノーラ感覚でいけるやつかと思ったら、全く違いました。鳩ってこんなカチカチの青臭いエサ食べてるんだなあ。

 

 

 

 

 

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icon_k (1)レース鳩はアスリートですので、主食の他に「鉱物飼料」や「塩土(えんど)」「レンガ」などを与えてミネラルを補給してやることが大切です。

 

 

icon_h (2)いやレンガって家の素材じゃないんですか? いよいよ鳩という生き物がよくわからなくなってきました。

 

 

icon_k (1)全ては長距離を跳び続けるスタミナやスピードを鍛えるためです。他にプロテインやニンニク、蜂蜜やオリーブオイルを与える人もいますね。オリジナルのエサへのこだわりも、レース鳩を飼育する上での楽しみの一つですよ。

 

 

icon_h (2)ヘタしたら、人間よりいいエサ食べてる鳩がいそう。

 

 

 

 

鳩レースの賞金っていくらなの?

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icon_h (2)競馬の大レースでは1億円を越える賞金が出ることもザラですが、鳩レースで優勝したらどのくらいもらえるんですか?

 

 

icon_k (1)賞金はありません。

 

 

icon_h (2)えっ?

 

 

icon_k (1)賞金はありません。

 

 

icon_h (2)お米券が?

 

 

icon_k (1)お米券もありません。

 

 

icon_h (2)マジの0円ですか???

 

 

icon_k (1)0円です。鳩レースで得られる報酬は、ほとんど名誉だけです。

 

 

icon_h (2)え~~~~~~!?

 

 

 

 

 

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鳩レース史に燦然とその名を残す殿堂入りの名士たち。残るのはお金ではなく、名誉だ。

 

 

 

 

icon_k (1)ただしそれはあくまで国内の場合で、海外では高額賞金や高級外車などが賞品で出るレースもあります。

 

 

icon_h (2)競馬で言うドバイワールドカップや、凱旋門賞のようなビッグレースがあるんですね。

 

 

icon_k (1)なかでも中国での盛り上がりは凄いですね。中国のお金持ちのオーナーは、優秀なレース鳩を5000~6000万ぐらい出して買うこともあります。

 

 

icon_h (2)ごっ……鳩1匹にですか!? 

 

 

icon_k (1)良い鳩というのはそれだけの価値があるんですよ。台湾では過去に高額のレース鳩にワナを仕掛けて誘拐し、身代金を要求した事件もありました。

 

 

icon_h (2)鳩の誘拐事件まで! 競馬でも昔、シャーガーという馬が誘拐された事件がありましたが……。どこの世界にも悪い人はいるんですね。

 

 

icon_k (1)鳩の美しさを理解すれば、そんな気持ちには決してならないと思うんですがね……。

 

 

icon_h (2)確かに……さっきのヒナは可愛すぎて誘拐したくなりましたが……。今後の鳩レース業界の展望などはあるんでしょうか?

 

 

icon_k (1)やはり参加者の高齢化という問題がありますので、積極的に若いプレイヤーの参加を促したいという思いがあります。子供たちに鳩と鳩レースの素晴らしさを知ってもらえるような機会をどんどん作っていきたいですね。また鳩は平和の象徴でもありますので、広島や長崎の平和記念公園から鳩レースをスタートさせるなど、平和のために鳩レースができることを探していきたいです。

 

 

icon_h (2)鳩ってオリンピックの開会式でバーッと飛び立つイメージがあるんですけど、やはり東京オリンピックでも飛ぶのでしょうか?

 

 

icon_k (1)はい、そのお話はすでにいただいてはいるのですが……例の競技場の問題がありまして……

 

 

icon_h (2)あっ

 

 

icon_k (1)ですので、まだどういう形になるかはハッキリわからないですね。

 

 

icon_h (2)言いづらいことを聞いてしまい申し訳ありません。最後にひとつ質問です。この記事、「ダービーロード」という競争馬育成ゲームのPR記事なんですが。

 

 

icon_k (1)はい。

 

 

icon_h (2)競馬の世界には、「ダービー馬のオーナーになる」「3冠馬を生産する」「凱旋門賞を勝つ」というような夢がありますが、小黒さんがいつか鳩レースで達成したい夢はありますか?

 

 

icon_k (1)私の夢はですね……

 

 

 

 

 

 

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「インブレックス系の鳩を」

 

 

 

 

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「インブレックス……」

(※というレース鳩の血統があるそうです)

 

 

 

 

 

 

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「グランドナショナルに出走させ」

 

 

 

 

 

 

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「グランドナショナル……」

(※鳩レースには稚内グランドナショナル、五島列島グランドナショナル、西鹿児島グランドナショナルなど大きなレースが存在する)

 

 

 

 

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「1~5着を独占することです」

 

 

 

 

 

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「1~5着独占……!!」

 

 

 

 

鳩レースの知識がない僕には、正直言って小黒さんの夢のどの辺りが凄いのか全くわかりませんでしたが、その真剣な表情からこのことだけは理解できました。

 

 

 

 

 

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鳩レースの記事を読んでくれたみんなも、「ダービーロード」ででけぇ夢を達成しよう!

 

 

 

 

 

 

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競馬番組55年の歴史があるフジテレビが企画開発した「ダービーロード」は、鳩レースと同じく「配合」→「調教」→「レース」を繰り返し、自分だけのオリジナル最強馬を育成する競馬ゲームです。

 

ガチャで配合に使える実在の名馬が当たった時などは、迫力のレース映像が流れるなど演出にこだわりがあって、競馬ファンにとってはかなり楽しいアプリです。もちろん無料で始めることができます。

 

 

 

 

ダービー

 

applestore

googleplay

 

 

伝説の最強馬ディープインパクトが必ずもらえるこのタイミングで、皆さんもダービーロードをぜひプレイしてみてください。

 

ちなみに鳩レースを始める際の初期投資は、「40~50万くらい」とのことです(鳩を育てる鳩舎が自宅に必要)。こちらも、ある程度の地位と収入をお持ちの方はぜひ! 

 

 

 

 

(おしまい)

 

 

 

写真提供・取材協力 / 日本鳩レース協会