こんにちは。全ては塵の部屋から失礼します。
最近ドハマリしてしまったものがあります。
アプリ「ウマ娘プリティーダービー」です。
引用:ウマ娘公式サイトトップページ(https://umamusume.jp/)
「ウマ娘」は実在の競走馬をモチーフにした擬人化育成ゲーム。
発表からゲームリリースまで5年を費やし、途中年単位の公開延期を何度か挟んだ為に一時はアプリ界のサグラダ・ファミリアみたいな扱いをされていました。
が、いざリリースされるとその圧倒的なクオリティから一気にスマホアプリの最先端に。
元々アニメも見ていなければ実際の競馬にも興味がなかった俺ですが、うっかりアプリをDLしてからはありとあらゆる余暇をウマ娘に破壊されています。誰か助けて下さい。
ちなみに俺の推しウマは「ハルウララ」です。
引用:ウマ娘公式サイトキャラクター紹介ページ(https://umamusume.jp/character/detail/?name=haruurara)
ハルウララ(ウマ娘)は同名の競走馬がモチーフのウマ娘。物語の舞台でエリート揃いの「トレセン学園」では例外的、全然レースに勝てないへっぽこですが、レースへのやる気に満ちた天真爛漫な振る舞いと、負けてもめげない持ち前の明るさで皆に愛されるウマ娘です。
なんていうか凄く応援してあげたくなる子。
ゲームのシナリオも、他の名馬をモチーフにしたウマ娘達がバンバンG1レースに出る中、ウララは出られるレースにコツコツ出走してファンを集めるって進行が「ウララらしさ」が現れてていいんです。
何より有馬記念を軸に進むストーリー!
ただ「楽しいからレースに出る」だったウララが「走る事」「勝つ事」に向き合って、本当の意味で「勝ちたい!」と思えるように成長していくんですよ!
そして誰もが一笑に伏したウララの夢「有馬記念」!一見ありえない
「ハルウララ×有馬記念」という化学反応でこんなシナリオが書けてしまうんですね!
俺はものの見事に心の肋骨をバキバキにされました。本当に助けて下さい。
「え?ハルウララって昔聞いたような……」
と気付いた方。そう。そのハルウララです。
一切競馬に興味がなかったとしても、我々アラサーやその上の世代は人生のどこかで「ハルウララ」という牝馬(メスの馬)の名前を聞いた事があるはず。
ハルウララは華々しい活躍をした馬ではありません。
むしろその逆。113戦して0勝。その競走馬人生で一度たりとも一着を取った事はなし。
生涯走ったレース場も、当時財政難で潰れかけの高知競馬場のみ。
しかし、ひたすら連敗を続けている様に徐々に注目が集まると、2003年頃から「負け組の星」として全国的なブームに。競馬を知らない老若男女にまで広まった「ハルウララ」の知名度は、高知競馬場の首の皮を繋ぎ、財政を立て直してしまった程。こうしてハルウララは「未冠の名馬」どころか「未勝の名馬」としてその名を残しました。
当時小学生だった俺も、テレビで連日その名前を目にする度
「頑張ってる馬がいるんだなぁ」と応援するような気持ちでいた記憶があります。
そういえば、ハルウララって今はどうしてるんでしょうか。
Wikipediaとかに載ってないかな……
…………
……
――そこに記されていたハルウララの「経歴」。
……ブームの陽光に照らされた部分しか知らなかった俺が、言葉を失うのに有り余る記述が並んでいた。
ハルウララブームが過熱していく中で、一部の関係者から向けられる戸惑いや冷ややかな目。毎年幾千と産まれるサラブレッド。馬の生涯を費やして、名前を残すような活躍をする馬はほんの一握り。
結果を示した強い馬は、次の世代に血統と夢を託す。
では「そうじゃなかった馬」は?
