「鶏肉みたいな味」という表現

 

 

「味」の表現は難しい。

 

よく食べているものならまだしも、初めて食べたものの味を表現する時は、過去に食べたものに例えるのが近道だ。

そんな味の表現の中でも、特によく使われている形容がある。

 

 

 

「鶏肉みたいな味」

 

 

牛や豚や鶏ではないマイナーな肉を食べた人が言いがちなセリフだ。

一度は聞いたことがあるのではないだろうか。

 

 

鶏肉みたいな味-Wikipedia

 

 

実はこの「鶏肉みたいな味」という表現、Wikipediaに独立項目がある。英語圏でもこの言い回しは多用されているらしい。

主にどんなものが「鶏肉みたいな味」と表現されているかといえば……。

 

・アリゲーター属

・ウシガエル
・カミツキガメ
・イグアナ
・ヘビ
・ハト
・ウズラ
・カンガルー
・ウサギ
・カエル
・シロアリ

 

などなど。(Wikipediaより引用)

しかしこれ、本当だろうか?

 

なんとなく鶏肉にたとえてるだけで、実際はぜんぜん違う味なんじゃないか。

食べ比べて検証してみることにした。

 

 

 

 

(これ以降、「肉」の画像がたくさん出てきますのでご注意ください)

 

 

 

 

 

 

「鶏肉みたいな味」を食べ比べる

 

変な肉も通販で買える。

 

 

 

今回はAmazonで購入した「カエル」「ワニ」「カンガルー」「ウズラ」の肉が、どれくらい鶏肉に近いのか? を食べて検証してみたい。

 

 

調理法はシンプルに「茹でて塩をかける」のみとする。

 

 

カエルの肉

 

 

 

まずはベトナム産カエルの肉。

ベトナムではカエルはまあまあ食べられている食材らしい。

 

肉の「脚感」におののいてしまうが、勇気を出して調理する。

 

 

 

茹でる。

 

脚が健康的なピンク色に染まっていく。お風呂でくつろいでいるっぽい感じ。

アクはほとんど出ない。肉汁も血もほとんどないからだろうか。

 

 

 

できた。

 

「カエル……」という思いさえ払拭することができれば、けっこう美味しそうなプリプリ感だ(私は払拭できなかった)。

 

 

それでは実食!

 

試食は恐山・加藤・ARuFaが行う。

 

 

 

モグモグ……

 

 

 

【感想】

 

「見た目通りのプリプリ感」

「たしかに鶏っぽいっていうのはわかる」

「どっちかというと魚っぽくない? 弾力のある白身魚」

「小骨が多い」

「もっと生臭いかと思ってたけどそうでもない。でも独特の後味はあるね」

「後味がイヤだ。強いて言うなら茹でピーナツみたいな」

「『池』みたいな後味。カエルって思ってるせいかもしれないけど」

「でも子どもの頃からカエルばっか食って育ってたら、鶏肉食べて『変な後味!』って思ってたと思う。慣れの問題?」

「唐揚げにしたらたぶん美味い」

 

 

判定は…

 

 

鶏肉度…3/5

 

という結果に。

鶏肉と固い白身魚の間くらいの触感だった。

 

 

 

ワニの肉

 

 

次はワニ肉。

これを食べるぞ、と意識したときの生理的拒否感がなかなか強いヴィジュアルだ。

 

 

 

茹でる。

みるみるうちに美味しそうな色に変わっていく。あれ、これチキンじゃないか? きみチキンさんですよね? というムードが漂う。

しかしウロコと爪を見て現実に戻る。こいつはワニだ。よくも騙したな。

 

 

 

すごい違和感だ。

左半分は完全にチキンである。そこに乱暴にコラージュされたように爬虫類の手がくっついている。

 

 

 

触ると昔飼っていたイグアナと同じ触感だった。それでいてホカホカに温かい。

キュッと握り返してきそうな生々しさがあり、思わずおののいた。

 

 

 

実食。

豪快にかじりつく。

 

【感想】

 

「あっ、鶏肉だ!」

「鶏肉!」

「完全なる鶏肉」

「どうせくっせぇくっせぇ肉なんだろうなと思ったら後味に臭みが全くない」

「その辺の安い鶏肉より美味しいかもしれない。ジューシー」

「『持つ所』がついててお得」

「持つ所のウロコ感もグリップが効いてむしろ良い」

 

 

判定は…

 

 

鶏肉度 5/5

 

完全なる鶏肉だった。すごいぞワニ。

 

 

カンガルーの肉

 

 

次はカンガルー。

カンガルーを食べるという発想がそもそもなかったが、オーストラリアでは野生のカンガルーが食用されているらしい。カンガルー肉は別名「オーストラルス」と言うそうだ(豚で言うポークみたいな言い方)。

それがAmazonで買える時代である。

 

 

 

 

カンガルー肉の断面。

身の詰まった赤身なのがよくわかる。見た感じ、まったく鶏肉には見えない。

どっちかというと牛肉だ。本来はサーロインステーキで食べるらしい。

 

 

 

 

煮ていく。

すごい量のアクが出た。血が多く含まれているからだろうか。

 

 

 

 

熱が通ったら細かくカットして完成。

洒落た割烹で出るやつっぽい。カンガルーなのに。

 

 

 

 

実食。

はたしてカンガルーは鶏肉みたいな味なのか?

