俺はナ月。ライターだ。顔は出していない。
Webライターは顔を出したほうが有利だということはわかっている。だが俺の世代は「インターネットに顔を出すと悪質な奴らのおもちゃにされて、生前だけでなく死後もMAD素材にされ辱めを受け続ける」と教育を受けているので怖くて顔出ししていない。それでこんな貞子みたいな髪型をしている。リングが好きなのもある。
とっくにそんな時代は終わっていて、今はもう多少の悪意を無視してでも顔出しする方がメリットが多いのだろう。しかし終戦後もジャングルで怯え続けていた兵隊のように俺もまだインターネットのことを信じきれていない。
Webライターをやるにあたって顔出しに勝るとも劣らない力を得られる手法が一つある。イラストだ。イラストが描けるライターは時に顔出しライターに匹敵するパワーを持つことがある。俺は描けない。
イラストか……。落書き程度の絵は描いたことがあるが、本気で練習したことは一度もない。ちょっと挑戦してみるか。
フィギュアの摩美々ちゃんを描いてみよう。
ここがこうなって……こうで……こうであるからして……
できた。なんというか、上手いとか下手とか以前の問題な気がする。何が問題って
写真をトレスしてこれだということだ。
いや、もっと丁寧にやればいいというのはわかる。わかるのだけど、どこに注力していいのかが全然わからない。全部だろうな。全部なのかもしれないけど、この先まずどこから手をかけていいのかわからない。
なんだかこう、ただ写真の輪郭をなぞっただけの線の集まりで人物の絵ではない気がする。生き生きしていないというか、死んでいる絵というか。
生き生きさせるにはどうすればいいのか。それならイラストのことなんかさっぱりな俺でもわかるぜ。
生きた画材を使えばいいんだ。生きた画材で絵を描けたば生きた絵になり生き生きするに違いない。
完璧な理論だ。俺何かおかしいこと言ってますか。
世の中には微生物アートとかバクテリアアートとかいうのがある。詳しくはGoogleで検索してみてほしい。
あれをやろう。その辺の雑菌で。図で説明するとこうだ。
こういうことだ。幸い俺は学生時代微生物をバリバリ扱っていた理系くんなので微生物の扱いに多少の心得はある。
※この記事では雑菌という言葉を使っていますが、実際は何の微生物だか全然わかりません。菌ですらないかも。微生物という言葉を使うべきだけど、もうめんどくさいので雑菌でいきます。
※真似する時は自己責任でお願いします。
準備をするぜ
まず雑菌を採取するための培地(微生物をくっつけてそのまま育てるためのゼリーみたいなの)を作る。俺は以前趣味で野良猫から採取した雑菌を育てていたことがある。その時の方法でいく。
まず熱湯で器具を殺菌する。器具とは今みんなが見ている可愛いマグカップとスプーンのことだ。
さらに除菌シートで拭く。余分な水分を拭き取りつつ、これから作る培地に余計な菌が入るのを防ぐためだ。
実験室のような立派な設備はないので、コンタミの防止は「できるだけのことはやるけど妥協はする」という姿勢でいく。(コンタミ:目的外ものが混ざっちゃうこと、ここでは狙ってない雑菌とか)
開封したてのポカリスエットを注ぐ。絶対に口をつけたものを使ってはいけない。
レンジであっつあつに温める。
ゼラチンを適量。硬めにしたいので箱に書いてある分量を無視して多めに入れてみよ。
ダバー
ミスった、よくない。絶対溶け残る。2袋は多い。
気合いで溶かす。(ここでいう気合いとは、明らかに溶けそうにない分の粉をすくって捨てたりすることです)
使い捨て滅菌シャーレに流し込む。このシャーレは普通にAmazonとかで買える。
冷蔵庫で冷やして固める。要するに今はポカリスエットのゼリーを作っている。以後これをポカリ培地と呼ぶ。
冷えたものがこちら。蓋の裏にめちゃめちゃ水滴が結露してしまった。これを防ぐ方法はあるが、やっている間完全に忘れていた。あとで除菌シートで拭けばいいや。
雑菌を採取するぜ
公園に来た。公園には雑菌がいるに違いないから。
遊具の手すりだ。毎日泥まみれの子供が掴みまくっているはずだ。雑菌がいるに違いない。
培地を押し付けて採取する。
わからなくなると困るので付箋を貼っておこう。蓋の水滴はまだ拭いてない。
遊具に培地を押し付けた後は綺麗にした。
落ちてた鳥の羽。多分カラス。
雑菌が期待できる。とってみよう。
落ち葉もいいな。
とりあえずこの3種類で様子を見てみよう。さあ増えろ雑菌たち。絵の具にしたいからできればカラフルだと嬉しい。
※この先シャーレいっぱいに増えた雑菌の写真などが出てきます。苦手な方は絵を描き始めるあたりまで飛ばしてもいいかもしれません。菌の画像って苦手な人っているんですか。俺はもうその辺の感覚が全然わからなくなりました。飛ばしてもいいんですけど次のページは猫ちゃんの写真もいっぱいあります。よかったら飛ばさずにどうぞ。
次ページ:雑菌を培養したり、さらに猫ちゃんから雑菌を採取したりするぞ