この人は『グラップラー刃牙』1巻にでてくるお馴染み「ほう 炭酸抜きコーラですか…」のひとです。

試合前、主人公バキが飲んでいるコーラが実は理にかなっていることを看破した人。インターネットで人気。

 

お馴染みとは言いましたが、このキャラには名前もありませんし、これ以降特に登場はありません。いい感じにバキを褒めただけです。

しかし、ネット上ではカルト的な人気を博しています(体感ではローランド・イスタスと同じぐらい言及されてる気がする)

 

このように魅力的なモブキャラは、主要キャラクター同様我々を魅了してやまないのです。

 

というわけで、今回はそんな魅力的なモブキャラを語ってもらうことにしました。

 

けん:漫画家。便宜上漫画家ということにしているがめちゃくちゃ雑魚の漫画家なので今回名作にやいのやいの言ってるのも、すみません、私なんかが…と思いながら言っています。許してください

かまど:少年漫画が大好き。会話してるとすぐ「ハンターハンターでいうところの~」という例えをだす

ヤスミノ:聞き手。読んでもすぐ忘れる

※記事内の漫画は全てトレースイラストを使用しています

※企画の性質上、多少のネタバレを含むこともありますのでご了承ください

 

HUNTER×HUNTER

ベタなところで『HUNTER×HUNTER』「見逃しちゃうねの人」いるじゃないですか。

『HUNTER×HUNTER』11巻に登場。

クロロのおそろしく速い手刀を見逃さなかった人。本名不明。「おそろしく速い手刀 オレでなきゃ見逃しちゃうね」というセリフが妙に印象的でなぜかみんなの心を掴んだ。

あー、有名な。ネットでもこすられまくってる
あれ数えたら漫画全部で遠景のかなり小さな登場も含めて28コマしか登場してなくて

そんなしか出てないんだ

28コマしか出てない人を、僕たち20年間ぐらい話してると思うと怖いですよね

確かに。見逃しちゃう人、僕らあいつのことを話しすぎです

誰もあいつの名前知らないのにね
でも魅力的なモブだったらそこまで話せるってことですよね

 


『HUNTER×HUNTER』はいっぱいあるけど、一番好きなのこいつかな

選挙編でレオリオがジンを殴って、みんながわーって盛り上がってるとき、右端にいるモブ

 

『HUNTER×HUNTER』31巻に登場。

ニィィってしてる人。本名不明。レオリオがジンを殴ったのを見て、ニィィってしてる。

本当にモブだな。

こうなったときに「よっしゃあ!」とか「ざまぁみろ!」っていう感情は分かるんだけど、こいつだけ「ニィィィ」って。感情が盛り上がってもこうはならないでしょ。

「やるねぇ…」ってことなのかな。

多分、この人が言及されたの世界初ですね。

 

ニィィ

こうだからね。いいんだよなぁ。一番好きだなあ。

流石に一番好きというのは嘘な気がしますが

いやいやいや。ジャンプ本誌で読んでる時もこいつの事はすぐ覚えましたもん。「ニィィィ」ってしてるな~って

言われるまで全く気にしてなかった

描いてる側としては同じようなポーズの人をいっぱい描かないといけないで途中で不安になったりはとかはある気がします

あ、そういうのでいったら

 

『進撃の巨人』31巻の…

 

右下の奴だけムゥん……って顔してる人も好きです

なんで?

 

ピンポン

わかりやすいの持ってきました。『ピンポン』

 

あ!『ピンポン』!僕、漫画の中で1番好きなんですよね。

これは結構印象に残ってる人も多いと思うんですけど、江上です。ピンポンの江上の話がしたくて。

 

江上。インターハイ予選1回戦にてスマイルと試合をし、敗北。

ピンポンのモブと言えば2人しかいなくて。こいつか、アクマの彼女しかいない。

こいつ悲哀があっていいですよね。

 

アニメですごい意味が追加されたんですよね。

 

そうそう。それがすごい印象的で。ピンポンて基本的に境遇も能力も違う人たちが戦っていく中で苦しんだりしながら、結局卓球が好きだよねっていうところに収束していくと思うんですけれども

