私のおじいさんがくれた初めてのキャンディ

 
 

それはヴェルタースオリジナルで私は四歳でした

 

 

その味は甘くてクリーミィで
こんな素晴らしいキャンディを貰える私は
きっと特別な存在なのだと感じました

 

皆さんに「特別な存在」はいますか?

「今では私がおじいさん」とは皮肉なものだな。

 

今日は終わってない部屋から失礼しま……

 

え……?何があったのこの壁……

 

 

まぁいいや。

 

 

ヴェルタースオリジナル。

森永製菓がドイツのストーク社から輸入しているキャラメル風味のキャンディー。
クリーミーさとアクセントの塩味が特徴で、上記のインターネットミームの素となったCMでも有名。

 

 

有名とは言ったが今となっては放送されていないようだ。

このネタが通じている時点であんたもインターネット老人ホームにぶち込まれる楽しみにしておいて下さい。いいですね。

 

 

このキャンディー、パッケージ裏の文章を読んだ事があるだろうか。

 

昔ヴェルター村のグスタフ・ネーベルという菓子職人が、バター、生クリーム、砂糖、ひとつまみの塩で極上のキャンディを作りました。
そのキャンディがあまりにもおいしかったので、村の名前をとって、これは“ヴェルタース オリジナル”と名づけられました。
伝統的な製法で作られている、なめらかでクリーミーな味わいのこのキャンディは、今では世界中の人々に愛されています。

 

名前の由来、クラシカルな製法、そしてその材料。

バター、生クリーム、砂糖、ひとつまみの塩……

……作れるのでは?

伝統的な製法とその原材料まで分かってたら、それはもうレシピが公開されているも同然だ。

では作ってしまおう。俺オリジナルのヴェルタースオリジナルを。

模倣品なのにオリジナルってなんだよ。

 

・登場人物

ストーム叉焼……中学時代がIOSYSのFLASHで構成されている男

原宿編集長……カメラマンを依頼。Zoomの背景に躊躇なくエルシャダイを使う男

 

ヴェルタースオリジナルはWikipediaによると「トフィー(タフィー)」と呼ばれるハードキャンディの一種だそうです。
(ハードキャンディ……飴玉やチュッパチャップスのような『舐めて食べる』タイプの硬いキャンディのカテゴリ。キャラメル、ハイチュウ等の『噛んで食べる』のはソフトキャンディ)

ただ、トフィーはナッツとかマシュマロを混ぜ込んだ、クランチチョコとか雷おこしに近いものが一般的なようで、ハードキャンディとしてのトフィーのレシピはネット上になかったんですよね。

 

 

なので、研究しました。

 

試作を重ねてヴェルタースオリジナルに近い味わいのキャンディーになるよう、独自の研究を行いました。

 

今日はそのレシピも公開する。

作ろう

 

鍋にグラニュー糖、

水飴、

生クリーム、

バターを計量しながら入れる。(レシピは記事のまとめに。記事中ではレシピの倍量で作っています)

 

早速上記レシピにない水飴が登場したが、どうもグラニュー糖だけでは上手くいかなかった。

グラニュー糖だけだと加熱中に混ぜると結晶化するとか、糖の成分の違いがあるとか(グラニュー糖はショ糖で水飴は麦芽糖)、日本の伝統的な飴専門店でも水飴を使ってるとか、なんやかんやで水飴を使う理由はおぼろげだが、そもそもヴェルタースオリジナルにも水飴はガッツリ使われているので良しとする。

 

 

こまけぇこたぁいいんだよ!!

 

 

 

 

 

そしてひとつまみの塩。

 

今日日このカットを躊躇するような奴が2022年にヴェルタースオリジナルを作る資格はない。

 

 

 

実際は普通に入れる。量が繊細だから。

 

 

 

後は弱火に掛け、じっくりと加熱。焦げないようにヘリからかき混ぜ続ける。

 

 

 

バターが溶け、ザラザラとろとろした液体がボコボコと湧いて、一旦サラサラになる。

 

 

これがまたドロドロになるまで煮詰めていく。

 

 

なお火力に関してはレシピの分量に依存する為、火の通りが悪いと思わしき時は中火まで火力を上げたほうがよい。

 

 

段々と色付き、白飛びしない写真が撮れるようになってくる。ここから更に加熱を続ける。

 

 

目標のキャラメル色のほんの寸前をイメージ。泡が強い粘度を持ち、液体から固体側に寄って来る位まで煮詰める。

 

そろそろかな?と思ったら冷水に飴を落として硬さを見る。

 

 

ここで加熱が甘いと持ち上げてもでろーんと滴る可塑(かそ)性がある。生キャラメルのようで美味しいは美味しいが歯の詰め物だけを殺すお菓子となるので注意。

 

