
それは先日。実家に帰省したときのこと。
母から「アンタの部屋、整理してよ」と頼まれました。
言われるがまま、学生時代の品々を分別している際に、ソレを発見したのです。

パイレーツ・オブ・カリビアンの
クリアファイル
危険信号(シグナル)。
クリアファイルの中身を確認しようとした瞬間、脳内でもう一人の自分がアラートを鳴らしてきました。
「(あけっ、開けるなァ……)」
たしかに、このクリアファイルは、自分が学生のころに使っていた私物。
だとするなら、ファイルの中身も、僕に纏わる物の可能性は高い。
点数がボロカスだった答案用紙?
それとも、元カノとのプリクラ?
…………………いや、違う。
そんな生易しいモノでは、無い。
「(開けるなァ……)」
依然として脳内では警告が鳴り響く。
それはさながら、パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェストで、自身の心臓を隠した宝箱をジャックに開けられそうになったデイヴィ・ジョーンズの悲鳴のような……。
それでも、好奇心に抗えないのがWebライターという生き物の性。
意を決してファイルの中身を開くと、ソイツは現れたのです。

俺が中学生のころに描いてた
漫画の模写たち
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!

乾杯!
しばらくの間、皮膚を内側から掻きむしりたいほどの羞恥に悶え苦しんだ後、
すぐさま冷蔵庫のもとへ走り出し、親父が買っていた発泡酒を勝手に持ち出し、
そして、この宝物の前で祝杯を上げました。
よくぞ残っていたな、と。
両親、よくぞ捨てないでくれていたな、と!

思い出した。いま、ハッキリと思い出した。
中学1年。夏休み。
ひっそりと漫画家を志していた自分は、長期休暇を利用して、好きなマンガの模写に明け暮れていたのです。

僕の学習机(ここでひたすら模写してた)
当然、その頃はSNSなんて存在しない時代。
画像投稿サイトはあったのかもしれないけど…。
そもそも我が家には、まだインターネット回線が通っていません。
そのため、ボクは誰に見せるでもなく、
ただただ己の“好きな漫画のイラストを描く欲求”を満たすためだけに、
無我夢中で模写に没頭していました。
自分と同じようなオタクの少年少女なら、誰しも一度は経験あるんじゃないでしょうか。そう、ルックバック期!

ヒーッw
ヒ~~~~ッw
ヤバい。身体から蕁麻疹が出てきそう。
いまがネットの時代で良かった。
オレのもっとも恥ずかしい部分を、こうして皆さんに露出できるのだから。
これって一種のセクハラになりますかね? だとしたらごめんなさいね。

『家庭教師ヒットマンREBORN‼ 』の六道骸とクローム髑髏の模写

『家庭教師ヒットマンREBORN‼ 』の六道骸の模写

『D.Gray-man』のクロス・マリアンの模写
当時はコピー用紙にシャーペンで模写をするのがメインでした。
あの頃、
「トレース※はダサいから絶対やらん」
「夏休み期間中、一日一枚は模写しなければ死んでやる」
※トレース……元のイラストの上に、用紙を直接被せてなぞること
みたいなマイルールを己に課していた気がする。
まぁいま確認できる模写の枚数からすると、たぶん2週間ぐらいで飽きたんでしょうけど。

『D.Gray-man』のラビの模写
たまにマンガ用のペン先を使ったりもしてた。

ペン先を使って描いたラビ
初めてGペンやスクリーントーンを買ったときの興奮は、いまでも鮮明に覚えています。
その年の元旦。
もらったお年玉を財布に忍ばせて、雪の降るなか、街の大型書店に向かったなぁ(田舎でも大きい書店には漫画用品が売ってる)。
そのときの自分にとってのGペンは、それまでの世界が一変する武器で…!
学校のどうでも良いアレコレで一喜一憂してるクラスメイトを尻目に、俺だけは、創作の世界と繋がっている。
Gペン一本で、そんな青臭い万能感に包まれていたのです、俺は。俺は!