漫画の最後だと、卓球で成功するというハッピーエンドを迎えるのが星野だけ

基本的に漫画のピンポンは、それぞれに実力差はありつつも。それでも上位1パーセントくらいの卓球が超うまい人たちの話がメインだったのが、アニメ版のこいつのおかげで卓球がそんなに上手くない普通の人たちでも「それでも好きでやろう」という、そういう物語が回収されたのは嬉しいなと思いました。僕も卓球下手な卓球部だったので…

アニメ化する時って大体良くない改変が多いじゃないですか。アニメの『ピンポン』はめっちゃ良かったな~

 

封神演義

モブキャラって言われたときに1番最初に思い出したのが『封神演義』黄天化を殺した一般人で。

 

紂王と一騎打ちに勝利した直後の黄天化を刺した一般兵。黄天化は「へっ……この死に方は考えてなかったさ…」と言う。

あー、「黄天化」。名前覚えてないけど、このシーンはあったかも。

『封神演義』って字面でキャラクターを判断してるから、読みだとパッと浮かばないかも。あのライトセイバーみたいな使ってた人でしたっけ。

そうです。それまで仙人同士の派手なバトルだったんですけど、そこから急に一般兵に殺される展開がすごい印象的で。

たしかに小学生のころとかにジャンプ読んでたらめちゃくちゃびっくりだろうな

原作の小説ではもっと物語の前半で仙人同士のバトルで死んでるんですけど、漫画版だと一般兵に殺される展開にしてるんですよね。

原作と漫画で結構違うらしいですよね。原作読んだことないんですけど

天化という人気キャラがモブの兵士に殺されて当時は驚きましたが、今は仙人同士の派手な戦いだけによって歴史が作られ新しい王朝が作られるのではなく、ああいう無名の兵士の視点・立場が加わることで、これは人間の歴史に収束する物語なんだと感じさせる素晴らしい演出なのではないかと思っています。

個人的にですが封神演義って漢字がいっぱいで主要キャラクターですら名前あまり覚えられないんですよね。太公望と四不象(スープーシャン)と妲己しか覚えられない。

同じ人物でも、黄飛虎(こう ひこ)と武成王(ぶせいおう)とか違う呼ばれ方してたりして混乱する

 

アイシールド21

『アイシールド21』「小判鮫先輩」って言う人がいて

 

小判鮫オサム。巨深ポセイドンのクォーターバック。捕まる前にボールを捨てる「早逃げ」で、インターセプト率0%を誇る

「小判鮫先輩」。いましたね。久しぶりに聞いて、脳の使ってない部分がパチパチってなりました。

巨深ポセイドンってチームには「筧」と「水町」っていうすごい才能を持った選手がいるんですよ。で、本編でも主人公チームVSその天才2人みたいな構図で。小判鮫先輩はその天才2人の先輩なんですけど、いるだけのキャプテンみたいな感じだったんですよ。

名前もそのまま「小判鮫」だし

そこまで強く印象に残るような描写もなかったし、誰も覚えてないキャラで終わると思ってたんですけど…

巨深ポセイドン戦で、試合の終盤で小判鮫先輩が天才2人に向かって「最後までお前らに頼り切りだな。俺らとか役立たずで…」みたいなことをちょっとおどけながら言ったら、

その天才の後輩たちがほんとにキョトンとした顔になって…

 

 

当時、ジャンプ読んでてそのシーンでめちゃくちゃ泣いてしまって。それまでほんとに噛ませ犬みたいなキャラクターだったのに…

巨深ポセイドンは負けるんですけど、そこで今まで小物ぽく描かれてたコバンザメ先輩が「優勝したかった」と号泣するシーンが本当に良くて。これはモブキャラというより、途中からモブじゃなくなったキャラですね。

アイシールド21って才能ある人物とそうじゃない人物の描き方がすごい上手ですよね

むしろこの漫画のテーマそのものですもんね

最後、アメリカのオールスター戦でなんで葉柱ルイが登場したのだけ納得いってないですけど

 

忍者と極道

 

『忍者と極道』って言う漫画なんですけど。本当に忍者と極道が殺し合うだけなのですが、すごく良い漫画で…

この漫画、やられる人がめちゃくちゃ面白いんです

 

 

『忍者と極道』1巻に登場。

ヤクザに首を引きちぎられる半グレの人。敵対する忍者をおびき寄せるため殺される。

殺されながらめちゃくちゃ喋るんですよ

 