パキッとした硬さになればOK。

 

何故か、ここまでの工程で記事には書けないような話をいっぱいする羽目になった。

懐かしいネタを題材にしたせいで、我々の心の中学生が目覚めてしまったらしい。

 

(「そんなの記事に書ける訳ないじゃないですか」という話を編集長に振られている時の笑顔)

 

 

 

後は火を止め、泡が落ち着いてからシリコン型に流し込む。
(※実際にこのレシピを再現する場合はもう少し色が付くまで加熱したほうがいいです)

 

この時スパチュラや鍋を不用意に振り回すと伸びた飴が宙を舞って大惨事になる。なった。

 

冷蔵庫で1時間程冷ます。

 

最後に型から外して完成。

 

全部取り出すとベタつくので逐一引っこ抜いて食べる。

 

 

とりあえず自分で毒見。

 

 

 

……よし、概ね成功ですね

 

口いっぱいに広がるミルクのまろやかさに、ピシっと筋の通った塩気。

ヴェルタースオリジナルで馴染み深い、トフィーキャンディーの完成だ。

 

 

 

原宿さんにも試食をお願いする。

ヴェルタースオリジナルって10年以上食べてないなぁ……

 

 

……あ!ヴェルタースオリジナルだ!かなり再現できてる!

 

かくして1からレシピを作り上げ、ヴェルタースオリジナルの完全再現に成功した……

かに思えるが。

 

 

では原宿さん、この本物のヴェルタースオリジナルも舐めてみてください

 

 

……

 

 

……違うわ

……改めて食べると、本物は口溶けとかコクが凄いんですよね

つるっとした感じのなめらかさがある……こんな複雑な味するんだ。ヴェルタースオリジナルって

 

本物は、未だ手の届かない所にいる。

でもそれは挑戦しなければ知ることさえなかった偉大さだった。

すげぇぜ、ヴェルタースオリジナル。

 

 

このキャンディをなんと呼ぼうか。(流石にヴェルタースオリジナルです!と名乗っちゃまずい)

元ネタが「ヴェルター村で作られたキャンディー」という意味でヴェルタースだから……

このスタジオのある地名を取って……

「Mitte Schwarze Augen’s Original」

 

ミッテ(中心の) シュヴァルツェ(黒い) アウゲン(目)ス オリジナル」?

ドイツ語でも中目黒はナカメグロだろうから中目黒’sオリジナルとする。

 

オリジナルのレシピを作ろう

 

そしてオリジナルのアレンジレシピを作ろう。せっかくだから。

というか「自作しないとできない事」がなければ「普通にヴェルタースオリジナル買ってくればよくね?」という正論にぐうの音も出ないから。

 

 


(YouTuberがピントを合わせるアレをうろ覚えでやり、挙げ句ピントが合っていない)

まずはこいつから。

 

りんご飴ってあるじゃないですか。アレをやってみようかなと。りんごパイもあるし、バターやキャラメルの風味も合うんじゃないかって

 

あとはバナナも用意してみました。チョコバナナはあるけどバナナ飴ってなくないですか?キャラメル+バナナって絶対美味しいし、これ行けたら『新時代のフルーツ飴』ってバズレシピの完成ですよ!

おお、それは美味そう!

 

カットしたりんごとバナナを竹串に刺し、

飴を纏わせやすいように熱した中目黒’オリジナルを紙コップに移す。

 

飴の中に突っ込むと、「ジュウウウ」と肉が焼けるような音。りんごの表面が沸騰している……?

アチアチアチ!

すっかり忘れていたが、ハードキャンディが液体になっている時の温度は160℃程になるらしい。滅茶苦茶危ないので真似しないように。

 

 

そんで全然飴がつかない。上面の裸の面を何度飴につけても裸のままになってしまう。

 

 

 

バナナも駄目。これでも何度も浸した後だ。

 

 

中目黒’sオリジナルは火から下ろした瞬間固まり始める程の粘度があり、流体である為には高温を維持しなければならない。果実の表面で飴が急激に冷やされ、まとわりつく前に硬化してしまうので全然張り付かないのだと思われる。

 

仕方ないので「纏わせる」というより「乗せる」ように絡めてみるが

 

果実に熱が通ってどんどん水分が出てくる。最終的にびしゃびしゃになってゲームオーバーだ。

 

後に調べたが、フルーツの断面やバナナのように柔らかい果物等、水分が出てくる部位があるとフルーツ飴は上手く行かないとか、そもそもフルーツ飴に使う飴はもっとサラサラしてる別物だとか、失敗した理由は色々あった。

 

おかしい……バズレシピ間違いなしだと思ったのに……

 

一応食べるけど。

 

硬っっっっっっって。

 

無理やり塗りたくったキャンディが分厚すぎて前歯へし折られる所だった

おっさんが物を噛み切れない瞬間って面白すぎる

 

 

本当はこの後アイスにコーティングするレシピも試す予定だったが、この結果を踏まえると大変なことになるのが想像に難くないのでやめておいた。

 

目に見えた失敗に突き進むと、目に見えていない失敗が牙を剥く。
「こういう時」の失敗はこちらの想像を超えてくるものだ。

 

……次は間違い無いやつですよ!

