【串刺し】串や棒、杭などで貫くこと。またその状態にあるものを指す言葉だ。
これは俺が串刺しと向き合い、そして串刺しになった時の話だ。
(読者の皆さん初めまして、ナ月と申します。今は無職をやってます。好きなものはアイドルマスターです)
(普段はこうやって小さくなって肉食獣などから身を守っています)
十一月某日、俺はお尻から口まで串刺しになっていた。
他人に串刺しにされたのではなく自ら望んで串刺しになった。
世の中には自ら望んで串刺しになる人間もいる。それが俺だ。
なぜ串刺しになったのか、なろうと思ったのか。事の発端は数日前まで遡る。
(人がえらいことになっているシーンなのでモザイク処理を施しています)
その日俺は映画『食人族』のDVDを見ていた。イタリアの古いモキュメンタリー映画で人を食べる部族が人を食べたりする内容だ。
俺「アハハハハ、やっぱり『食人族』は面白いなあ」
???「ガハハハ! ちげえねえや! 食人族は最高だな!」
彼はきゅうりの一本漬けくん。俺の大親友だ。今日は彼と一緒に食人族を見ていた。
きゅうりの一本漬けくん「特に人間が食われるシーンが最高だぜ!」
きゅうりの一本漬けくんはこの映画が大好きだった。
(女性が裸で串刺しになっているシーンなのでモザイク処理を施しています)
俺「あ、見て見て! 女の人が串刺しになってる! まるで……」
きゅうりの一本漬けくん「きゅうりの一本漬けみたいだってか? お前そうやってオレのことバカにしてるがな、お前こそ仕事辞めちまって、芯ってもんがないんじゃねえのか?」
俺「ごめん、バカにしたつもりじゃ……俺、きゅうりの一本漬けくんが羨ましいよ。俺も、芯が通った男になりたい」
きゅうりの一本漬けくん「だったらよ、なってみりゃいいんじゃねえのか?」
俺「え?」
きゅうりの一本漬けくん「串刺しになって初めて見える世界もあるってこった」
ムシャムシャ
俺「串刺しかあ……」
俺「唐揚げ棒くんはどう思う?」
唐揚げ棒くん「串刺しになってみたら?」
俺「そっかあ……」
俺「串刺しって言っても、死にたくないしなあ」
二人が言ったことを考えながら食人族のパッケージを眺めていると、パッケージの串刺しの女が俺に語りかけてきた。
串刺しの女「思い悩むことなんて無いわ」
俺「え? どういうこと?」
串刺しの女「死なずに串刺しになる方法もあるってことよ」
俺「わかるように言って」
串刺しの女「アタイだって本当に串刺しになってるわけじゃないわ、映画だもの」
串刺しの女「実際はこうよ」
俺「なんてわかりやすい図なんだ! ありがとう!」
翌日、俺はホームセンターへ走った。串刺しになるために。
串刺しセットを作る
これはプラスチックのチェーンとかをかけておくくためのポールと塩ビパイプだ。
頭の部分を切り落とす。邪魔だから。いつの時代も邪魔なものはこういう目に会う。
塩ビパイプはちょうどいいくらいの長さに切る。ちょうどいい長さとは少し背伸びをしたら座れる程度だ。何事もそれくらいがちょうどいい。
合体させる。サイズがぴったりすぎて「こいつら結婚すればいいのに」と思った。(古いインターネットでよく使われていた言葉です)
これらは図で言うと土台の木の役割を果たす。
立てて置き、先端には柔らかなものを当てがう。お尻を乗せるためだ。お尻のためにも柔らかい方がいい。図で言うとサドルの役割を果たす。
もう一つ棒をこしらえる。プチプチシートを棒状に丸めたものだ。ギリギリ咥えられるくらいの太さにする。図で言うと発泡スチロールの棒だ。
これは木目っぽいシートだ。なんでも木目風にできる優れものだ。現代のテクノロジーは不可能を可能にする。まるで魔法だ。
棒二本に貼り付ける。塩ビパイプの方はかなり失敗したけど、貼り直すのも面倒臭いしこれはこれでなんだかこれっぽいのでこのままにすることにした。
これで準備は整った。
串刺しになる
ズボォーーーーー
どう見ても串刺しだ。俺は完全に串刺しになっている。
もちろん棒の上に座って棒を咥えているだけだから安心して欲しい、俺は生きている。
串刺しに見えない人のためにGIFアニメを用意した。完全に串刺しに見えることだろう。
これでも串刺しに見えなかったら今日は一旦この記事を閉じて、明日もう一度見てみよう。ゆっくりで良いから串刺しに見えるようになっていこう。
横からズボォーーーーーー
思ったよりもそれっぽくなって感動している。きゅうりの一本漬けくん、見てますか? 俺は今串刺しです。
本当は口やお尻から血をダラダラ流したかったけど、いつかこの記事をゲーム化する時のCERO対策のためにやめておいた。
背後からズボォーーーーー
一番串刺しっぽく見えるアングルで気に入っている。完全にアヌスがあれしているように見えるが、柔らかなもので保護されているから安心して欲しい。
やや俯瞰気味に見るとこうだ。串刺しだ。串刺しの人間がそこにいる。
あなたは串刺しの人間を見たことがありますか?
注意点としては、まず上下の棒の軸がずれると串刺し感が半減してしまうことがあげられる。
これは上手いことやるしかない。少し練習を要する。
あと上半身だけを見るとただの棒を咥えたバカになってしまうから注意が必要だ。
本当に、本当にバカみたいだ。
串刺しキットは分解して簡単に持ち運ぶことができる。例えば、静かな路地裏で串刺しになることもできる。
街の賑やかな大通りから一歩脇道に入れば、そこは緩やかな時間が流れている静かな路地裏であったりするし、そこには串刺しの男がいるかもしれない。
巨木の横で串刺し。
なんだか巨木に見守られているような気分になる。ありがとう、巨木。
これを撮影している時に通りかかった子供に「串刺しみたい」と言われてとても嬉しかった。
そう、俺は串刺しなんだよ。
棒状のオブジェに囲まれて串刺し。
この棒状のオブジェどもは完全に俺のことを仲間だと思い込んでいる。
棒状のオブジェはそれほど知能は高くないが優しく温厚だ。俺は棒状のオブジェたちを傷つけないように、できるだけ仲間のフリを続けた。
串刺しになってみて気がついたことがある。串刺しになると強制的に上を向くことになる。
空って、こんなに青かったんだ。
青空はいつも当たり前に頭上に広がっていたのに、いつもうつむいてばかりいて気がつかなかった。
上を向いて刺さろう
そんな古い歌もあった気がする。
きっと、みんなが言いたかったのはそういうことだったのだろう。
みんなも何かに悩んだり落ち込んだりした時は、一人で悩まずに串刺しになることを考えてみて欲しい。
さあ串刺しになろう。
おわり