前回はこちら。先に読んでもあとで読んでもいいぞ。

 うーん、孤独だ。生き埋め生活もそろそろ1年か……県民のやつらめ、何もここまでしなくたっていいのにな。

 今は干潮だからいいけど、満潮になると沈むんだよなここ。もうちょっと内陸寄りに埋めてくれればよかったのに。

 今の娯楽はこれしかない。埋まる前に見張りに賄賂を渡しておいてよかった。

 おかげでシャニマスのデイリーミッションだけはやらせてくれる。

 甜花ちゃんだ。かわいいな。甜花ちゃんといえば思い出すな……。

 なんだこいつって思われたかもしれないし、その後退場まで会話もなかったのでちょっと気まずかったんだけど、今となっては良い思い出だな。

 なんか、そういうコミュニケーションの事例が聞きたいな……。
 …………
 ……

「未来、お前はそういう感じになる」

 

 そうなんだ。ありがとう、箱の中から予言をする猫ちゃん。

 未来で生き埋めになっても人とコミュニケーションが取りたいとかではなく「知らん人と知らん人の知らんコミュニケーションの話が聞きたい」とは俺らしい。

 よし、またまた集めようじゃないか。知らん人同士の会話。三たび俺はGoogleフォームで「全然知らない人とその場の流れでなんか会話した思い出募集」を開始した。その後とくに仲よくなったりしていないような、本当にその場限りの会話だ。
 そういうのを並べる記事だ。

 ありがたいことに、すごい量が集まった。送ってくれた皆様ありがとうございました。全部は紹介できないのをご了承くださいね。でも全部ありがたく読んでるぜ。

 

 子供特有の尋常ではないコミュ力が生んだ変な一期一会。

 

Tシャツ

 夫の話です。
 娘の小学校に用があって出向いた際に、学校の廊下を歩いていると目の前に低学年の男の子が立ちはだかりました。

 彼は夫に「俺はそのTシャツすごく良いと思う!!!」と言ってきたそうです。

 夫はその時、ガンダムに登場する大好きなMSケンプファーのTシャツを着ていました。
 お気に入りのTシャツを褒めてもらってうれしかった夫はケンプファーを知ってもらおうと「え〜!ほんと?これはね〜…」と言い顔を上げると男の子はもう遥か遠くに走り去ったあとでした。

 バッティングセンターのようなコミュニケーションを自分も見習いたいと思いました。

しいな

 本当にただその一瞬人の服を褒めるだけのために話しかけるボーイ、いいな。気持ちがいいやつだな。

 

音楽

 学生の頃、近所の公園でギターの練習をしていました。
 バッハのメヌエットを演奏していると小学2年生くらいの男の子が近づいてきて「それ知ってるよ!バッハでしょ」と話しかけてきました。

 男の子とおしゃべりしながら何曲か演奏したあと、男の子が「音楽ってさ、いいものだよね」と言いました。

 いろいろ悩んでいて私は「そうなんだ!うまいとか下手とかじゃなくて、音楽っていいものなんだ」と勝手に得心して感動してしまいました。そのセリフっぽい言い回しが面白くて、いまでもたまに思い出します。

しおむ

 まだボキャブラリーが少ないからこそシンプルでめちゃめちゃ刺さること言ったりするよね。

 

私は柔道できるよ!

 まだ小学生になってまもない頃、デパートにある子供たちが遊ぶ用のスペースみたいなので遊んでいると、ミニーちゃん柄のワンピースを着た女の子が話しかけてきてくれました。

 色々な話で一通り盛り上がった後、話題はどんな習い事をしているのかというものに移り変わったので、私はスポーツクラブに通っているよ!と側転を自慢げに披露しました。

 そしたら彼女が「私は柔道できるよ!」と言い、直後、私の視界が一回転。鈍い音と同時にカラフルなキッズスペースの固いクッションに身を打ち付けられました。多分投げ技?を披露してくれたのだと思います。

 私が何が起こったのか理解できず混乱している最中、彼女のお母さまが迎えに来てその子は帰っていきました。
 なんでかはわからないけど、なんか今もまだ柔道続けていて欲しいなと思っています。

