こんにちは。オモコロライターのみくのしんとかまどです。
のっけから自分たちの話で恐縮ですが、この度、我々の本が出ます。
うんうん。この一文は有名だよね。さすがの俺も知ってるわ
相槌うちながら読書するんだ。逆に読みにくくない?
ダメ? その方が自分のペースで読めるんだけど
その方が読みやすいならいいけどさ
32歳になるまで本を読んだことがなかったみくのしんが、初めて「走れメロス」を読む様子を記録した記事。
みくのしんが本を読み、かまどがそれを文字に起こす……という事情聴取の書記みたいな形式ですが、おかげさまで多くの方に読んでいただき、この度、縁あって大和書房さんから書籍として出版させてもらえることとなりました。
この本の中では、みくのしんの人生初読書である太宰治の「走れメロス」に加えて……
新たに、有島武郎の「一房の葡萄」
芥川龍之介の「杜子春」
そして、雨穴の書き下ろし短編「本棚」の3作品を読んでいる様子が収録されています。
すでに本の予約も始まっているのですが、周囲からこんな疑問の声が寄せられました。
雨穴……オモコロライター。YouTuberとしても活躍中。デビュー作の「変な家」が大ヒットし、シリーズ累計250万部を突破。2024年には映画化までされた。
雨穴といえば、近年でもちょっと類を見ないくらいのベストセラー作家。
我々も同じオモコロライターとはいえ、実際に会った回数より、書店で平積みされた本や電車の広告などで目にする機会の方が多いくらい遠い存在でもあります。
そんな雨穴が、なぜ書き下ろし短編を寄稿してくれたのでしょうか? かまどとみくのしんに弱みでも握られているのでしょうか?
なので、本人に直接話を聞いてみたいと思います。
この記事は、3名のオモコロライターがただ話すだけの記事です。
よろしくお願いします!!
お願いします!! ……なんかお久しぶりですね
雨穴も忙しいし、家も遠いしで、なかなか会えないもんな〜
今日は出版記念ということで鈍行列車を乗り継ぎ駆け付けてきました
まずは、僕たちの本のために、書き下ろしの作品を書いてくれてありがとうございます
いえいえ。私も楽しみにしています!
俺はずっと怖いよ。雨穴まで協力してくれてるのに大スベリだったらどうしよう……
世の作家さんってこのプレッシャーと常に戦い続けてるんだよね。すごいことだ
今日のオモコロブロスはこんな感じ。本当にただしゃべってるだけです。
なんだか、二人にだけ人間に見えている怪異……という絵面ですが、このままざっくばらんにお話していきましょう。
いっぱい話すぞ!
なぜ雨穴が本に参加しているの?
もともとは、雨穴が僕らの本に参加する予定はなかったよね
そうなんですよ
なんか突然雨穴の参加が決まってた気がする。俺は友だちだから嬉しかったけど、「いいの!?」とは思ってたな
え? みくのしんさんはその経緯を知らないんですか?
僕は読書しただけなので、後のことは何も分かりません
すがすがしいや
俺はただ楽しく本を読ませてもらっただけ。今でもなんでこんなことになってるのかよく分かっていません
じゃあ、説明しましょうか
もともと書籍化の話をいただいたときは、みくのしんの読書の他に、ミニコーナーとして「作者×読者の対談」みたいなものを想定してて……
みくのしんさんが読者代表として、作家と話すってことですよね
そうそう。みくのしんは人と会話するの上手いし、前々から「みくのしんが作者と話す」という機会を作ってみたいとは思ってたんです
あ〜、そういう話あったね。今まで僕が読んできた作品はどれも作者が亡くなってるから、「まあ、無理だよね〜」って言ってたんだっけ?
そんな話をしてたら、出版社の方から「こんな方々を対談相手に迎えるのはどうでしょう?」と名だたる作家さんを勧めてくれまして
私も拝見しましたけど、すごい方々でしたよね。それはそれで見たかったですけど……
でも、みくのしんが読んだこともない作家さんをお招きするのは失礼だし、ゲストで呼びたいから慌てて作品を読むというのも不誠実な気がして……
どうしたものかと悩んでたら、たまたまみくのしんから「最近、初めて自力で本を読み切った」と聞いたんだよね
そうそう! かまどのサポートなしで、初めて一人で一冊読み切ったの! それが雨穴の「変な家」でさ!
………嬉しい……嬉しい…………!!!!!!