こういうインクが滲んだ裏面、
なんか、表面以上に嬉しくなるね
Dグレで思い出したけど、この頃の自分、
それまでは普通にタメ語だったのに、
Dグレのアレンに憧れて、
急にクラスメイトに対して「です・ます調」で話すキャラを演じてた。
……あ゛ぁ゛ッ! 死ッ!

『ハヤテのごとく!』の綾崎ハーマイオニーの模写

綾崎ハーマイオニーが初めてフェチに目覚めたキャラでした。

綾崎ハーマイオニーは俺を狂わせたキャラの一人だったので、模写もとくに気合を入れましたね。
ペン入れはもちろん、トーンやホワイト処理までしっかり施して……
ただの模写なのに! どこかの漫画賞に応募するわけでもないのに!
あの頃は、ただただ「ペン入れをしてトーンを貼れる」ことが幸せだった。

『ハヤテのごとく!』のマリアの模写
「誰にも見せずに~」と言ったけど、このイラストは同級生でオタク友達の伊藤くんに見せた気がする。
夏休み明けの放課後。図書室。
「あ~、なんか、こんなん描いてみたけど…?」
とか言いながら、素っ気ない感じでイラストを自慢しちゃってさ。
そしたら伊藤くんも「んふっふw」って喜んでくれちゃってさァ!
あの頃、図書室の一角が、オタクの湿度でたしかにキショかった。

『ソウルイーター』のマカとソウルのオリジナルイラスト
あ! これはすごい!
自慢ですが、このイラスト、なんかのコンテストで賞をもらいました。

当時、好きな漫画のオリジナルイラストを投稿できるコンテストが開催されてたんですよね。
もう、コンテストの名前も忘れちゃったけど。
で、当時激ハマりしてた『ソウルイーター』のマカとソウルを描いて応募したら…
なんらかの賞を取って、作者・大久保篤先生のサイン入りオリジナル時計をもらいました。

ちゃんと「TAKAYA」って描いてある!
クソほど嬉しかったね。
震えた。
3年間所属していたソフトテニス部では一度も勝てたことなかったのに…。
イラストの世界では、小さいながらも、輝くことができた。
あぁ…あぁ……。
俺の中学時代のピーク、ここだったなァ…。

この時計はいまでも実家に飾ってあります
そんなわけで、実家の掃除をしてたら黒歴史イラストの数々を発掘したわけですが……。
ここからが本題。
今回、とくに自分の感情を揺さぶったイラストが……

『銀魂』の土方と沖田の
オリジナルイラスト

殺せェ

殺してくれェ
当時、激ハマりしていた『銀魂』。
たしか、初めて自分のお小遣いで買ったコミックが『銀魂』だった気がする。
それぐらい好きだったので、必然、書きますわな。土方と沖田。
コレ、ちょっと…規格外すぎるかも…。

男子が描きガチ
散り散りドクロ
殺せェ。

困ったときの
ダボダボパーカー
殺せェ!

両手ポッケ入れ~の
両足描かず~の
ぶっ殺せェ!!!

中学生が描くオリジナルイラスト要素、てんこ盛り。
黒歴史イラストの、オールスター天丼。
はァ…はァ……。インフルエンザになりそうだ。

そして、このあたりからですね。
自分が絵と離れたのは。
模写までは楽しく描けてたけど…。
オリジナルのイラストで挫折した。

ここから絵が上手くになるには、
もっとちゃんと絵を勉強しなければいけない。
中学生にして、その事実に気づいてしまったんです。
「あれ…?絵って、楽しくないかも…?」みたいな。
そして、「じゃあ、もういいや」と諦めてしまった。
楽しく絵を描きたいのに、楽しくないことをするなんて……!
その後、絵の勉強はおろか、好きな作品の模写をする機会すら減っていき、現在に至ります。
僕はそんなどこにでもいる、ありふれた子どもだったのです。
俺はもう一度、銀魂の土方と沖田を描いてみる

あれから約20年の月日が流れました。
かつて、ルックバックの主人公と同じことをしていた自分は、
漫画家になることもなく……
絵に携わる仕事にも就いておらず……
そして、今日まで、模写に明け暮れた日々のことなどすっかり忘れていました…。

それでも、自分にもルックバックだった日々が、
たしかに存在していた。
誰しもがルックバックのように、絵に対して誠実に向き合えるわけではない。
それでも、かつて自分にも存在していた。
絵に、 模写に、 無我夢中で向き合ってた夏が!