「やめて下さぁい」

おもしろい

でも実際これめちゃくちゃ発明だと思ってて

これ多分やりたいことをメインである「忍者と極道が殺し合う」ことにページをすべてを割いた結果生まれた産物で

 

「命乞いのシーン」「殺されるシーン」、この一コマにまとまってるんですよ。

確かにしようと思えば分割できるコマ

こんな時短あるんだ

モブキャラってやっぱり説明のためだけに存在する側面が大きくて。そういう役割が先鋭化してった結果だと思います

たしかに漫画においていかにスムーズに説明するかって大事ですよね。格闘漫画とかも他の人に技の解説をさせるじゃないですか。

バトル漫画でも、なんか勝手に解説する周りのやつがいると便利ですよね

 

ワンピース

説明のためのモブって言ったらあれですね。『ワンピース』のイワンコフ初登場のところで、説明のためだけにやってきたキャラがいて。

 

『ONE PIECE』55巻に登場。

イワンコフの能力ですぐ女性にされた人。一応プリンス・ベレットという名前がある。

こいつはイワンコフの「相手の性別を変える」という能力を読者に分かりやすく伝えるためだけに生まれたキャラです。

「説明!!」って感じですね。この人、ワンピースの中でも際立って唐突だった気がする

物語を進行させるためだけに生まれた存在なんですよ。

ワンピースって今まで新キャラクターが登場したら、「どういう能力なのか分からない」っていうヒキがあって。それが解き明かされるまでの過程がドキドキして1番面白かったんだけど

クロコダイルとかもそうですよね。

そうそう。イワンコフってそこ味方だから、そこどうでもいいんですよね。ポンポンとやってきたい。

 

それで大砲持ってこうだからね。

これがバギーとかだったら、すぐバラバラになって視覚的に超人だなと分かりますけど、イワンコフってそういうわけにもいかないですしね。

登場してト書きの説明のセリフしか用意されてない。で2ページでやられちゃった。かわいそうに。すごい印象的だからモブキャラのことを思い出すとあいつのことが連想される。

なるほどね。

ひとこまで全部説明してる。渡る世間は鬼ばかりのセリフ量と同じ

状況説明のためだけ。デスゲーム・バトルロワイヤルもので、説明のためだけに死ぬキャラって絶対いますもんね

いろんな漫画の説明のためだけにやられていったキャラクターのために慰霊碑を作りたいですね

『DEATH NOTE』の渋井丸拓男も入れてあげたい。ウイスキーピークのサボテンみたいに、近くで見ると全部墓標になってるやつ

 

 

メインキャラにはない妙な引力を持つモブキャラ

そんなモブに注目しながら漫画を一度読んでみると、また違った魅力が浮かび上がるかもしれません。

 

 

↓↓【おまけ】↓↓

ダ・ヴィンチ・恐山の好きなモブキャラ

■『嘘喰い』業の櫓編で図解してくれた人

難解な頭脳バトルが多い『嘘喰い』でも屈指の難度、読者のほとんどが何が起こってるかわからないまま雰囲気で読んでいたのが「業の櫓」編です。

手に握った粒みたいなのの数を当てるゲームなんですが、とにかく事態を把握するのが難しく、デスゲームを観戦している人(裏世界の悪趣味な金持ちたち)も「何これ?」ってなってたんですね。

そんなときに「俺が表にしてやる!」とかいって手作りの表を作って出してくれた観戦者のモブが印象に残ってます。勝手にキャラの相関図とか作って布教する親切なオタクみたいだなあ、裏世界にもそういう人いるんだなあ、と思って。

ちなみに、その表もミスリードになってるので、読むと逆に理解の妨げになります。

 

ヤスミノの好きなモブキャラ

■ファンの群衆

特定のキャラクターではないのですが

▲『幽☆遊☆白書』で死々若丸を応援する人たち

 

こういう「ワーキャー言われてる色男キャラの応援団」みたいのが好きです。こういう時って作者の手癖みたいのが出る気がしてて、それが妙にかわいくて。

 

あるオモコロ読者の好きなモブキャラ

■『ちびまる子ちゃん』7巻のクラスメイト

『男子対女子大戦争の巻』で女子側に唯一ついた丸尾くんが2コマかけて「うおーっ たぁああ」と雄叫びを上げて多勢の男子に襲いかかった際、「こいつウォーターって絶叫したぞ」「ヘレンケラーかよ」と引いているモブクラスメイトが好きです