どら焼きの生地を焼く

どら焼きの皮20枚分の材料を混ぜ合わせる。みりんを入れるのが意外だ。みりんによって焼き色がきれいに仕上がるらしい。

ホットプレートで焼いていく。生地を丸く同じサイズに落とすのって難しい。

焼けた。弱火でじっくりを心掛けたが、焼き色がグラデーションになってしまった。ホットプレートは熱の伝わり方にムラがあるらしい。
今からでもフライパンに切り替えられるが、あえてホットプレートのままいきたいと思う。めんどくさいからではない。きちんとした理由がある。

焼き立てを1秒でも早く味見したいから。味見はライブ。私は迷わず一番大きなものを皿に移した。

ノーモーションで鉄板から口に運んでいるため、あっつあつだ。いいぞいいぞ。皮の表面が香ばしく歯ごたえがある。
ハフハフしながら私は思った。


いや、思うより先にフォークが次のどら焼きの皮に刺していたかもしれない。

あんこを持ってきた。この時点で皮とあんこを合わせて味見することで、甘みのバランスを見るのが狙いだ。決してリッツパーティー感覚で皮にあんこを乗せ始めたわけじゃない。

気がつくと、さっき作ったホイップクリームを冷蔵庫から取り出していた。
乗せたい。ほかほかの皮とあんこにホイップクリームを乗せたら味のバランスはどうなるのか知りたい。そして私の体がどうなってしまうのか知りたい。ああもうめちゃくちゃにされたい。
しかし、手元にあるのはたった大さじ1杯分のホイップクリーム。使いきってしまったら、完成品は生どら焼きとは言えない。ここで貴重な存在を失うわけにはいかないのだ。今はじっと堪えなくては……

だめだった。乗せずにはいられなかった。私の中の沢口靖子さんがリッツパーティーを始めてしまった。

私の中の沢口靖子さんが囁いた。

「はちみつをかけなさい」
私は従うしかなかった。おいしい。

クリームチーズも冷蔵庫から出してきた。目の前にほかほかのどら焼きの皮。それが取り放題。なんでもかけ放題で乗せ放題。

終わらないパーティが始まってしまった
どら焼きを組み立てる

正気を取り戻した。予定ではどら焼きが10個できるはずだ。テーブルの上にはどう計算しても10個に及ばない量の材料が少し寂しげに置いてある。

皮は7枚あった。そのうち小さな1枚はすかさず食べた。こういう半端なミニサイズが生まれると罪悪感なく味見ができてうれしい。味見を遠慮しない今日でもありがたいものだ。
冷めた皮は表面がしっとりして趣が変わった。どら焼き感が一気に増しておいしい。手が止まらない。もう2枚食べた。

こうして出来上がったどら焼きは2個。遠慮なき味見を潜り抜けたどら焼き。厳しいサバイバルのなか生き残ったことを誇ってほしい。

2個のどら焼きをラップで包んだが、そういえば皮2枚であんこを挟んだ形で味見をしていないことに気がついた。
これがラスト味見だ。ひとつラップを剥いて食べてみた。ああおいしい。最後の味見の空気を楽しむために散らかしたキッチンの前で食べた。
完成したどら焼きを実食する

翌日、完成した残り1つのどら焼きを食べてみた。
上下の皮の大きさが合っていないしゃくれ気味のどら焼き。市販のどら焼きのようにきれいな見た目ではないが、おいしかった。
ひと口噛むごとに味見した素材たちが思い出された。
無糖の茹で小豆で無感情になったこともあった。砂糖を加えたら始祖のあんこが現れ驚き、湿地帯の底なし沼みたいなあんこの前では絶望してしまった。
ほっかほかのあんこ、焼きたてサクサクの皮。どれも目の前にして理性を保てなかった。途中失われた生クリームのことは決して忘れない。
完成品のどら焼きを頬張りながら、なんだかボスラッシュみたいだなと思った。各ステージで倒したボスが最終決戦で再集結して挑んできたような、壮大なストーリーだ。
味見を遠慮しないでお菓子づくりをした結果、RPGをクリアしたみたいな気持ちになった。

またやろう!

かとみ










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