皆さんに聞きたい。将来の夢はあるか。
職業でなくても立場、目標、なんでもいい。将来の夢はあるだろうか。
無いだと? そんなはずは無い、絶対にあるはずだ。嘘をつくな。
この俺にも将来の夢はある。俺は夢人間だ。
夢人間の俺が生まれてはじめて将来の夢について語ったのはまだ幼稚園児だった頃だ。
「きゅうり屋さんになりたい」
幼い俺は両親にそう言ったらしい。
正直そんなことを言った記憶はないが、きゅうりが大好きだった記憶はあるので多分本当に言ったのだろう。
まあ幼稚園児の夢なんてこんなもんだ。俺はきゅうり屋さんになりたかったのだ。
次に将来の夢を語ったのも幼稚園児だった頃だ。子供の夢はコロコロ変わる。
「がになりたい」
きゅうり屋さんの次は俺はそう言ったらしい。
「が」だ。
両親の熱心なヒアリングによると「蛾」のことだったらしい。蛾て。
子供の可能性は無限大だ。無限大だからこそ容易に変な方向も向く。
だって、きゅうり屋さんから一転して今度は虫だぜ。畜生道だぜ。両親はどんな気持ちだったのだろうか。
それにしても「蛾」はねえだろと思った両親が熱心にヒアリングを繰り返した結果、俺は「モスラ」になりたかったらしい。
じゃあ最初からモスラって言え。俺。
モスラ大好きだったな。
それ以降は「恐竜博士」とか「ウルトラマン」とかになりたかったのを覚えている。
幼稚園の頃友達に「恐竜博士になりたい」と言ったら「博士は眼鏡をかけていなければなれないが、お前は眼鏡をかけていないから無理だ」と言われたのをハッキリ覚えている。
当時の俺はなぜかそれを真に受けて結構ショックだった。
今、俺は眼鏡をかけている。ざまあみろ。
小学校の作文で書いた将来の夢も覚えている。
「高速道路の料金所の人」だ。
高速道路の料金所の人。父が運転する車の窓から時々見える、あの狭い部屋に入ってるおっさん。
職業そのものというよりはあの狭い箱みたいな部屋になぜか憧れていた。
自分で運転するようになった今でも料金所を通るたびに、ちょっとあそこに座ってみたいとは思う。
作文には確か「これからETCが普及していったら無理かもしれない」みたいなことも書いていたはずだ。変なところで現実的な子供だ。
ETCのやつめ、子供の夢を奪うなんて許せねえ。
それからも、俺の将来の夢は些細なものから大げさなものまでコロコロ変わったり増えたりした。
叶ったものもあれば、叶わなかったり、どうでもよくなったものもある。もちろん持ち続けている夢もある。
今確実に言えるのは、どんな夢でもないよりあるほうが良いということだ。
今は女子高生になってアンツィオ高校で戦車道がやりたい。
それかモスラになりたい。でっかい繭とか作りたい。