トランプ、武器にしてますか?
投げてヨシ切りつけてヨシの万能武器、トランプ。修学旅行の夜ばかりはその地位を枕に脅かされ、児童生徒の玩具の地位に甘んじていることでもお馴染みです。
ところで、こんな風潮はないでしょうか。
答えはYES。トランプを武器とするキャラクターは、全員カッコつけがちです。
思い返してみてください。トランプを武器とする愛すべき連中を。どいつもこいつもキザったらしかったり、伊達男だったり、カッコつけだったりしませんか?
でも仕方のないことなんです。トランプってカッコがついちゃうから。カッコがついちゃうもので逆張りするのって一番カッコ悪いから。
常にカッコいいが付きまとう武器としてのトランプ。だからこそ、逆に一つの疑問が思い浮かびました。
ああっ! 画像もガビガビになるほどのダサ力場が発生している!
日本で流通しているトランプの多くは英米式であり、4種のスート(スペード・ハート・ダイヤ・クラブ)と13のランク(A~Kまで)の組み合わせで構成されています。
全52枚(+ジョーカー)もあるなら、武器として使うとカッコがつかないものもある……はず……!
ごきげんよう。ライターの寺悠迅と申します。
ズバリこちらですね? ってな感じで取り出したる『クラブの3』。これはただ単に僕が『なんかダサくない?』とレッテルを貼っているだけのカードです。
今回はダサいだのカッコイイだの感覚的な問題に、調査&検証でアプローチして行きたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
美麗なるマジック本の表紙たち
世の中には様々なトランプマジックの本が存在します。
当然のことながら、本として存在するからにはそれを著述した人、更には装丁をデザインした人が存在するのです。
装丁の中でも『表紙』は手に取ってもらうための重要なファクター。カッコイイなりカワイイなり、可能な限り目を引くデザインにしたいはずです。
では、裏を返せば……?
なるほど、完璧なロジックだ。
本の表紙を調査する
というワケでマジック関連の本を探し、表紙で特に目立っているトランプを調査しました。調べること計52冊。
お察しの通り52はジョーカーを抜いたトランプの総数です。こういう所から洒落込んでいこう。カッコつけるとは、こういうことさ。
詳細をGoogleスプレッドシートにまとめましたが、情報ソースとして置いておくだけなのでスルーで大丈夫です。興味があれば是非ご覧ください。
集計ルール(目安)
表紙に複数枚のトランプがあしらわれている場合、デザイン的に目立つカードを優先的に集計しています。
この本であれば、最も手前にあるので「スペードのA」のみ集計。
一方、これなんかは全部目立つので「ハートの7」「ダイヤのK」「クラブのA」「ダイヤの3」全てを集計しています。
……わからなくなるんですよ。52冊も眺めてれば、何が目立つかなんて。多少のいい加減もご容赦願えませんか。
集計結果
細かくて失礼! ザックリこんな数字なんだな~、と思っていただければOKです!
やはりスペードのA&ハートのAは強い! どちらも15枚と他の三倍以上は使われています。
スートの使用数に絞ったグラフはこちら。
カッコよさからスペードが断トツと予想していましたが、実際にはハートが最も多く使われていました。
確かにハートって華やかですしね。表紙にあると目を引きます。
これなんかハートのエース一点押しです。潔いね。
逆に使用頻度が最も低いのはダイヤ。形がシンプル過ぎて華がないからか……?
よく見ると、どのスートも“2”が使われていません。なにゆえ?
あ、確かに2ってデザインとしてちょっと寂しいな……
1は象徴的、3は頭数が揃ってる感じがするけど、2はちょっと 余 白 が多い。
2で攻撃されたら「えっ!? 何!? 2!!!? 何で!!!?」ってなるかもしれない……
余談
いくつか面白かったデザインを紹介させてください。
クラブのキングから飛び出すマギー司郎師匠です。
確かに師匠が飛び出すならスペードよりクラブだ。キャラクターブランドを大事にしていらっしゃる。
下半分の赤い部分は帯。ということは、実際に表紙に描かれているのはハートのAのみかもしれない……と思って調べたところ
東京堂出版HPより
ハーフ&ハーフでした。
先入観を利用して裏切る、いかにもカードマジックらしい秀逸なデザインですね。痺れるねえ。
華麗なるトランプファイターたち
餅は餅屋、蛇の道は蛇。ならばトランプで戦う者のことならトランプファイター(仮称)です。
漫画から特撮作品まで、あらゆる世界の概ねトランプを武器とする奴らを観測し、実際にどんな図柄を使っているのか調査しました。
メタ的な観点では、被造物である以上、トランプ選びには神(作者)の意志が宿ります。どうせ選ぶならカッコいいを優先=カッコ悪いを劣後するハズ。
なお、こんな感じで明らかに連続しているシーンでは「ハートのA」「スペードの5」「クラブのQ」が一枚ずつ、といった数え方をしています。
数え間違いもあるかもしれません。というか高確率であります。素人の私には彼らの戦いなど目で追うので精一杯なのです。オレでなくても見逃しちゃうね。
先に、各々がいつどこで何のトランプを使用したかメモったリストを公開しておきます。細かいから見なくていいです。
※リストの性質上、作品のネタバレがありますのでくれぐれもご注意ください!
