【注意】
この記事はずっと下品な話をしています! もし苦手な場合はお気を付けください!
『魔法先生ネギま!』(以下『ネギま』と呼ぶ)という漫画がある。
『週刊少年マガジン』で連載されていた人気漫画。各種メディアミックスもされ、赤松健の代表作といって差し支えないだろう。
ある日、何かの拍子に僕が『ネギま』の話をした際(何かの拍子にするような話か?)、同僚からこんな返信がきた。
あるわけない。少年マガジンだぞ。
すごいことを言っている。
あるわけないのに、そのディテールはなんなんだ。
詳しく聞いてみる
彼の名前は「みくのしん」。この記事のきっかけである男だ。
『ネギま』はお色気要素を盛り込んだ漫画ではあるが、もちろん常識的な範囲内での描写だった、と記憶している。
とはいえ僕も全巻読んでいたわけではなく、なんとなく雰囲気で知っている程度だ。
しかし、そのようなシーンはあり得ないということぐらいは分かる。
—— あらためて聞きたいんですが、『ネギま』でフェラチオをしてるシーンがあったんですね?
ありました!!!
—— そんなわけなくない?
いや、でもそういう漫画でしょ? けっこうお色気モノというか。
—— お色気シーンはあるけど、オーラルセックスとかはしないと思う。
そうなんだ。
でも、してたからなあ。
—— そんなわけない。
やはり間違いではなかった。彼、みくのしんは「ネギまにフェラチオシーンがあった」と断言している。
該当シーンの詳細を聞く前に、その記憶の前後から整理していくことにしよう。
——「ネギま」を読んでたんですか?
いや、俺は読んだことなくて。そもそも美少女が出てくる感じの漫画全般あんま詳しくないんだよね。
——じゃあなぜそのシーンを知ってたんです?
高校の同級生がいきなり見せてきたのよ。それではっきり覚えてる
—— みくのしんさんが高校生の時だと、西暦何年ぐらいですか?
俺は1990年生まれだから、えーと、高校は2006年~2009年かな? たしか高校2~3年生の時だった気がするなあ
ここで重要な情報を得た。
高校の同級生が見せてきた、ことが間違いでないとすると少なくとも2009年4月以前に発行された作品ということになる
—— 友達が見せてきたときの状況、もう少し詳しく教えてもらっていいですか?
詳しくかあ。そんなにはっきりとは思い出せないけど……
高校生のとき、クラスメートは美少女アニメとか好きなやつが多かったんだよね。俺は詳しくなかったんだけど不思議とみんな仲良かったよ。
—— ほう
共学ではあったんだけど、自分のクラスは全員男だった。しかも3年間クラス替えなし。
—— クラス替えなし?!
そう。なんでかは分からないけど
—— クラス替えない学校もあるんですね
それで教室で漫画持ち込んで読んでても、わりと大丈夫な雰囲気だったんだよね。
—— 友達はなぜ急にそのページを見せてきたんですか?
ノリみたいな感じだったのかな? エッチなシーンが面白いみたいな風潮って、高校生ぐらいだとあるじゃん。
俺は高校生の時はあんま下ネタとかも言わなかったし、むしろちょっと恥ずかしがってた。だからそういう人のリアクションが見たかったんだと思う。でも、いじられてたとかじゃなくて、仲良い同士のコミュニケーションみたいな感じ。
……ここである疑問浮かんだ。
もしかしたら、それは二次創作の同人誌だったのではないか?
みくのしんはオタク文化に詳しくないため、それを一般流通の漫画だと勘違いしてしまった。という可能性は大いにあるだろう。
—— もしかして、それって同人誌だったんじゃないですか?
どうなんだろ? 同人誌というものをそもそも分かってないからなあ。漫画は漫画という認識だった。
でも普通の単行本っぽかったよ。
—— 普通の単行本? でかくて薄い本ではなかった?
