ビクターが1976年にVHSデッキ第一号を発売してから40年。
レンタルビデオ店に行ってもDVD・Blu-rayが店内を埋めており、重くて場所をとるVHSを見かけることはなくなりました。
ていうか「そもそもVHSって何?」って思う若者もいるんじゃないでしょうか。
高画質じゃないし音質も悪い。しかも磁気テープだから保存期間もそれほど長くない。
DVDやBlu-rayが存在する今、VHSが必要な理由なんて一つもないのかもしれません。
しかし!だからといってVHSを過去の遺産と思ってしまうのはまだ早い!
VHSはソフトの全盛期がバブルと重なっていた事から、絶対にDVD化されないようなZ級映画や販売してたのが奇跡というような作品も大量にリリースされていました。それらの文化的な価値は決して見過ごすことはできません。
そこで今回は、僕の趣味であるVHS収集の楽しさをみなさんに教えたいと思います。
未DVD化の作品を探せ!
VHS集めの中で一番楽しいのが未DVD化作品を探し当てることです。
最近はちょっとマニアックな作品でもDVD化されることが多くなってきました。
『食人族』がBlu-ray化される時代ですから何ら不思議ではありません。
そんな中、おそらく一生DVD化されることなくVHSとして磁気テープの劣化を待つだけの後世に語り継がれない作品を探して救出。再生することによって弔ってあげましょう。
『バトルトラック2053』 1991年 アメリカ
核汚染された地球でトラックに乗った8人の訳ありな人達が大都市を目指すという誰も興奮しないマッドマックスみたいな映画。
西部劇の神といわれるジョン・フォード監督の名作西部劇『駅馬車』の設定を丸々マッドマックスに置き換えたのはいいんですが、出てくる人が全員パッとしないキャラなのでトラックでダラダラ旅行してる人達を見てるだけという苦行に耐えなければいけません。
あとバトルトラックなのにトラックでバトルするのは最後の10分だけです。
主人公の賞金稼ぎハリー。元警官なのに
だいぶヤバい。
『サイボーグ刑事』 1989年 アメリカ
タランティーノ監督の『キル・ビル』シリーズでビル役を演じていたデビッド・キャラダイン主演のアクション映画。ロボコップの2年後に公開されているので未来ポリスものブームに乗っかって作ったのかもしれません。
あと、パッケージを見て右腕を機械化しているのかと思ったら手袋(バイオニックガン)みたいなやつを着けるだけでガッカリ。内容に関しては…特にありません…。
パッケージの裏に「なべちゃんのスカッとアクション」って書いてあるけど、絶対に渡辺正行この映画観てないと思う。
『毒ガス学園スカンクス』1979年 アメリカ
学園ドタバタコメディーの名作『アニマルハウス』とストーリーもパッケージもほぼ一緒!
でもこっちは「超過激、オナラギャグの連発!」というキャッチコピーに嘘偽りなくとにかく汚いキモいキツいの3K映画です。
尻!!!!!!!
ケツ!!!!!
シリ!!!!!!
『アップ・ザ・クリーク』 1984年 アメリカ
日本では『史上最悪のボートレース ウハウハザブーン』として午後のロードショーでお馴染みの映画。
2013年に邦題でDVD化していますが、これは2009年くらいに手に入れた物で見つけた時はめちゃくちゃ嬉しかったんです…
でも…
家に帰ってパッケージを開けたら違う作品が入ってたんですよね。
スキゾイドっていうホラーサスペンス映画でGoogle検索しても情報がほぼ出てこないのでこっちのほうが本当のお宝かもしれません。史上最悪のクソ映画だったけど。
VHSはパッケージがカッコイイ!
DVD化されている有名な作品でもVHS版の方がパッケージがカッコイイ作品も多くあるので、あえてVHS版も買って両方並べるというのもいいかもしれません。
古本やレコードと違ってVHSを集めている人は極少数なので有名作品ならすぐに見つけることができます。
VHSなら悪趣味系作品がたくさんある!
モンド映画や90年代の悪趣味(死体・殺人鬼etc…)ブームの時に出た本物なのかフェイクなのかわからないような作品がVHSならたくさん存在します。僕が子供の頃はレンタルビデオ店に行くとモンド映画コーナーがあってドキドキしながらパッケージの裏を見ていた記憶があります。
最近はLiveLeakの様なサイトもあり、こういった作品が作られる事は少なくなってきたのでとても貴重ですね。
VHSはどこで探せばいいの?
存在が消滅しかけているVHSは探すのが年々難しくなってきています。
10年程前はレンタルビデオ店のワゴンセールが頻繁に行われていたり、レンタル落ち中古ビデオ専門店が様々なところにあったのですがワゴンセールもDVDに入れ替わり、中古ビデオ専門店もほとんどが閉店・エロDVD屋へ転換となってしまいました。
そこで、VHSを見つけるための方法を紹介します。
・中古ビデオショップ
古ぼけた看板で『ビデオ』と書いてある店があったらとりあえず入りましょう。お宝が眠っているかもしれません。しかし外にAVメーカーののぼりがあったらもうエロDVD屋になっている可能性が高いです。
・BOOKOFF・HARD OFF(リサイクルショップ)
BOOKOFFは全店でないですがVHSコーナーがまだ残っている店舗がありあます。HARD OFFはジャンクコーナーにあります。ちなみにHARD OFFならビデオデッキが1000円くらいで買えるのでビデオデッキを持ってない人は是非行ってみてください。
・花マル
御茶ノ水と高円寺にある中古ビデオ屋でVHSが50円から買えます。閉店した池袋店によく通ってました。レアなVHSもあるけど価格は高い。
新宿のホラー・カルト映画専門店。入り口のとこに多少VHSがあります。
・LINK
見なくなったVHSと店のVHSを交換できるトレードシステムがある。とにかく安い。通ってた神保町店は閉店してしまいました。
・Amazon・ヤフオク
見つけるのは楽ですが、価値を分かってる人が出品している場合が多くVHSなのに数万円だったり…。やっぱり自分の足で探そう!