トバルカイン・アルハンブラ
漫画『HELLSING』(平野耕太)に登場。
ナチス残党組織『ミレニアム』所属の吸血鬼。身体から夥しい数のトランプを発生(?)させて戦う。伊達男。
『トランプで戦うキャラクターといえば』で一番初めに思い浮かんだ男です。顔も良ければ名前も良い。
敵幹部としてはいの一番の顔見せで、いわゆる「奴は四天王の中でも最弱…」的なポジションを匂わせるものの、同作最強の主人公(バケモノ)相手に善戦していた気もします。
個人的にはトランプが似合うキャラといえばキザよりこういう伊達男です。ナウシカのクロトワとか。エヴァの加持さんとか。
※最下段の「?」は、
スートは判別可能だが数字が不明瞭なものをカウントしています
流石は自他ともに認める伊達男。カッコつけトランプの代表格であるスペードのAを積極的に使っています。
しかも彼は身体からトランプを自在に生成できる節があるので、恐らくAを意識的に出しています。その辺を揶揄しても本人は「ご名答」ってニヤリとしそう。
9~Kがほとんど使われていませんね。9以上は図柄がゴチャつくから使いたくないとか?
……ある! トバルカイン的にも作者的にも十分な理屈過ぎる。
スートの使用数に絞ったグラフも用意してみました。ダイヤが一番多く使われていますが、スペード・ハートと比べれば誤差の範囲内。
しかし一方、クラブは明らかに使う枚数が少ない。嬉しいですね。伊達男も僕と同じでクラブのことちょっとダサいと思ってたんだ……
黒羽快斗
漫画『まじっく快斗』『名探偵コナン』(青山剛昌)に登場。
江古田高校に通う高校生。世界的マジシャンにして世紀の大怪盗である父を持ち、自身も二代目『怪盗キッド』として活動する。
闇夜に純白のスーツで活動するキザなあんちくしょう。トランプ銃なるガジェットでカードを射出して戦います。
間違いなくカッコいいんですけど、それはそれとして劇場版コナンに出るたびに蘭姉ちゃんにちょっかい出しててコイツ……と思っています。青子ちゃんもムエタイとか習おう。殺意を込めて肘を使おう。
流石に『名探偵コナン』の既刊106巻(2024年10月現在)を洗い直すのは厳しすぎるので、初登場作である『まじっく快斗』(既刊5巻)のみを調査対象としました。
「キザだしスペードのAばっか使ってそう」という予想を裏切らない男。
しかも、トランプを生成できるトバルカインと違い、こっちは人力で一枚一枚用意しているはず。それくらいの手間は惜しまない性格なのも解釈一致。
怪盗キッドはスペードを好み、ダイヤを好まない。工藤と白馬にも教えとこ。
「バーロー、怪盗がダイヤを手放すかよ」って言いそう。クゥ~~~~ッ!!! コイツ~~~~~ッ!!!!!
何気にクラブの使用頻度も低めです。名字が黒羽(くろば)なのに。トレードマークも四葉のクローバーなのに。
魂を裏切って使うスペードの心地はどうだ。男塾の主人公の名前は『剣(つるぎ)』だぞ。羨ましかろう。
男爵ディーノ
漫画『魁!!男塾』(宮下あきら)に登場。
男塾三号生、鎮守直廊三人衆が一人。縁が鋭く刃物になっている特殊なトランプ『ゾリンゲン・カード』を用いる。人呼んで『地獄の魔術師(ヘルズ・マジシャン)』。
濃ゆ~いキャラ揃いの男塾塾生の中でも、ひときわ異彩を放つ男爵ディーノ。
最初は鞭を振るう調教師キャラでしたが、最後の最後に突如キャラ変して魔術師キャラになります。男塾ってそんなやつばっかだな。
でも過程なんてどうでもよくなるくらいカッコいい戦いを魅せてくれるので良いんです。男塾ってそんなやつばっかりだな。
やはりスペードのAの使用回数3が最も多い……と見せかけて、ダイヤのAを5回も使っている!? こ、これは一体……!?
