SNSに充満する「しあわせ病」
監視ママ:
でも、本当にこれはウチの息子に限ったことじゃなくて、息子の友達や彼女もみんなそんな感じなんです。なんでもかんでもTwitterに書いているんです。
セブ山:
本当ですか?
監視ママ:
息子はFカップの彼女と付き合っているんですが
セブ山:
え、Fカップ! 贅沢な! 高校生の時からそんな贅沢をしていたら、ロクな大人になりませんよ! 高校生のうちは、貧乳のブスと付き合いなさい!
監視ママ:
セブ山さんの教育方針はさておき、その彼女が私に媚びてくるんです。『〇〇(息子の名前)ママ、今日もカワイイ~』って。
セブ山:
媚び方が荒いなとは思いますが、いい子じゃないですか。
監視ママ:
でも、Twitterには私の悪口を書いてるんです。
セブ山:
え!? それもすごい話ですが、そもそも息子の彼女のアカウントも監視しているんですか!?
監視ママ:
はい、一応。息子を信用していないわけではないのですが、相手は若い女の子なのでもし万が一、何を過ちを犯してしまうかもしれないので、そういう時にいち早く気付けるように。
セブ山:
なるほど。そういう意図で。 いや、しかし、彼氏の母親の悪口をTwitterに書くってとんでもない彼女ですね……ちなみに、その彼女はどんな悪口を書いているんですか?
監視ママ:
どうやら息子は私が乗っている車が欲しいらしくて、息子は自分が免許を取ったら、それをもらう魂胆らしいんです。それを彼女に話したら、すごく喜んで、まわりの友達みんなに自慢したみたいなんですよ。「私の彼氏、今度、親に車もらうんだ~ドライブデート楽しみ~」って。
セブ山:
これはまた、なかなか…
監視ママ:
でも、私は、男は自分で稼いで買った車に乗るべきだと思っているんです。だから、絶対あげないよって言っているんですけど、でも彼女にしてみれば「もう友達に自慢しちゃったのに」って感じなので、『クソババア、ケチケチしてないで早くよこせや』『若く見えますねって褒めたら喜んでたからこの作戦で攻める』とかツイートしてますね。
セブ山:
とんでもねえ女だな…。そんな女と別れろって言わないんですか?
監視ママ:
それをしちゃうと「見守る」だけじゃなくなってしまうじゃないですか。息子の行動を制限して、自分の思い通りに動かしたいわけじゃないんです。
セブ山:
ああ、そっか…
監視ママ:
だから息子がどんなクソ女と付き合おうが、そこは何も言いません。
セブ山:
あ、クソ女だとは思ってるんですね…
監視ママ:
でも、息子のTwitterや、カップル共同アカウントを見ていると、それ(車をくれない親の悪口を言うこと)も仕方ないとも思うんです。
セブ山:
どうしてですか?
監視ママ:
なんていうか、今の中高生ってみんな「しあわせ病」なんだなってすごく感じるんです。
セブ山:
「しあわせ病」ですか?
監視ママ:
「僕たち幸せですリア充です」とアピールしていないと死んでしまう病気です。まあ、私が勝手にそう呼んでいるだけなんですが。でも、Twitterって彼らにとってはそういうツールなんだろうなって思います。だから、カップル共同アカウントは見ていてツラくなります。
セブ山:
ツラくなる? どうしてですか?
監視ママ:
ふたりで送り合った手紙の内容を「まぢ愛されてる」「まぢ幸せ」というコメントと一緒に公開しているんです。
セブ山:
痛いなぁとは思いますけど、微笑ましいじゃないですか。
監視ママ:
でも、本当に幸せだったらそんなことしないじゃないですか。まわりから「あのカップルは幸せそう」「あの2人、羨ましい~」って思われたいだけなんです。誰のための幸せなんでしょうね。
セブ山:
幸せだって思われないと幸せじゃない、ってことですか。なるほどなぁ…
監視ママ:
インターネットが生まれた時から身近にある今の若い世代の子たちって、インターネットも「リアル」の一部だからこそ、ネット上でも誰かに認められないと生きていけないんでしょうね。
セブ山:
なるほど。
監視ママ:
でも、息子の友達のTwitterも見たりしますが、みんな、似たり寄ったりなツイートをしています。たぶん、ちょうどそういう時期なんだとも思います。
セブ山:
今まさに飛び立とうとしているところなんですね。見守りましょう。
監視ママ:
あ、でも、息子のTwitterを見ていて、どうしても許せないことがあるんです。監視していることがバレてもいいから、それは注意しようかと思っているんです。
セブ山:
え、なんですか?
監視ママ:
キメ顔が全部同じなんです。
セブ山:
ん? どういうことですか?
監視ママ:
カップル共同のアカウントで、プリクラとか写メをアップしているんですが、まあ、それは昔、プリクラが流行った時に、プリクラ帳を作って友達同士で見せ合っていた感覚だと思うんでいいんですが、そこに写っている息子のキメ顔が全部同じ表情なんです。また、そのキメ顔がキモイんですわ。
セブ山:
いや、自分の息子に対してキモイって…
監視ママ:
私だってショックでしたよ。愛する息子がキモイなんて…
セブ山:
ちなみに、どんなキメ顔なんですか?