いや、ドラゴンボールとかと同じぐらいのサイズ。
どうやら同人誌ではなかったようだ。しかも雑誌でもなく、ジャンプコミックスと同じサイズの単行本。
たとえば青年漫画雑誌にはアダルト描写のある漫画も少なくないし、そこで作品を取り違えて勘違いした……という可能性もあると考えていたのだが。
「単行本だった」が間違いでなければ、その可能性もなくなる。
—— その記憶にあるシーン、どんな感じだったか絵で再現してくれませんか?
いいよ。俺もおぼろげだけど
えー……
こんな感じ?
—— どでかい花火が逆光になってて、フェラチオしてますね
最初からそう言ってるじゃん
あ!ちょっと待って!
—— なに?
フェラチオって言ってたけど……
—— フェラチオって言ってたけど?
立ちバックだったかも
どっちだろう
ネギまって立ちバックある?
—— どっちも絶対ないよ
……やはり彼は一貫して、「ネギまにフェラチオシーンがあった」という姿勢は崩さなかった。
詳細な話を聞いて、いくつかの重要な情報は得ることができたので、下記に整理してみよう。
【情報】
・2009年4月以前の漫画
・一般的な少年コミックのサイズ(いわゆる新書判)の単行本
・おそらく同人誌ではない【シーンの状況】
・背景で花火があがっている
・花火の逆光で、手前の2人が影(シルエット)だけになっている
・2人は性的な行為をしている
・おそらく森(木の多い場所)
一体、この記憶はなんなのだろう?
話しぶりからすると、どうも嘘をついているとも思えない。
『ネギま』を調べてみる
なにはともあれ、まずは『ネギま!』を確認するところから始めよう(上記は筆者 ヤスミノです)
彼の言っていることは勘違いなどではなく、単純に事実である可能性だってあるのだから。
全38巻+0巻(劇場版アニメの来場特典)。合計39巻。
僕はこれからフェラチオを探しながら漫画を読むことになる。
フェラチオを探しながら『ネギま!』を読むのは非常に心苦しいことではある。真実を追求するためなのでご容赦いただきたい。
読み進める。
……。
僕の世代だと印象的なのはやはり『ネギま』主題歌である「ハッピー☆マテリアル」だ。
カウントダウンTVで一瞬だけ流れるアニソンの、あのなんとも言い難い妙な感じを思い出す。
……そして確認が終わった。
結論を言うと、フェラチオシーンはなかった。
もちろん立ちバックシーンもなかった。
当たり前だ。
当たり前のことを確認してしまった。何をしているんだ。
引用:赤松健 『魔法先生ネギま!』.講談社,27巻
しかし、途中で「おっ」と思うシーンもなくはなかった。
知らなかったのだが「ネギま」は後半になると異世界ファンタジー的な世界が舞台となり、そこでは特に理由もなく花火が連発される。
とはいえ、これだけといえばこれだけである。
そもそもこのあたりの「ネギま」は、みくのしんが高校在学中のより後の刊行だ。
ひとまず「ネギま」の記憶ではなかったことは確定した。
情報提供を募る
では、一体彼の記憶の中にある漫画とはなんなのだろうか?
「花火 フェラチオ 漫画」などと情けない検索をしたが、もちろん成人向け漫画しかヒットしなかった。
そこでインターネットの集合知に頼ることにした。
【タイトルの分からない漫画探してます!】
とある漫画作品を探しています。
もし思い当たる情報あれば、情報提供していただけると幸いです!
