7.夜の出張ホスト
駅の改札までマキゾウを見送り、翔也とも別れの挨拶をします。
こんな時間まで今日は本当にありがとう。翔也も気をつけて帰ってね。
みさっちゃん。
ん?
俺、みさっちゃんの部屋に行きたい。
えっ!…うん。
今来た道を戻る二人。
その二人と偶然、すれ違うむつお!!!
※イラスト:山口むつお
川を見て時間を潰したそうです。
あれ?さっきもこの部屋に来ましたよね?
そうだね。もう結構な時間、一緒にいるよね。
そうだよ。こんなのおかしいよ!
※二時間分の料金で七時間半経過中。
みさっちゃんってかわいいよね。
(抱きにかかってきたな…。)
ゴリラ性欲嫁の心のシャッターが閉まる。
嘘ばっかり…!
そこまで嘘付いてなくない?俺。こういう仕事やってる時点で、胡散臭いって思われてるのは分かってるけど。
じゃあ、本当のこと教えてくれる?
これが本当の俺だよ。みさっちゃんと一緒にいたいなって思ったから、こうやってプライベートの時間も一緒にいるだけだし。そこに嘘はないよ?
ふぅん。じゃあさ、お客さんとは、やってるの?
やってないよ、お客さんとは。
でも、私が今、したいって言ったらやれるんでしょ?
そりゃ、俺がみさっちゃんに気持ち入っちゃってるからね。
余計な質問をしたせいで、一気に抱きモードで詰め寄られるゴリラ性欲嫁。
夫には抱かれないというのに皮肉なものです…。
ちょちょっ!別にここでやらなくても、その顔ならいくらでも他でやれるでしょ!困ってないでしょ!
困ってる困ってないじゃなくて、みさっちゃんとやりたいなって思ったから。
私は、恋愛感情抜きでそういうことをするのが、とっても好きじゃないよ。好きになってからですよ、そういうことは!
好きになって、ちゃんと付き合ってからする、っていう意見はわかるよ?
うん。
じゃあ、俺が今、みさっちゃんとやりたいっていう、この素直な気持ちはどうすればいいの…?
それは…。
帰ってオナニーをすればいいと思うよ?
ぶははははははは!
今日イチ、ウケました。
やっとユーモアで通じ合えたね!
それ、性欲だから!
そっか!wwwwwwww
そうだよ、私のことなんてぜんぜん興味ないし、なんにも知らないのに!
(ここに気づけない人が、抱かれると本気になってしまうのでは…。)
でも、本当、リピーターになってもらおうとかはないから。
でもね〜、矛盾を言っていい?
いいよ。
そういうことをしちゃったら女性はすごく気持ちが残るから、“また、会いたいな、抱いて欲しいな。”って思うようになるんだよ。そういうやーつ、でしょ?(その方式でめんどくさい客を量産してそうだな、キミは!)
そうなったときは、仕事じゃなくていいよ。
タダで会ってくれるの?タダで最寄り駅まで来て、一発やって帰るの?
うん。てか、みさっちゃんって時々下品だよね…。
わざと下品な言葉を使って、荒ぶる勃起神を鎮めておるのです!
終電の時間が迫ったので、駅まで見送って別れました。
結論:地味な三十路女でも、最後までできる。
取材から一週間後、翔也は出張ホストを辞めました。
私がもし本当に、彼氏に突然家を出ていかれて人間不信になっている女だったら?慰めて欲しくてあの時抱かれていたら?
翔也がサイトから消えて、ますます人を信じられなくなっていたでしょう。
心に隙間のある方、出張ホストのご利用は計画的に。
テキスト:ゴリラ性欲嫁
イラスト:マキゾウ
※ホストには取材だったと明かした上で、掲載許可を得ています。