ビデオ安売王のトンデモビデオ
VHSの歴史の中で忘れてはいけないのがビデオ安売王の存在です。
ビデオ安売王はバブルが終わりレンタルビデオ店も数多く閉店しだした時期に突如として現れたチェーン店です。自社制作による映像作品を自社店舗限定でしかも安価で売るというスタイルは映像メディアの流通に新たな風を巻き起こしました。
VHSの定価がだいたい15000円くらいだった時代にビデオ安売王は980円という低価格でオリジナルビデオを販売していたのです。ほとんどはアダルトビデオでしたが、一般作品もありました。
しかも映像制作にはテリー伊藤と高橋雅也(ソフト・オン・デマンドの創業者である高橋がなり)が関わっていたこともありバラエティ豊かでマニアックな作品が数多くリリースされていました。
ビデオ安売王はいろいろな出来事(詳しくは『絶滅危惧ビデオ大全』という本に載っています)により本部が倒産してしまいましたが個人経営でまだ店舗が残っているところもあり、オリジナルビデオを入手する事は可能です。
その一部を紹介します。
『嫌いなアイツを呪い殺せ!! 誰でもできる呪い術』
タイトルですでに強烈なのですが、本編前に入っている新作紹介コーナーが本編以上に衝撃的な映像ばかりでした。
最強不良チーム!
渋谷センター街指名手配
“こいつらに逢ったら気をつけろ”
人殺し拳銃
性能ベスト10
衝撃の告白
佐川君の一週間
私がパリで人肉を食べた理由!
なぜか佐川一政が走ってる映像。
かなり若い頃の爆笑問題がレポーターとして出演してました。
新作紹介だけですでにお腹いっぱいな感じになりましたがやっと本編へ。
呪い術を淡々と教えてくれるのかと思いきやドラマパートが入っていました。
イジメに合っている小学生のヨウジ君のドラマです。
「え?いきなり小学生なの!?小学生が誰かを呪い殺すの!?」
ドラマパートの後はマジっぽい呪い術を教えてくれるパートがあり、ヨウジ君は呪いの儀式をして覚醒。いじめっ子達を呪いの力によって自由に操ることが可能になりました。
操るといってもヨウジ君が「転べ」と言うといじめっ子が転ぶという子供らしい呪いで安心しました。
タイトルに呪い殺せとか書いてあったけどさすがに小学生は殺さないよねと思っていたら
突然ヨウジ君は「走れ」と言っていじめっ子達を道路に走らせます。
そしてそこに車が・・・。
死。
こんな感じのドラマと呪い術の方法が4つ入っていました。
『日本人と恋したいフィリピーナ大集合! 全員完全住所付き』
フィリピン出身の女優ルビー・モレノがナビゲーターを勤め、フィリピンの紹介をしながらフィリピーナが日本人に向けてメッセージが淡々と流れる謎のビデオ。
何よりすごいのは出演してるフィリピーナの住所が出て実際に手紙を送れるというデータ放送もびっくりのインタラクティブさ。
日本の男性のどこが好き?という質問に「目」「歯」「お金持ってるところ」と自由気ままに答えるフィリピーナたち。
63才の女の子から
13才の女の子まで!!
(絶対にこのビデオの企画を説明してないと思う)
ちゃんと住所付きでお届け!!!
青少年保護育成条例なんて気にしないぜ!!
ルビー・モレノによるフィリピン語でのラブレター書き方講座(VHS画質なので細かい字がまったく見えない)もあるから安心!
これを見て、実際にラブレターを送った人いるんでしょうか…。
『障害者からのメッセージ 君も友達になろうよ!』
フィリピーナと違いこちらは真面目なビデオメッセージ集。本編前に衝撃的な新作紹介も入っておらず編集もきちんとした硬派な作りになっていました。
この他にも『一軒家プロレス』の原型となった『一軒家!家庭内暴力デスマッチ』。
AV監督の清水大敬がニューヨークのスラム街で黒人に「苦ーい!日本のお茶はニガーイ!」と叫んで黒人にボコボコにされたり少年ジャンプが日本一早く買える店を探したりとテレビじゃ絶対にできない企画をやる『地下ビデオ 情報独走マガジン』というビデオもありました。
とにかくテリー伊藤の企画力すごい…。
最後に
150本以上のVHSを集めて思ったことはVHSには集めたくなる不思議な魅力があるということです。
たしかにDVD・Blu-rayに比べたら不便な点も多くあります。チャプターなんてなくて一瞬で先まで進めないし、見終わったら簡単に最初まで戻れません。でもそれは人生と同じ。VHSは人の生き方そのものなのかもしれません。
レンタルDVDよりも安く買えるVHSにはたくさんの情熱と夢と笑いが詰まっていて、どこかの店の棚でホコリを被りながら誰かが救出してくれるのを待っているんです。
今こそVHSを集めよう!
ネット動画配信サービスなんてクソ食らえ!!
大切なのはセックスと嘘とビデオテープのビデオテープだけだ!!!
(おしまい)
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