なので、俺はもう一度、銀魂の土方と沖田を描きます。

あのとき描いたイラストとまったく同じモノを。


記憶を頼りに、あのときと同じ画材を揃えました。

この行為に、あえて意味を見出すなら、追憶。
かつて甲子園を目指していた野球少年が、大人になって、あの頃使っていたグローブを押し入れから引っ張り出してオイルで磨く。
それと同じこと。
いわば、想い出の模写。
ルックバックだったあの頃を、ルックバックする。
今日はそういう日。今日はそういう日。

描きます
当時は、模写する線の一本一本にも妥協をしなかったな~。
髪の毛の房(フサ)も、線の長さや角度まで正確に再現しようとしていた。

ペン入れ
……いま、もうあのときほど集中力は出せない。
32歳。あらゆることに対して、集中力が保てなくなってきた。
何をするにもすぐ疲れてしまう。ちくしょう…! クソが…! バカが…!

そしてコピックで着色
当時でもコピックって一本2~300円ぐらいしたので、数本ぐらいしか書えなかったんですよね。
ガキの小遣いで、コピック全色はちと厳しい。
だから選定に選定を重ねて、必要最低限のコピックを買うしかなかった。

沖田のパーカーがベージュ色なのも、たぶんそれが理由。
「せめて人物の顔だけはちゃんと塗りたい」の考えで、うすだいだい系統のコピックばかり買ってたんだろうな。
赤色や水色なんかは買う余裕が無いから、自宅にあった赤のサインペンとかで代用していた。
いまならコピック、勇気を出せば全色買える。
そんな…年齢になってしまった…。ちくしょう……。

「散り散りドクロ」も再現
んだこのドクロ。ダサすぎだろ。ボケ。死ね。

両手ポッケ入れ、両足描かずも再現
このとき両手や両足を描かなかったのは、もちろん自分に画力が無かったから。
「描かなかった」ではなく、「描けなかった」。
指の関節とか、靴の角度とか、ムズすぎる。
まぁ、大人になったいまも描けないんだけど。
だからこそ、ここからポッケから手を出せた人…
両足を幽霊にしなかった人…
大人になったいまも絵を描き続けてる人…
本当にスゴい。
スゴいことしてるって自覚してほしい!

そんなこんなで完成。
左が、僕が中学1年生のころに描いた、銀魂の土方と沖田。
右が、それを20年後に模写した土方と沖田、です。
左:中学1年生の頃に描いた土方と沖田
右:32歳で描いた土方と沖田(模写)
完全再現……とは言えないか。
あの頃の自分なら、妥協せず、もっとちゃんと模写しただろうな。
それでも、この模写には約20年分の時間がレイヤーとして挟まっている。
重っめぇ、重っめぇ、レイヤーなのだ。
かつてルックバックだった僕へ

以上です
そんなわけで、みなさんもこの夏。
実家に帰省した際、もし、当時の恥ずかしい黒歴史イラストを見つけたら……。
当時とまったく同じ一枚を模写してみるのはいかがでしょうか。
時の流れに思いを馳せることができるかもしれません。
…まぁ、その前工程で、羞恥で悶え苦しむ作業が必要になるけど。

とりあえずこのイラストは、オタク友達の伊藤くんに捧げます。
(最近結婚したらしい。おめでとう!)

たかや









尊木

JUNERAY
ナ月
増田薫


めいと
雨穴
オモコロ編集部