「うーん……あれは恐らく漫画家の手癖……♠」
知っているのかヒソカ!
「トランプの図柄を描くのは結構大変だからね♣ その中ではダイヤは最も単純な形状のスート……♦ 無意識のうちに比率が増えたんじゃないかな♥」
なるほど、全体としても確かにダイヤが多い。クラブは複雑で面倒くさいから描かれないのかもしれません。
ヒソカ・モロウ
漫画『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)に登場。
ピエロ風の恰好をした念能力者。戦闘狂で気まぐれ。トランプのほか『伸縮自在の愛(バンジーガム)』『薄っぺらな嘘(ドッキリ・テクスチャー)』という二つの念能力を使う。
みんな大好きトリックスター、HxHのヒソカです。
週刊少年ジャンプのトランプファイターとしては、ブラックエンジェルズの飛鳥、男塾の男爵ディーノの後輩でもあります。ヒソカ的に先輩方は何点なのか気になりますね!
その存在感に反して実際はあまりトランプを使っていません。まあ、念能力とか基本的な身体能力で十分強いから……
使う図柄もあまりこだわりはなさそうです。強いて言うならJ・Q・K辺りのゴチャつく図柄の使用頻度が低いくらい?
ダイヤが多くクラブが少ない。男爵ディーノと同じじゃん。
やっぱり描くのが面倒なスートは使われない傾向にある。ヒソカも例外ではない!
「漫画においては手を抜くのも技術の一つだしね……♥ カード全てを描きこむなんて描写要領のムダ使い♠」
アッハイ。仰る通りだと思います。
ついでですが、ヒソカといえばセリフの後にスートを付けるのも特徴的なのでこちらも集計しました♣
読み返してみると偏りが生まれないよう満遍なく使ってる印象を受けます♠ こういうとこも偏執的なキャラとして狙って演ってたらどうしよう♦ 怖すぎるかも☠
冨樫義博「HUNTER×HUNTER」第7巻,集英社 p.14より
ただ、ハートだけは感情が乗るのかよく使われています。特にマチがいる場面では九割くらいハートをつけている。怖いね♥
飛鳥
漫画『ブラック・エンジェルズ』(平松伸二)に登場。
外法の連中を外法にて裁く『黒い天使たち(ブラックエンジェルズ)』の一員。元刑事。マジックを利用した攻撃を行う。
元刑事の経歴とマジックで戦うというファイトスタイルが全く結びつきませんが、そうなんだから仕方ないしカッコいいから始末に終えない。
ジャンプバトル漫画のトランプファイターとしてはかなりの古株。何かと濃いブラック・エンジェルズの中でも、義に厚く爽やかに顔と性格が良いナイスガイです。
……男塾→ブラック・エンジェルズの順番で読み直してるので、ちょっと判断力が鈍ってるかもしれません。
完全に生身の人間のはずなのですが、使用カードの量が他の漫画のキャラを圧倒しています。
平松伸二「ブラック・エンジェルズ」第15巻,集英社 p.171より
これは飛鳥がカードを多用するのは勿論のこと、小さなコマでも一枚一枚丁寧にカードの図柄が描き込まれているためでもあります。気迫。狂気。
スペード・ダイヤが同率トップ。ハートが少ないのはハードな世界観に合わないからでしょうか。
もう一度スート+ランクの図柄に戻って比較してみると、スペードはAで数を稼いでいるのに対し、ダイヤは全体的に使用されています。J・Q・Kまで!