 

 

 

このままだと硬すぎるので生クリームで少しだけ延ばす。

 

そしてポップコーンに絡めていく。

お!美味そうな画取れてるよ!

 

 

手早く混ぜて

 

シートに延ばしながらほぐし、

 

飴が固まるまで冷やせば完成。

 

……はい!ヴェルタースオリジナル(風)ポップコーン!

 

シャキ  サク

 

 

パリサク食感に塩が効いてて美味い!キャラメルポップコーンと比べて乳製品の風味が強いかな。これは当たりレシピ!

 

 

原宿さんも試食をお願いします

……あ、ちなみにそれ美味しいんですけど……

 

食べる時覚悟して下さいね

 

 

 

歯の溝全部無くなった

 

生クリームで延ばしたせいで可塑性が復活したのか、飴が大量に絡んだ部分を齧ると奥歯の表面に張り付いて大変な事になる事がある。

歯を治療中の人は絶対に食べないで下さい。詰め物が全部持ってかれて大変な事になります。

カリギュラ効果狙ったWEB広告とかではなく本当に。

 

 

でもこれは売れる味だね

改良を重ねたらマジで行ける気がします

 

そりゃ行けるだろうよ。

 

 

だってもうあるからな。本物のヴェルタースオリジナルで作られたポップコーン。

「もしかして誰かやってる?」と調べたら、あった。

国内販売はないが少なくともアメリカと本国のドイツでは販売されているらしい。

 

https://www.werthers-original.us/en/products/caramel-popcorn

ポップコーン専用のカテゴリページまである。美味しそうね。

 

 

ラストは一石二鳥なレシピで行きます

 

 

鍋に残った中目黒’sオリジナルに牛乳と余った生クリームを注いで加熱。

 

 

 

飴が溶け切ったら完成。(よく見たら溶け切ってない)

 

 

あっ!

 

 

もうミルクもまともに注げないのか今日の俺は!!!

落ち着いて

 

……はい!ヴェルタースオリジナル(風)ラテ!これやるとついでに片付けも楽になるので一石二鳥!

 

甘っめー!もっと牛乳入れるべきだった!でも美味い!冬に飲みたいこれ

 

 

 

コッ

喉が焼ける位甘い!山奥の民族が振る舞って来そうな味。これはこれでいい

代わりになるような味が意外とないので、この為にやる価値はありますよ!プレゼント用に飴を作って、余った分でヴェルタースオリジナル(風)ラテを作る!これは流行る!

 

「そんな強引な事を」というそちらの言い分は分かっている。

 

でも、こっちだって空元気を振り絞っているのを分かって欲しい。

 

 

確かに美味い。この味は試して欲しい。

でも俺は途中で気づいてしまっていた。

 

 

 

これ、こうでいいんじゃない?と。

正真正銘のヴェルタースオリジナルラテの完成だ。

自分が遠回りしている事は認めたくないものだ。
自分が並んだレジ待ちの列だけ、異様に進むのが遅かった時のように。

 

 

まとめ

今回のレシピ。

 

「ヴェルタースオリジナルを再現する」というコンセプトで、1から作り上げたレシピ。完成品は「だいたいあってる」程度のクオリティだが、ここまでの過程が、このキャンディを俺の中で『特別なキャンディ』にするには充分だった。

オリジナルのアレンジレシピに関しては散々な結果だったが、辛うじてポップコーンだけは人様に食べさせても恥ずかしくない仕上がりだ(歯の溝が全部埋まるが)

 

今日は撮影に協力して頂きありがとうございました!簡単な個包装にしたのでお裾分けです

 

こうするとやっぱり商品としていけそうだねこれ

お菓子屋さんに並んでそうな見た目になりますね。娘さんへのプレ……

 

 

私のおじいさんがくれた初めてのキャンディ
それはヴェルタースオリジナルで私は四歳でした
その味は甘くてクリーミィで
こんな素晴らしいキャンディを貰える私は
きっと特別な存在なのだと感じました

 

 

 

 

 

 

今では私がおじいさん
孫にあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル
なぜなら彼もまた特別な存在だからです

 

 

インターネット老人会が失礼します。
皆さんに「特別な存在」はいますか?

 

 

 

俺にはいません。

何故でしょうか。