突然ですが、あなたは牛丼チェーンの吉野家が実施している
「つながる食堂」
というプロジェクトをご存知でしょうか?
吉野家の「つながる食堂」
つながる食堂 |吉野家公式サイト
https://www.yoshinoya.com/lp/tsunagaru-shokudo/
遠隔地の店舗間の客席をモニターを通じて映像でつなぎ、遠隔地の店舗にいながら「目線を合わせて」一緒に会話と食事を楽しめます。
2018年の11月に始まったこちらのプロジェクト。2019年1月現在は、東京の恵比寿駅前店と大阪の江坂駅東店の2店間のみで利用可能。料金は食事代別で1時間1000円(合計2000円)から、とのこと……。
「離れた店舗のお客さんとビデオ通話しながら食事や会議ができる」という、吉野家が打ち出した画期的なコンセプト、それが「つながる食堂」なのです。
頭にものすごく大きな「なぜ?」の疑問符が浮かびますが、誰でも予約すれば体験できるようです。さっそく利用してみることにしました。
大阪在住の知り合いとバーチャル相席牛丼を食べよう
関西に住んでいる知人のライター「野田せいぞ」に声をかけてみたところ「行きます」との返事。さっそく予約しました。
年に1回くらいしか会えないので、この機会に対面しながら食事して距離を縮めたいと思います。ちなみに実家暮らしの野田せいぞは、食事中は一切家族と喋らないそうです。
東京で唯一バーチャル会食が可能なのがここ、恵比寿駅からほど近い「吉野家 恵比寿駅前店」。
まるでカフェのようにキレイな内装が特徴で、ここでしか食べられない限定メニューなども存在します。
なんと吉野家なのにコーヒーのドリンクバーも完備。椅子や内装もだいぶゆったりとした作りになっていて、パッと食べてサッと出る牛丼店のイメージとはだいぶ違いますね。
恐る恐る「あの……『つながる食堂』を予約したのですが…」と店員さんに伝えたところ、「……? あっ! かしこまりました、少々お待ちください!」と、「それ頼む人いるんだ」的な雰囲気を残しつつ通信の準備を始めてくれました。
(「遠隔で同時に牛丼を食べる」という予定にソワソワしている2人)
「どうぞ」と案内された先には、一見すると喫煙室のように仕切られた部屋。しかしドアには「つながる食堂」の文字が。
中はこんな感じ。ガラス張りの壁はブラインドが下ろされていて匿名性は確保されています。最大3名まで同時に食事をとることができるとのこと。
いつもガヤガヤしている吉野家にこんな静かで落ち着いた空間が存在していたとは……。
親切な店員さんが設備のアナウンスをしながら、通信の準備を進めていくと……
パッ
あ!!!
野田せいぞ!!!
モニターが点いた瞬間に向こうもこちらの存在に気づいたため、監視カメラの存在がバレた瞬間みたいでちょっと怖かったです。
野田せいぞと話す前に、ともかく注文をしたいところ。
店員さんに「注文はカウンターですればいいんですか?」と訊いてみました。
すると店員さんは、おもむろに小さな箱のようなものを取り出しました。
「こちらの『キューブ』を使ってご注文ください」
キューブ!?
急なハイテクノロジーの出現に驚きを隠せません。未来かよ。
「箱の各面にコマンドが設定されていまして、箱を倒して上になった面のコマンドが送信され、店員のリストバンドが震えるようになっております」
追加注文や会計といった具体的な指示を予め伝えられるらしい。
かっこいい。未来すぎる。今の吉野家の最先端ってこんなふうになっていたのか……。
大阪の野田せいぞのほうにはひと足早く温玉牛丼のセットが到着。
知能が高すぎて手厚い保護を受けている囚人を監視してるみたいで面白いな……。
こちらも注文が届いたので挨拶。
「では牛丼を頂きましょう。寒いですね」
「頂きましょう。大阪は、雨です」
なんだこの会話は。
ちなみにWebカメラはどこかと思ったら、なんと画面の向こう側にあるとのこと。
画面のように見える部分は実は透明で、下にあるモニタを反射しているだけ。ちょうど視線の先にカメラがあるため「目を合わせて食事をしている」という感じが得られるのです。
ただのビデオ通話ではなく、一緒に食べている感じを出すための工夫がある……!
頼んだメニューは「チーズボロネーゼ丼」。牛丼にたっぷりのチーズとボロネーゼソースがかかっていて、かなり美味しいです。
恵比寿店を含む一部店舗でしか食べられないそうなのですが、ぜひ全国展開してほしい。
撮影同行者のまきのは「黒だれ焦がし豚丼」をチョイス。これも店舗限定ですが美味しかったので是非とも拡大販売してほしいところ。
バーチャル牛丼相席タイム
まずは互いの牛丼を見せあってから食事を始めます。
言ってみれば牛丼のオンライン対戦ですね。
「……………………」
「……………………」
「…おいしいですか?」
「…はい、おいしいです」
「……………………」
「……………………」
なんだ、この状況。
約500キロ離れた土地で、お互いの顔を見ながら黙々と牛丼を頬張る2人。
この感情はおそらく喜怒哀楽のどれでもないです。
向こうから見た私はもっとなんなんだ?
闇のゲームの支配人か?
いちおうフォローしておくと、別に気まずい状況というわけではありません。野田せいぞが極端に無口な性格だからなのです。
つなぐ人選を間違えた気がしながらも完食。モニター越しという感覚は早々に失せて、ふつうに2人で食べている雰囲気になってました。
ついでに限定メニューだというショートケーキも注文。
100円なのにちゃんと美味しい!
「それ、僕のいる方の店舗にはないですね……」
「そうですか、じゃあもっとよく見て」
このように「つながる食堂」なら限定メニューを見せつけて大阪の人に自慢することができます。
なにかわからないが可能性を感じる
「つながる食堂」
なんだかすごい体験でした。ビデオ通話は慣れていますが、それを吉野家でやると格別の味わいがあります。
店員さん曰く「今回で『つながる食堂』を利用された一般のお客様は3組目」とのこと。一店舗ずつのみの対応ということもあり全く見つかってないこのサービスですが、普及したら面白いことになりそうな気がします。
ほぼ喋らなかった野田せいぞも満足した様子。よかった~。