※この特集は音が鳴ります。イヤホン・ヘッドホンでの視聴をおすすめします。
ライターの彩雲と申します。
突然ですが皆さんは「小豆洗い」をご存知でしょうか?
小豆洗い(あずきあらい)または小豆とぎ(あずきとぎ)は、ショキショキと音をたてて川で小豆を洗うといわれる日本の妖怪。水木しげるのゲゲゲの鬼太郎にも登場したことがあり、鳥取県境港市の水木しげるロードに銅像があるなど、マニアの間では知名度の高い妖怪である。(Wikipediaより引用)
今まで僕にとって小豆洗いは、妖怪の一種として名前を知っている程度の存在でしかありませんでした。当然、その実在を信じていたわけでもありません。ところがつい先日、そんな認識が覆るような出来事に遭遇したのです。
そう、僕は小豆洗いに出くわしてしまったかもしれないのです……
あれは先日、夕涼みでもしようと散歩に出かけた時のことでした。時刻は17時を回っていましたが、季節がら空は真昼のように明るく、涼み始めた風だけが夜の気配をたたえていました。
川のそばを通りかかった時のことです。せせらぎや虫の声に混じって、何やら耳慣れない音が聞こえてきました。「ショキショキ」と、誰かが何かをかき混ぜているような音です。ふと気になって、川辺まで下りてみました。
あたりを見回してみましたが、人の姿はまるで見当たりません。ただ、あのショキショキという音はなおも聞こえてきます。どうやら、音は川上の方から発せられているようです。少し不気味なものを感じつつも、僕は好奇心から音の出処を目指して歩いてみることにしました。
上流に向かってしばらく進んだところで、突如として音が止みました。気付けばだいぶ奥の方まで来ていたようです。うら寂しい静寂の中には、人の気配などこれっぽっちも感じられません。しかし、数メートル先の地面に「それ」が落ちているのを僕は見逃しませんでした。
見間違うはずがありません。それは小豆の粒でした。なぜこんな場所に小豆が落ちているのか、そして今まで聞こえていたショキショキという音は……これらの出来事が示唆するものに気付いた瞬間、僕は背筋が凍りつく思いがし、暗くなる前に急いでその場を立ち去りました。
後日、図書館で郷土資料を借りて調べてみたところ、案の定というか、この地域でかつて「小豆洗い」が出没したという伝承を確認できました。だからといってあれがそうだったとは断定できませんが、2021年にもなって川辺に出向いて小豆を洗うような好事家がいるというのも考えにくいことです。それにあの小豆が落ちていた場所は、周囲に人家も何もないような奥まったところでした。これだけ条件が揃うと、もしや……という可能性を考えずにはいられないのです。
ちなみに小豆洗いはその名前から無害な妖怪のようにも思えますが、「小豆洗おか、人取って喰おか」と歌いながら小豆を洗い、その音につられると川に落とされてしまうという伝承も存在するようです。もしかして、僕も危ないところだったのでしょうか……?
皆さんも、もし不意にショキショキという音を耳にしたとしても、その正体を突き止めようとしない方がいいかもしれません。ひょっとしたらそれは、小豆洗いかもしれませんよ……?
あなたは、小豆洗いの存在を信じますか?
オモコロ編集長・原宿
うーん……
どうですか? 今回の特集はこんな感じでいこうと思ってるんですけど。
まあ確かに変わった体験だけど、記事にするほどのことかというとねえ……
えーっ、ダメですかね……?
「小豆洗いに遭遇したかもしれない」ってだけだと、ヒキが弱すぎるよ。ネット上にはもっとインパクトのある怪談がいくらでも転がってるんだから。
まあそうですけど……
そもそもこの話だと、小豆洗いの目撃談としても信憑性がないかなあ。せめて小豆洗いの姿を目撃したとか、声を聞いたとかなら説得力があるけどさ。
はあ……
とにかく、これだけだと記事として物足りないからもっと練ってきな。
わかりました……
……あの、最後に一つだけ聞いてもいいですか?
何?
原宿さんは、小豆洗いって本当にいると思いますか?
いやあ……小豆洗いなんていないでしょ。
やっぱり、小豆洗いなど存在しないのでしょうか?
あの日川辺で聞いた音も、落ちていた小豆も、何かの勘違いだったのでしょうか?
真相を突き止めるには、再び調査を行うしかありません。というわけで、先日小豆洗いの痕跡を発見した川に再びやって来ました。ちなみに現在の時刻は21時。妖怪探索をするとなればやはり夜の方が都合がいいでしょう。
それでは探索を開始しましょう。今回こそ何か決定的な証拠を掴めるかもしれません。
あなたは、小豆洗いの存在を信じますか?