 

 

【感想】

 

「ぜんぜん鶏肉じゃない!」

「うん、鶏肉ではない。むしろ牛モツに近い」

「脂肪分が少なくて繊維質だから、ササミとかに似てなくはない」

「後味の臭みもモツ煮とかそういうのに近いね」

「肉がぎっしりしてて固い。糖質制限ダイエットに向いてる」

「犬が好きそう」

「ローストしてガーリックソースで食べたら美味しいと思う」

 

 

 

判定は…

 

 

鶏肉度 1/5

 

鶏肉とはいいがたい味だった。

むしろ牛肉のほうが近いという声が多数。

 

 

 

ウズラの肉

 

 

最後はウズラの肉。

卵はポピュラーだが、ウズラそのものはあまり食べる機会がない。

 

 

 

 

今回唯一の鳥類ということで、煮立つ様子にも余裕の鶏肉っぽさがある。

 

 

 

 

と思ったらできあがりは何か黄色っぽくなってしまった。

味の方はどうだろうか。

 

 

 

 

もぐ…むしゃ……。

 

 

【感想】

 

「鳥類だけあって、やっぱ鶏肉」

「でもニワトリではないなっていうのはわかる」

「脂身が少なくて身がしまってる」

「う……後味が……」

「臭い……ケモノだこれ」

「かわいい女の子がはなくそほじってるの見たときみたいな気分」

「肉質とか鮮度の問題もあるんだろうけど、ただ茹でただけだと臭みが舌に残る」

「辛めの味付けだったら気にならないと思う」

 

 

 

判定は……

 

 

鶏肉度 4/5

 

 

肉の触感、味、ともに鶏肉にかなり近い。鶏よりはタンパクでさっぱりとしている。

ただ後味に「俺は食われるために生きてるんとちゃうぞ」と言わんばかりの臭みが残った。

 

 

最も「鶏肉みたいな味」だった肉は?

 

というわけで

・カエル

・ワニ

・カンガルー

・ウズラ

 

の4つの肉だと……

 

 

ワニ肉が最も「鶏肉みたいな味」だということが判明した。

 

もちろん肉の味は鮮度や品質、調理法で大きく変わるので一概には言えないが、ワニ肉に関してはかなりの精度で「鶏」であった。脂身のついている位置なども含めて、ケンタッキーで食べるアレとそっくりなのだ。先祖が同じだけある。

お近くのスーパーで鶏肉が品切れだった時は、ワニ肉で代用してみるのはいかがだろうか。

 

 

 

 

このあと本物の鶏肉を茹でて食べてみたのだが「なんという食べやすさ」「違和感が一切ない」「食べ物として完成されすぎている」など改めて絶賛された。

ありがとうニワトリ。

 

 

使った肉で「特製親子丼」を作ろう

 

 

 

肉が大量に余ったので、鶏肉とカエルとワニとカンガルーとウズラを全部混ぜて親子丼を作ることにした。

 

 

 

 

卵をかけて熱する。いい匂いがしてきた。

 

 

 

 

「俺たちなんか似てるよな…丼」の完成だ。

種族にはまったく関係がないが「気が合う」という緩い繋がりで構成された社会人バンドのような丼である。

 

 

 

 

いただきまーす。

 

 

 

 

 

 

野生。

 

 

なんだこの味は。

本来なら別の調理法をするべき肉を一緒くたにしたため、噛むたびに違う触感、味、臭みが襲い掛かってくる。

どんぶりを食べているだけなのに、森の茂みで目を光らせる野生動物に怯えているかのような緊張感がある。「この肉を噛んだらどんな後味が残るんだ?」というのが予測できなくて怖い。

 

端的に言って、食べるのがツラい。

 

 

 

 

 

ARuFaに食べさせてみたところ「ワシの胃をサファリパークにする気かい!」と叫んで部屋を飛び出してしまった。

 

 

やっぱり「鶏肉みたいな味」などと一括りにせず、食材の味はそれぞれ別に引き出すべきかもしれない。