(漫画の詳細はこのポストにもぶら下げてます。若干下品な内容です。すいません!!)▼詳細&提供フォームはこちらhttps://t.co/suzdRSbnyl
— ヤスミノ (@yasumino_boy) December 4, 2024
途中でなぜこんなことを募集しなくちゃならないんだ、と思いそうになった。が、ここまできたらもう引き返すことはできない。
それに、そもそも人生に引き返すべきタイミングなどないのかもしれない。
人生は後戻りのできない旅である。
たとえ行き先がどでかい花火を背景にフェラチオしている漫画だったとしても。
まとわりつく躊躇を振り払って、ポストした。
ありがたいことに多くの情報が集まった。
まず、多く寄せられたのが浅野いにおの『おやすみプンプン』だ。
どうやら印象的な花火、そして性行為のシーンがあるようだった。
引用:浅野いにお 『おやすみプンプン』.小学館,8巻
読んでみると、たしかにあった。
見開き2ページで住宅街の奥に花火が打ちあがる。その後、性行為シーンがある。
引用:浅野いにお 『おやすみプンプン』.小学館,8巻
もちろん性行為といっても、もう少し婉曲的な表現である。
これとは全然違う。
「花火→性行為」という状況はあっているものの、『おやすみプンプン』の記憶ではなさそうだ。
次は原作は貴志祐介、作画は及川徹の『新世界より』。こちらも複数の情報が寄せられた。
別冊少年マガジンで連載されていたということもあり、単行本のサイズはみくのしんのいうところの「ドラゴンボールぐらい」のものだ。
引用:及川 徹,貴志 祐介『新世界より』.講談社,3巻
しかし、これも「おやすみプンプン」と同じく、「花火→性行為」という状況的には一致するものの、多くの相違があった。
肩を落とした。
もしかしたら、みくのしんの大幅な記憶違いということもある。そうなったらもうお手上げだ。
引き返すべきタイミングを逸したのかもしれない。
あきらめかけていた、その時……
寄せられた情報の中に、目に留まるものがあった。
後日
あれからいろいろ調べてたんだよね?
—— はい。ネギまも全巻確認しました
「ネギま」じゃないの?
—— 残念ながら違いました
ええ~……。ネギまだったと思うんだけどなあ……
—— でも、謎の記憶の漫画特定することができました
マジ!?
うわ~~!!なんかドキドキしてきた!
—— みくのしんさんの記憶にあった漫画はこちらだと思います
家庭教師……なんとか中アイ……?
—— 『女子大生家庭教師濱中(はまなか)アイ』です
正直表紙見ただけじゃあんまピンとこないな……
—— この漫画の5巻、100話を読んでみてください
100話ね
……うんうん
……嘘?
おいおいおい!!
引用:氏家ト全 『女子大生家庭教師濱中アイ』.講談社,5巻
これじゃん!!!!!
これでしかないじゃん!!!
—— これはまだ前段で、次がおそらく例の記憶のシーンだと思います。
え?これ以上あるの!?
—— 次に3巻の50話を読んでみてください
うん……
引用:氏家ト全 『女子大生家庭教師濱中アイ』.講談社,3巻 .
これすぎる!!!
というわけで、みくのしんの記憶は『魔法先生ネギま!』でなく……
2003年から2006年まで『週刊少年マガジン』で連載していた、氏家ト全の『女子大生家庭教師濱中アイ』だった。
刊行時期や状況、みくのしんの話していた内容と完全に一致する。
立ちバックだったかも
この発言もけして冗談ではなく、本当だったのだ。
もしかしたら、上記2つのシーンが記憶の中で一緒になってしまったのかもしれない。
引用:氏家ト全 『女子大生家庭教師濱中アイ』.講談社,3巻 .
一応、誤解を招くといけないので説明すると『女子大生家庭教師濱中アイ』は「エッチなことをしているように見える」というギャグ漫画であり、もちろん本当に性行為に及んでいるわけではない。
このシーンも勉強に行き詰まった生徒にリフレッシュしてもらおうと、花火の穴場スポットに連れていった際の出来事だ。酔っぱらって具合が悪くなったアイ先生の背中をさすってあげている。
基本的には生徒想いの良い家庭教師です。
すいません。『ネギま』じゃなかったです!!
【ネギまの謎の記憶 完】
それと氏家ト全先生の最新作「八乙女×2」はこちらから読めます!(PR記事ではありませんが感謝の意味を込めて)