……だからこそ、競走馬に関わる人は馬を勝たせる為に全力を尽くすし、「勝たせる事」が本懐だ。
そんな競馬の世界で、競馬を知らない我々に応援され、「負け続ける馬」としてハルウララは有名になった。
「そうじゃなかった馬」を見送って来た競馬の関係者達が違和感を覚えるのも無理はないだろう。誰もが名前を知る騎手の武豊でさえ、一時は競馬の本質から乖離したブームに怒りを覚えたという程だ。
ウマ娘のゲーム内でも、ウララが勝てないままに人気になる事を非難される場面があった。皆勝ちたいレースがあって、それでも勝てなくて悔しい思いをして。その一方で自分の実力関係なしに人気だけで夢を掴もうとするのは間違っていると。
……実際のハルウララの境遇を知ると、このシーンの重みも段違いだ。
とは言え、ハルウララに関わった人は皆「ハルウララを勝たせたい」と努めていた。それが解る言葉が残っているだけでも救いはある。
この時点では。
ハルウララの権利を引き継いだ次の馬主は、理由を付けて半ば強引にハルウララを高知から移送した。
移送先では「勝てなきゃおかしい」所まで仕上がったというが、体調を回復させる為だとか述べて高知に戻す事はなかった。
そしてハルウララに纏わる様々なプロジェクトを立ち上げる裏で、現役続行の意思確認を無視した事でハルウララは競走馬としての登録を抹消された。
まるで「勝たれちゃ困る」とでも思われているように。
その後も馬主はホースセラピーだとか、繁殖牝馬にしてディープインパクトと交配させようとかの企画を立ち上げたようだがまともに成立した事もなく、ハルウララはあちこち引き回され。
……その末に消息不明になった。
馬という家畜、その中でも特にサラブレッドは人の都合で生かされている生き物だというのは否定できない。
だとしても、ハルウララブームで産まれた温度差や引退前後の顛末を追うと、彼女を振り回した人間のエゴを感じてしまう。
そして当時、競馬のけの字も知らずにハルウララブームに乗った自分達がその一端を担ってしまったのではと、今更償いようのない罪悪感を抱く。
だがハルウララのお話はここで終わりではない。
ハルウララは「マーサファーム」という預託牧場に預けられていた。
馬主からは半年程で預託料の支払いがなくなり、一時は処分すら危ぶまれたというが、ハルウララを支援する「春うららの会」が立ち上がると支援者が殺到。
現在ではマーサファームと会員達の支援によって、穏やかな余生を送っている。
ハルウララを振り回したのが人のエゴなら、ハルウララを救ったのは人の愛だった。という事かもしれない。
……しまった。歩きスマホに夢中になっていたら道に迷ってしまった。
どこだここ。
ケ!?
という訳でハルウララが余生を送る「マーサファーム」様にお邪魔します。
今日は、かつては日本中で名前を知られ、ウマ娘効果で今再び注目を浴び始めたハルウララの現在と、競走馬を引退した馬の余生に関してのレポートを記したい。
※注意
当記事はマーサファーム様及び各地の牧場への観光を推奨する意図で作成されておりません。現地に赴けない方々にハルウララとマーサファーム様の現在をお伝えするという目的の元執筆しています。
3ページ目に「自宅から出来る引退馬支援の方法」についての記載を行っておりますので、興味のある方はそちらをご覧下さい。
マーサファーム様はごく少人数で運営されている預託牧場であり、観光を主目的として運営されている牧場ではありません。
対応出来る見学者の人数にも限りがあります。当記事の取材を行った4月上旬と比較し、現在のマーサファーム様には見学希望者が殺到しています。コロナ禍である事も相まって、あくまで個人の感想ですがこれから見学希望を申し込むのは推奨できないのが現状です。以前はメール・電話で見学の予約を行う形式でしたが、2021年5月より見学予約の方法が変更されました。特に電話でのお問い合わせは基本的に避けて下さい。
最近作成されたマーサファーム様の公式Twitterがありますので、もし見学を行いたい場合には予約方法、臨時休業、既に見学の受付を締め切った日時等を確認して下さい。また、昨今牧場やお墓参りをする人のマナー低下が問題となっており、それが原因で見学の受け入れ停止せざるを得なくなるという事態も発生しております。
牧場を見学する際に必ず守らなければならないマナーがあり、「競走馬のふるさと案内所」様が纏めたページがありますので、もし今後牧場等の見学を希望される方はこちらに必ず目を通して下さい。(https://uma-furusato.com/guide/rule)
当記事では飛び込みで訪れたような演出がありますが、実際には一月程前に取材を行う旨を連絡し、予約を行っております。
マーサファーム様及び各地の牧場への直接のお電話は避けるようにお願いします。
そして何よりもアポイントを取らずに訪れるのは
絶対に
絶対に
絶対にやめてください。
※当取材は緊急事態宣言明けの4月上旬に行われました。