第3章:さらに改造

 おい、本体にも改良の余地があるじゃないか。

 ここ。

 弦の振動を受ける駒から振動を共鳴させるボディまで振動が綺麗に伝わっていないんじゃないか。間に棒があるし。
 そういえば本物のチェロは駒がボディに直接接している構造になっているな。自分で作ると物の構造の理由がわかるなあ!!

 じゃあこれでどうだ。

 U字ボルトを駒にしてボディにボルトで固定することで弦の振動が直接ボディに届くようにした。

 完璧に違いない。たぶん。お願いだからこれでなんとかなってください。

 

鳴れ!! 鳴れ〜!!

 

 こうなったらこの手だけは使いたくなかったが……

 振動を電気信号に変換するマイクみたいなやつ、ピエゾピックアップを用意した。アコースティックギターをアンプに繋ぎたい時なんかに使うやつだ。

 もはや最終手段と言える。人毛弓での演奏で大きな生音を出すのは諦めた。なんとでも言ってください。

(※もし端末の音量を上げていたら普通に戻してください)

 ガハハハハ!! 鳴った!! 鳴ったぞ!! 音楽と雑巾がけの中間みたいな音がするぞ!! 音楽と雑巾がけの中間はみたいな音はほぼ音楽と言っていいだろう。
 カスッカスに掠れてはいるけど演奏はできているな!! 

 まあこれがきっと人毛弓の音の特色ということなのだろう。全然チェロの音ではないな!!

 地獄みたいに掠れた音だ。たしかにチェロの代わりにはならないが、だったら地獄みたいに掠れた音が必要な曲に使えばいいだろうが!!!! 俺なんかおかしいこと言ってますかねえ!!!!

 なんか、ここの後ろで地獄みたいに掠れたサウンドが欲しいのよねみたいな曲で活躍できるに違いない。ないだろそんな曲。

 ないなら作ればいいだろうが!!

 チェロがないからチェロ作ったんだからそれくらいできるでしょうが!!

 まあそう言われたらそうかも。

 …………

 ……

 できました。

 地獄みたいに掠れた音の人毛弓チェロのための曲。

「かすれのテーマ」(※音量は普通でいいです)

 

 

 ……まださ、本体自体が悪いとか、俺の演奏技術のせいで音が鳴ってないとかいう可能性もあるよね。たしかめる必要があるんじゃないのかよ。

終わりに:馬毛の弓で鳴らしてみる

 弓はともかく、チェロ本体はうまくできているのか。たしかめる方法はただ一つ。本物のチェロの弓で演奏することだ。

 経費で買いました。馬毛のチェロ弓。

 チェロ弓としては安価なものだけど普通に立派なチェロ弓で……

おい!! こんなの買うんだったら人毛弓なんか作る必要なかっただろ!!!! 髪切ってまで作る必要なかっただろうがよ!!!!

 

うるせえ〜!!!!

もう作っちゃったもんは仕方がないでしょうが!!

 ああ、本物と比べると俺の弓がガラクタに見える。 

 俺毛(左)馬毛(右) 全然違う。馬毛は圧倒的に太く、コシがある。人間なんかの毛が代わりになるはずがなかったんだ……。

 弾いてみよう。

(音量は普通でいいです)

生音でめちゃめちゃ鳴る。

 特別なマイクなんか使わなくても全然鳴る。ちょっと感動してしまった。だってこんなの、ちゃんとチェロじゃん。チェロの音じゃん。

 弓はともかく、俺、チェロ的な楽器は作れていたんだ。

 今後は普通に馬毛の弓で弾こう。人毛弓は……なんか……いつか……いる時が来たらまた……。

 

 二つ、覚えて帰ってほしい。

 

・頑張れば素人でもチェロ的な楽器は作れる

・馬に人は勝てない