監視ママ:
ルーキーズみたいな顔なんです。
セブ山:
ルーキーズ?
監視ママ:
あの、ほら、野球漫画の。
セブ山:
いや、それはわかるんですが、どういう顔なのかいまいちピンとこなくて…
監視ママ:
こういう顔です。
セブ山:
あははは! わかる! たしかにルーキーズだ! この顔、ルーキーズの顔だわ!
監視ママ:
「ルーキーズの顔ばっかりすんなよ!もっとキメ顔のレパートリー増やせ!」って言ってやりたいんですが、それを言っちゃうとバレてしまうので毎回「うわー、こいつ、またやってるよキモイ~…」って思ってます。
セブ山:
母が息子を想う愛も、ルーキーズのキメ顔の前では無力か…
セブ山による「ルーキーズのキメ顔」の再現。
口を尖がらせてヤンチャさをアピール。
息子のTwitterを監視することは正義か悪か?
セブ山:
さて、ここまで息子のTwitterを監視しているというお話を聞いてきましたが、息子の立場になって考えると「めちゃくちゃ嫌」だと思うんですが、それについてはどうお考えですか? ある意味、「息子のプライバシーを剥奪している」とも読み取れるわけじゃないですか。
監視ママ:
じつは私自身も、最初は「これってどうなんだろうか?よくないことなんじゃないだろうか?」って悩んでネットでいろんな意見を漁ったりしたんです。
セブ山:
うんうん、ネットの総意はどうでしたか?
監視ママ:
いろんな意見があったのですが、息子のTwitterを監視しているのはキモイっていう意見はやっぱり多かったですね。
セブ山:
うーん、そうなるのか。
監視ママ:
「まるで息子の部屋に勝手に入ってエロ本を探しているみたいだ」って意見は心に刺さりました。
セブ山:
たしかに、こっちは「息子を守るため」という大義名分がありますが、息子にしてみればそんなの関係なく「ただ、プライベートな部分を暴かれただけ」だと感じるかもしれませんね。
監視ママ:
それで私もすごく悩んでしまいまして、一度、息子の学校の先生に相談したことがあるんです。「実は息子のTwitterを監視しているんですが、これってどうなんでしょうか? いけないことでしょうか?」って。
セブ山:
ほうほう。先生の意見、気になりますね。
監視ママ:
そしたら、先生に「お母さん、学校の教師たちは、ほぼ全校生徒のTwitterを特定済みです。そのまま静かに監視し続けてください」って言われました。
セブ山:
えぇ!? …ああ、でも、まあ、そっかぁ、そりゃそうだよなぁ。
監視ママ:
「もちろん、面白半分で監視しているわけじゃなくて、私たち大人には見守る義務があるんです」って言われて、「あ、いいんだ」って気持ちが解放されました。
セブ山:
なるほどねぇ。ちょっとした失敗で炎上してしまって、ネットの悪意に晒されてしまわないように大人が見守る「義務」はたしかにそこにあるかもしれませんね。
監視ママ:
その先生は「タバコを吸っているくらいは大目に見ている」とも言っていました。べつに未成年の喫煙を認めているわけじゃなくて、「未成年者の喫煙」から派生して、そのまま悪の道に引きづり込まれないように見張っているんだ、と。もしも、喫煙以上の悪いことに進んでしまった、進もうとしていた時に、はじめて呼び出して注意するそうです。
セブ山:
21世紀の金八先生は、Twitterまで見張らないといけないのか…いや、でも、考え方によっては、しっかり見守れるようにはなっているので、親の立場から考えると、世界は良くなっているのかもしれませんね。とても勉強になりました。本日はありがとうございました。
監視ママ:
こちらこそ、ありがとうございました。私と同じように「子どものSNSの使い方」で悩まれている方々のお役に少しでも立てたのならよかったです。
まとめ
というわけで、いかがだったでしょうか?
母親は君たちが思っている以上に、君たちのことを見ているということがわかりました。
母親だけじゃなくて、学校の先生たちも君たちのTwitterを監視している、ということも発覚しました。
恐ろしいですね。
でも、忘れないでください。
母親が君たちのことを監視しているのは、愛しているからだということを。
でも、恥ずかしいですよね。
親にあれこれ見られているのは。
だからこそ、インターネットという大海原に向かって何かを発信する前には「母親に見られても恥ずかしくないか?」と自問自答してみましょう。
それこそが、君たちがネット上の悪意から身を守るための方法です。
まあ、ネット上で「母親に見られたら恥ずかしい記事」ばかり書いている僕に言われたくないと思いますが…
俺はもう手遅れだから…せめて君たちだけでも逃げてくれ…たのむ……
おしまい
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さて、今回の記事はいかがだったでしょうか?
「親バレの恐怖」を通して、インターネットとどう向かい合っていくかを考えるきっかけになれば嬉しいです。
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