そこから「みくのしんが初めて自力で読み切った本の作者と話をする」というのは、流れも分かりやすいし見てみたいな〜と思い始めちゃって
それで私に声をかけてくれたんですね。光栄です
「変な家」を読んでたときはこんなこと考えてなかったな! たまたまだけど、こうして一緒の仕事に繋がったのは嬉しいよ
俺は俺で、雨穴には書籍化にあたって相談に乗ってもらってたから、その流れで声をかけやすかったのもあるけどね
雨穴も忙しいだろうし、「無理なら全然断って大丈夫です!」と及び腰でオファーしたんだけど、二つ返事で快諾してくれました
そうですね。私は、お二人が「対談パートどうしようかな……」と悩んでる様子を、同じチャットルームで見てたんですけど……
「私がいます……私がここにいます……」と、ずっと無言のアピールをしてました
言ってよ。チャットなのに無言でアピールされても気付けないって
候補に挙がっていた作家さんたちと比べれば見劣りするかもしれませんが、参加させていただけるならぜひ!という感じで
ともかく、そういう流れで、雨穴が本に出てくれることになったんだね
ただ、出版社の方々は大慌てだったらしいです。「なぜ急に雨穴さんが?! そんなことして大丈夫?!」ってなってたらしい
急にかまどが無茶なワガママを言いだしたと思われたのかな? 僕らの関係性を知らなかったらそうなるよな
その節はご迷惑をおかけしました
雨穴のサービス精神
で、「雨穴とみくのしんが対談する」みたいな企画で進もうとしたんだけど、オモコロライター同士でそれはさすがに内輪すぎるからちょっと形式を変えようかな? という話になって……
正直、対談だけの参加は自信がなかったので助かりました。私、見た目の割に普通のことしか言えないし
そんなことはないと思うけどなあ
そしたら、雨穴が「私がおすすめする作品を一緒に読むのはどうですかね?」と提案してくれたんだよね
私の好きな江戸川乱歩の短編に、ちょうど読みやすいサイズの作品がありまして
それで教えてくれたのが「指」っていう小説でした。短いけどゾッとするホラー小説で、たしかにみくのしんにも読んでみてほしいなと思ったな
けど……
けど?
雨穴が突然「やっぱり私が何か書きましょうか?」と言ってきた
そんなことある???
もう、せっかくなら行けるところまで行ったれ!と
僕らとしてはめちゃくちゃ嬉しいけど、同時にとんでもないことが始まったと思ったよ
「みくのしんが初めて自力で読み切った本の作者と、その人の作品を読む」というのは、そりゃまあキレイな流れだと思うけど……
そんなこと、こっちからは頼めないもんね
「頼まれないだろうな」と思って自分から提案しました
予想外すぎてビビったよ。だって……雨穴が短編作品を書くこと自体、珍しいよね?
あまりないですね。それに今回は「みくのしんさんが短時間で読み切れる分量」という制約もあるので、かなり珍しい体験でした
俺のせいで無理してんじゃん
いや、それ自体はすごく面白い体験だったんですけど……ただ……
ただ?
よく考えたら、私が太宰治たちの横に並ぶってことだよな……と思って冷や汗が出ました
かわいいところ気にしてるなあ
たしかに、一人だけ異質すぎて見た目がスゴいことになってる
なんにしろ、このサプライズのおかげで、雨穴が参加してくれたパートもめっちゃ楽しかったよ
雨穴は、実際にみくのしんと一緒に本を読んでくれたけど、どうだった?
そうですね……
読書中の様子
本当にあんな感じで本を読んでるんだと思いました
そりゃ、実際に目の前で見たらそう思うよな
自分が書いたものですけど、あんな読まれ方をするとは予想してなかったので驚きました
俺は一緒に読めて嬉しかったよ! 「雨穴ってそんなこと考えながら本を書いてたんだ!」って知れたのもよかったな
作者と答え合わせしながら読書できる機会ってないもんね
よかった……
ただ、出版社はまた大騒ぎだったらしいです。「雨穴さんの書き下ろし?! 勝手に変な交渉してない???」ってなってたらしい
かまどが暴走したと思われたんだろうね
その節はご迷惑をおかけしました
なぜここまで協力的なの???
でも、出版社の反応もごもっともなんですよ。正直、我々も「雨穴はなんでここまでやってくれるの?」とは思ってます
それは気になるね
私はそもそもお二人のファンですから。7年前から「かまってみくのしん」(オモコロで連載しているかまどとみくのしんのウェブラジオ)を聴いてるんです
7年前から!? それって俺たちが雨穴と知り合う前じゃない???
