第2章:弓作り

 子供の頃、何かのきっかけでちょっとバイオリンを触らせてもらったことがある。その時の朧げな記憶で図を描くと、たしかこんなだった。

 木製の棒で、糸がいっぱい張ってある構造になっている。「ここは馬の尻尾で作られているんだよ」と教えてもらったことを覚えている。

 あと、なんかこういう張り具合を調節する機構がついていたのも覚えている。多分チェロの弓も似たようなもんだろう。

 棒はあとで考えるとして、馬の尻尾か……馬の尻尾の代用品なんかあるか……?

 まてよ、馬の尻尾?

 ポニー……テール……?

 ……今の俺ならいけるか?

※以下、グロとか性器が出てくるとかではありませんが気分を害される方もいるかもしれません。嫌な予感がする方は他の記事を読みに行くのもいいかもしれません。でも本当は読んでほしい。頑張ったからです。

あああああああ!!!!!!!

あああああ!!!!!

あああああああああああああああ!!!!!!!

…………………………

 俺の髪だ。言うまでもなく本当はハサミで切った。

 あえて手術痕がある皮膚を使って人間の皮膚であることをアピールした人皮装丁本から着想を得て、これが人毛であると言うことを強調するためにあえて脱色している部分を切った。

 髪の左半分がえらいことになった。今後のヘアスタイルについてはあとで考える。今は弓だ。切った髪をなんとかして弓に使えるようにしなければならない。

 とりあえず布に挟んでボンドで固める。まとまって平たければ加工しやすいはずだ。

 ハトメを打つ。

 …………

 …………なんか、加工してる間に失敗してちまちま調整しているうちに短くなっちゃったな。なんか捻れてボソボソしてるし。

 えーん、せっかく大切な髪をガッツリ切ったのにな。

 今度は長さを稼げる部分から切ろう。

 これを

 はい

 こうして

 全部ネジになってる長い棒を曲げたやつにナットで取り付ける。 ハトメ部分をナットで挟んでいる。

 ネジとナットでできているので、止めている部分を前後に微調整することができる。

 つまり本物のチェロ弓のように張り具合を調整できるというわけだ。

 できた。人毛チェロ弓だ。「人毛チェロ弓です」というと怖がらせてしまうかもしれない。名前をつけよう。

 指輪物語に出てくるエルフの髪を張ってある弓から名前をとり、「ガラズリムの弓」と名付けた。まあ「人毛弓」と呼ぶだろうけど。

 弓には松脂を塗る。そうすることで弓と弦との摩擦が高くなり、音が出やすくなる効果がある。なんか、そういう知識はある。松脂は買った。これが今回使われているあらゆる材料の中で一番高い。

 

よし! 鳴れ!!

(※静かなところで耳をすまして聞いてください。適宜音量を上げてもいいでしょう)

 鳴ってはいるけど、音小せえ〜〜〜〜〜〜

 差し詰め蝶の羽音。あるいはあんまり知らない親戚の集まりでの僕たちのようだね。

 さらに悪いことに

 弾くたびに毛がブッチブチ切れてる。ブッチブチ。髪をケチったからだ。金属の弦に擦り付けて使うには一本一本の髪にかかる負担がデカすぎたんだ。もっとたくさんの束じゃないと……

 じゃあ、さっきのこっち使うか……。

 ねじ式だから交換が簡単にできるのは我ながらナイスだ。棒は柔らかい金属だから簡単に曲がるし。

 できた。

 

今度こそ頼む!!

(※これも静かなところで耳をすまして聞いてください)

 まだ小せえ〜〜〜〜 隣の建物の掃き掃除の音かよ。残穢で背後から聞こえてくるやつかい。

 ちょっとマシだけどあんまりさっきと変わらないな……弾くたびに毛がブチブチ切れなくなったのは進歩ではある。

 ボディ内にボイスレコーダーを放り込んで演奏してみたら一応鳴ってはいることはわかる。

(※もしも音量を上げているなら普通に戻してください)

 ガッサガサに掠れているが、一応音楽が聞こえるな。みんなにも1週間天日に干して潤いがゼロになったオーラ・リーが聞こえるだろう。

 なんでこんなことになっているんだ。

 うるさい、ぶっ飛ばすぞ。

 つまりあれか、俺が普段からヘアケアに気を配っているばかりにキューティクルが滑らかになってしまってチェロ弓に適した凹凸がないってことかよ。そんなのどうしようもないじゃん!!

 いろいろ調べていると、毛の素材以外だと弓自体の素材の剛性がまあまあ重要であることがわかった。

 なるほど、弓の素材が柔らかい金属だったので張り具合が頼りなくなってしまっていたのではないか。もっと硬い素材の弓で、毛もピーンと張ればマシになるかもしれない。

 やってやるぞ。

 できた。ステンレスパイプあと軽トラの荷台でタンスとか固定する時のガチャガチャしてひっぱるやつを組み合わせて使った最強の弓だ。

 弓の剛性は最強だし、毛の張り具合も軽トラの荷台でタンスとか固定する時のガチャガチャ引っ張るやつの力で最強まで張り詰めることができる。

 これはもはや弓ではない。棒だ。ここは日本一有名な棒から名前を借りよう。

 

頼む!! 鳴れ!!

 一応気になる人のために音と動画を添えておきます。(※これも音が小さいので静かなところで耳をすまして聞いてください)

 まあでもほんのりメロディが聞こえなくもない、はるか遠くにエルヴィスプレスリーの霊体の気配だけはあるな。

 でも重すぎて4小節弾くだけで嫌になってくるので元に戻した。

 ああ、軽トラの荷台でタンスとか固定する時のガチャガチャ引っ張るやつの力で引っ張ったりしたから毛がボワボワになっている……。

 こんなことしなければ……

 

・まだ頑張る