無記名

 側転を披露されたからにはこちらも特技を実演したくなるという気持ちはわかる。せめて一言欲しいけど。

 

口笛

 高校生のころ、親戚の子供を大きめの公園に連れて行き、ベンチに座って遊ぶ様子を眺めていると小学校低学年ぐらいの男の子が話しかけてきた。

「アイツな、口笛吹けないんだよ!大人じゃなくてカッコ悪いよな!」男の子は遠くのベンチの女の子を指差しながらそう言った。大人でも子供でもない僕に同意を求めに来たのだろう。

 僕はその子に「オトナっていうのは、口笛が吹けない子をバカにするんじゃなくて、代わりに口笛を聴かせてあげる人のことを言うんだぜ」
 男の子にそう言うと、ハッとした顔で女の子の方へ駆けていった。

 親戚の子が呼ぶので、僕はベンチから離れた。

 未だに口笛は吹けません。ガキに適当言ったのが成功してよかったです。これが大人だ。大人を舐めるなよ。

yzkrt

 カッコ良すぎてなんかの引用じゃないか調べてしまった。俺も咄嗟に言いたい。

 

ガム

 コンビニでレジに並んでるときに 5才ぐらいの女の子に話しかけられた。

 その子はガムをくちゃくちゃしており
「ママに買ってもろた〜」とニコニコしてた
「よかったなあ、何味?」と訊いたら

 ガムを口から出して指につけてそれを見ながら「ぶどう!!」と教えてくれた。

 ありがとう、見なわからんか?

コンクリ地蔵

 知らん人にガムを自慢する無邪気さの中に、一応確認してみる慎重さも兼ね備えていて良い。

 

 好きなものの話になるとコミュ力10倍くらいになるからな。

 

ゲーセン

 行ったことのないゲーセンに寄ったときのことです。

 某洗濯機のような音ゲーをしようと待機用のベンチに座り、自分の番が回ってきて席を外した瞬間、隣で座っていた大学生ぐらいのお兄さんが何やら私の方を見て立ち上がり、「なんか怒られる、、、?」と思ったら、ベンチの隣に地味においてあったエントリーシート(並んでいる間に名前を書いて、自分の番が来たらチェックつける紙)の書き方をゲームに負けないでかい声で優しく教えてくれました。

 知らん人に話しかけられた驚きで「ア、ハイ」「アザス。」くらいしか言えませんでしたが、めっちゃ丁寧に教えてくれてホントはめっちゃうれしかったことが伝わっててほしいなと思います。

 なんやかんやでそこのゲーセン気に入ったので週2くらいで通うようになり、今でも待機用ベンチにお兄さんがいる気がしてなりません。あとそのお兄さんのカバンにネギがぶっ刺さってたのもたぶん一生忘れません。

杜野凛世が好きな病み上がり

 めちゃめちゃいい話だ。こういう時にでかい声でやさしく教えられるオタクでありたい。

 

バトスピ

 大学時代、友達とラーメン屋でラーメンを待ってる間に遊戯王の話をしていた。

 最近のカードの話をしていたら他のお客さんが「すいません、バトスピ(別のカードゲーム)の話ですか?」と聞いてきた。

「違います」とだけ答えたら向こうはそのままラーメンを食べ始めた。

からまりも

 ちょっと怖い。めちゃめちゃ飢えてたんだろうな、バトスピの話できる相手に。

 

優しい方ですから

 声優さんのCDお渡し会イベントがあった時に、そもそもトークショーだと思って参加してたんですけど、トークショーが終わったあとにお渡し会やりますと言われて、何言おうかめちゃくちゃ焦ってワタワタしてたら、隣の方が「大丈夫ですよ、落ち着いてください。〇〇さんは優しい方ですから」と言われてめちゃくちゃ恥ずかしかったです。

 でも終わった後に、「優しい方だったでしょ?」と言って去っていき、かっこいい…となったのを今でも覚えています。

 こんなの「慌てふためく知らんオタクを気遣う心」と「推しへの信頼」の両方がないとできないぜ。カッコいいオタクだ。

 

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