はい。知り合う前からファンでした。「かまってみくのしん」リスナーからオモコロライターになった人というと、のぎへっぺんさんが有名ですが実は私のほうが先なんです。もう、かなり最初の方から聴いていましたから。キルアの去り際も、永田さんを交えての最終回ドッキリも、豊後にみくのしん軍団が集結してのネタバラシも、リアルタイムで体験しました。オモコロ合宿でみくのしんさんがマキゾウさんに慰めてもらった話とか、山ラジさんが銭湯で倒れてみんなで看病した話とか、神田さんが刺身に電流を流した話とか、ダウンロードして何回もリピートしました
落ち着いて落ち着いて
思ったより重いファンだ
ただ、それだけじゃないんです
実は私、みくのしんさんに大きな恩がありまして。それをお返ししたいとずっと思ってました
恩? 俺、何かしたっけ?
私がオモコロライターになりたての頃の話なんですけど、東京にみんなで集まって遊ぶ機会があったんです
あ〜! あったあった! 僕らが初めて会ったときだよね!
もう5-6年前の話だね
ついつい楽しくて、その夜、終電を逃してしまったんです
そうそう! 雨穴は遠いところに住んでたから、みんなより終電が早かったんだよね
東京に泊まるツテもないし、途方にくれてたんですけど……
そのときみくのしんさんが「よかったら家に泊まっていく?」って言ってくれまして
言った言った! 覚えてるよ! 当時は終電を逃したライターがうちに泊まりにくることがよくあったんだよね
たしかに、俺もよく入り浸ってたもんな〜
一度、数えてみたんだけど、俺は2年しか住んでなかったのに、合計で84人遊びにきてたらしいです
宿屋じゃん
ただ、私は反射的に「いえ!大丈夫です!」って断ってしまったんです。当時から私はみくのしんさんのヘヴィーなファンだったので緊張してしまって。「推しに気を遣わせるわけにはいかない」と遠慮しました
そうだったんだ……
とはいえ、断った直後に後悔しました。ファンだから、本心ではみくのしんさんの家に行きたいんですよ。でもファンだから自分から「やっぱり泊めてください」なんて言えない。「こいつ、言ってることコロコロ変わるな」と思われて嫌われたら傷つくから
ファン心理って複雑だな
当時の出来事をマンガにしたこともある雨穴
あれ? でも、あのとき一緒に俺ん家でご飯食べなかったっけ?
はい。その後、みくのしんさんが改めて誘ってくれました。なので、結局その日は泊めてもらうことができたんですが……
そのときのみくのしんさんの言葉が忘れられなくて
俺、なにか言ってたっけな? 「俺の家、トイレットペーパーないけど大丈夫?」と聞いたのは覚えてるんだけど
なんちゅう家に住んでんだよ
それはそれで忘れられないんですが、私が覚えてるのは別のやり取りです
みくのしんさんの家に向かう途中で、こんなことを言ってくれて……
「無理やり誘っちゃってごめんね」
「俺は正直、雨穴さんが本当に迷惑で断ってるのか、遠慮してるだけなのかが分かんねーんだ」
「俺はバカだから、どっちなのか分からないし、よく間違うんだよね」
「でも、俺はこういうときは、あえて無理にでも誘うようにしてるんだ」
「もし、本当に迷惑で断ってたとしたら、俺が嫌われるだけで済む。それに、迷惑かもしれないけど宿代が浮くって考えれば、少なくとも雨穴さんはお金の面で損はない」
「でも、遠慮してるだけで本当は困ってるんだとしたら……このまま一人で帰してしまうと、雨穴さんが惨めな思いをすることになるでしょ」
「俺は人が惨めな思いをするのが一番嫌なんだ」
……。
いい奴だなぁ……
自分で自分に感動してる?
なにこれ? 本当に俺の話か? 二次創作じゃなくて?
本人の前で二次創作を披露する奴はいないよ
推しにそんなこと言われたら、もう一生ついていくしかないですよね。「いつかこの恩は必ず返さなければ」と思っていました。今回、本に協力することで、その恩がちょっとだけ返せたかな? と思っています
一宿一飯の恩ってこんなにデカいんだね
なんか昔話みたいだ。俺が正直じいさんで本当によかった
さいごに
これ何のときの写真だっけ?
分かんないけど楽しそうだ
ということで、雨穴も参加しているかまどとみくのしんの書籍「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む」は8/3(土)発売!ただいま予約受付中です。
予約特典として、江戸川乱歩の「指」をみくのしんが読んだときの音源をプレゼントするキャンペーンも実施中! 50分くらいある音源なので、お時間に余裕のある方はぜひお聴きください。
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何卒よろしくお願いします!