僕が最もダサいと思っていたクラブの3も、スペードのA(12回)の次に多く使われています。
うーん……そう言われてみると、めっちゃカッコいい気がしてきたな。
複雑な♣の図形が3つ、ってバランスが良い。少なくとも最ダサではないという確信が持ててきた。大富豪(大貧民)で言うところの革命が起きています。
ツル・ツルリーナ3世
漫画『ボボボーボ・ボーボボ』(澤井啓夫)に登場。
マルハーゲ帝国先代皇帝。たった4日でマルハーゲ帝国を大帝国にのし上げた。肉体破壊の『真紅の手品(レッド・マジック)真拳』、精神破壊の『青藍の手品(ブルー・マジック)真拳』という二つの真拳を使いこなす。
ハジケとボケ殺しが猛威を振るうギャグバトル漫画において、そのどちらにも属さない悪道一辺倒のボスキャラクター。
作中の”真拳”は超能力めいたものなので、トランプも能力により生成したものと思われます。
第二部の『真説ボボボーボ・ボーボボ』にも大ボスとして登場しますが、集計対象は無印のみ。
続編や外伝まで集計範囲にすると、他のタイトル(男塾とか)の数がヤバいから……
流石は皇帝。9とJ・Q・Kを除きバランスよく使っています。
あっ!! クラブが一番使われてる!? そんでスペードの使用率が最低!? そんなことあるの!? 隠れハジケリスト!?
澤井啓夫「ボボボーボ・ボーボボ」第20巻,集英社 p.173より
初登場や再登場シーンでトランプを印象的に使っているのですが、実際はバトルではあまり使わない(マジック全般を使いこなす)キャラでしたね。
おかしいな……6とか5エモンとかJがいるからトランプ漫画の印象があったのかな……? 遊戯さんや田楽メンコでカード漫画の印象も植え付けられてた……?
オズワルド
格闘ゲーム『ザ・キング・オブ・ファイターズシリーズ』(SNKほか)に登場。
ポーカーフェイスの老紳士だが、裏社会では名の通った暗殺者。カード暗殺術『カーネフェル』の使い手。
もはや存在しない属性を探すほうが難しいほど人材に溢れた格ゲーキャラクター界。勿論トランプで戦うヤツもいます。それがKOFのオズワルドです。あとアルカナハートのドロシーとかもね。
一線を退いてるけどまだまだ強さはご健在。コンボ重視の上級者向け老紳士はお嫌いでしょうか。
SNK CORPORATION 『THE KING OF FIGHTERS XIV』(2016)より
初登場の『KOF XI』(2005)の頃はまだグラフィックがドット絵でしたが、『XIV』(2016)では3Dになり、カードの図柄が一枚ずつ確認可能になりました。
スクショのように、攻撃の軌跡にカードがバラ撒かれる技が多いです。カッコいいけど集計がし難い……!
最下段の『EX』は「特定スートをランダムにX枚バラ撒く」みたいな技をカウントしています。
また、全カードを最低でも1枚ずつ使っているのは、52枚+ジョーカーを全て投げつける超必殺技「JOKER」があるためです。
他にも超必殺技「10・J・Q・K・A」はスペードの10・J・Q・K・Aをランダムに10枚展開する、とか……とにかくややこしいぜ。暗殺術カーネフェル。
最多使用スートはダイヤと僅差でスペード。最少はクラブでした。
特定スートをランダムにバラ撒く技でもクラブは明らかにその機会自体が少なく設定されており、確かな神(制作者)の意志を感じました。
やはり……クラブは出し惜しむか……! そのカッコつかなさ故に……!
ジェネラルシャドウ
特撮『仮面ライダーストロンガー』に登場。
秘密結社『ブラックサタン』大幹部、のちにデルザー軍団リーダー格。サーベルとトランプを武器に戦う。トランプ占いも得意。
仮面ライダーシリーズからは、仮面ライダーストロンガー(1975年)から彼を選抜。
不気味な外見とは裏腹に騎士道精神を持ち合わせ、なんかの間違いで味方についてくれないかな……と思ってしまうくらいには魅力的なキャラクターです。
「ライダーでトランプなら仮面ライダー剣(ブレイド)があるだろ!」の声、時空を超えて届いております。
しかし、アレはトランプというよりトランプモチーフのラウズカードですし、そもそも『ラウズカードが元でトランプが生まれた』という設定ですしで採用は見送りました。話数も多くて検証大変だし。
偏った人を呼んじゃったな!
ジェネラルシャドウはスペードのKがトレードマーク。
攻撃の際はもちろん、スペードのKに変身したりそこから現れたりとそのものの化身のような節があります。
デカいスペードのKの姿のまま車を運転してましたけど、あのシーン何?
グラフが意味を成さないねえ!
でも、トランプを武器として使うならコレくらいこだわりを持ってくれてると嬉しいですね。
実写作品においてもハート、クラブ辺りは使用率が低めな点も注目です。やはり4つのスートの中では少し魅力に欠けるか。
????
あとは
俺自身がトランプファイターになる事だ。
トランプを投げる者
この機会にトランプ投げを身につけました。やはり、実際に武器として使ってみることで感じられるものがあります。
ダイヤはシンプルでカッコいい
味気無いデザインではありますが、そのぶん無駄がなく、飛びそう、刺さりそうといったポジティブなイメージが湧いてきます。
A~10の数字もJ・Q・Kの絵柄もとにかくシャープ。スペードが眉目秀麗ならダイヤは質実剛健。
クラブのこの辺の図柄はちょっと嫌
やっぱ他と比べて『♣』って情報量の多い形状でして、それがいっぱい集まってると……なんか……虫の軍団を見たときのような気持ちになります。
湿った石をひっくり返したみたいでヤじゃない?
トランプ投げは繊細なので、この些細なことが結果に響いてくるんです。これマジ。
しかし、クラブにおいても7はラッキーセブンという有利が働くので、カッコよさが大幅にプラスされます。
と、なると消去法でクラブの8~10辺りが最有力候補……なのか……?
もう少し意見がほしいな……
マジシャンの言葉
【SHiN-Ta-Ro(しんたろう)】さん
カードマジックからステージマジックまで、幅広いパフォーマンスを得意とするプロのマジシャン。名古屋を拠点に式場、テーマパーク、出張など様々な舞台で活躍中。
やっぱり、カードのプロのご意見無くして結論は出せません。
Q. “キメ”で積極的に使いたいカードがあれば教えて下さい
A. スペードのエース! トランプの顔だから! 役的にも強いから!
Q. 逆に”キメ”の場面で使いたくないカードを教えて下さい
A. 三つ葉の6。なんか、平凡な何の変哲もないカードだから
プロでもスペードのAが最推し。そしてクラブの6が“平凡で何の変哲もない”という理由でキメに使いたくないというご回答でした。
「なんか、平凡な何の変哲もないカード」……か。
トランプで”魅せる”ことを生業とする方の「なんか」は、僕のような素人とは確実に違う重みがある。決して無視できない、経験の伴った「なんか」だ。
振り返り検証
調査前から予感していた『クラブの不人気』は、データにも如実にあらわれた。
クラブのA~Kまでの使用数。9,10,J,Q,Kが全て使用回数一桁と、際立った不人気ぶりが伺える。
9,10,J,Q,Kの中でも、クラブの10の使用数が最も低い。
トランプ投げを習得した筆者としてもクラブの10は有力候補だったので、これで決まり――
――と言いたいところだが、ここで効いてくるのがプロのマジシャンのご意見である。
マジシャンのSHiN-Ta-Roさん曰く、クラブの6は平凡で何の変哲もないのでキメには使いたくない”とのことだが、創作での使用率は悪くないことがわかる。
マジシャンは平凡に感じる図柄でも、創作者たちにとっては好ましいデザインということ。
ここで注目したいのは、『平凡で何の変哲もないカード』という価値基準自体だ。
クラブのJ,Q,Kは創作での採用率こそ低いが、華やかな絵札であり、各種トランプゲームでも強い。その実、非凡極まる存在である。
クラブの10もまた、図柄の煩雑さから創作内で最も使われない図柄として君臨したが、決して平凡ではない。なにせ、整数カードの最大である。
……ならば。
「デザインとして採用したくない」かつ「平凡」……これらの条件を満たす、トランプを武器としたとき最もダサいカードとは……!
煩雑さからデザインに用いられないという実績。
カードとして平々凡々という事実。
虫が集ってるみたいでキッショイという実感。
今回の調査で得た情報からたどり着いた、たった一つの真実。
クラブの9は、カッコがつかない。
おわりに
昨今におきましては、トランプで戦うキャラクター自体が前時代的でダサいという風潮さえ感じられますが、真にけしからんことです。
使うトランプがスペードのAであろうと、クラブの9であろうと。トランプを武器にする人々(ファイター、マジシャン、ディーラーなど)は華美で、流麗で、気品に溢れているではありませんか。
今回の調査でわかったのは、数ある図柄の中でクラブの9の魅力度が少しばかり低いかもしれない。それだけのこと。
これは否定的なことでもなければ、可能性を閉ざすものではありません。トランプと呼ばれるカード全てに無限の可能性があります。
TRUMPとはそもそも、切り札を意味する英単語なのだから。
今度からトランプを目にするときはクラブの9に注目してみてください。注目を浴びるそれは、たぶん、他のどのカードよりもカッコよく見えるはずです……
それでは