こんばんは、ペンギンです。

 

皆さんは、電車で寝過ごしたことがありますか?

 

電車に座って揺られていると、寝心地が良いんですよね。

特に夜だと、酔っていたり、疲れていたりもあって、ついウトウトしているうちに、気づいたら本来の降車駅を過ぎている。

 

寝ている内に本来の降車駅から遠ざかった区間を、電車のオーバーランになぞらえて「オーバースリープ区間」と呼んでいます。

(oversleepはそのまま『寝過ごし』という意味らしい)

このオーバースリープ区間が長ければ長いほど、本来の降車駅に戻る負荷が高くなります。

時間が経つほど戻りの電車が減っていき、もし電車がなくなってしまった場合のタクシー代も高くなります。

場合によっては、自宅から遠く離れた地で夜を明かす羽目にもなります。

 

皆さんのオーバースリープ記録、寝過ごしてたどりついた「最遠」の地は、どこですか?

 

僕は

 

 

 

 

沼津です。

 

寝過ごして沼津に着いた夜

10年前、当時大学生だった僕は、品川駅から東海道線に乗って自宅の最寄駅(平塚)まで帰っていました。

東海道線は、たいてい小田原駅か熱海駅止まりなのですが、たま~に沼津まで行けてしまう電車があります。

都心から電車1本で行ける(=寝過ごせる)最西なのではないでしょうか。

 

その日、たしか22時過ぎくらいに品川駅で乗った電車が、たまたま沼津行でした。

乗る電車がどこ行きであろうと、最寄駅(平塚駅)にはいずれにせよ停まるので、沼津行というレア電車でも何も気にしません。

品川から川崎、横浜を通る頃には空席ができ始めるので、程なくして僕も席に座り、そのままフッと寝てしまいました。

 

そして

 

24時30分に沼津駅で放り出されました。

 

茅ヶ崎(平塚の1駅前)に停まった時には起きていた気がするんですが、そこからよくもまあ、丸々1時間以上眠りこけ切ったものです。

 

同じく寝過ごした人たちなのか、タクシー乗り場には行列ができていますが、僕には関係ありません。

どう考えても、大学生の僕が、沼津から平塚まで数十kmの道のりを、どんな手段を使ったとしても戻れるわけがない。

さすがにここまで遠いと、選択肢がないので慌てることもありません。

どうやって朝まで過ごそうかなあ。

 

ふと、タクシー列と反対の方向に目をやると、今でも忘れない景色が拡がっていました。

 

まず言っておくと、僕の記憶の中の話です。

実際、当時の沼津駅がこうだったかはわからないし多分違う気もするのですが、僕の記憶では、沼津駅の改札出口から50mくらい離れた場所に、ポツンと1軒だけ雑居ビルが建っていました。

 

駅からその雑居ビルに向かって、カラーコーンが規則正しく並んでいました。

どう考えても、終電で沼津に放り出された人たちをその雑居ビルに誘導しています。何者かが。

 

そして、明かりを求める虫のように、電車を降りた人たちがビルに吸い寄せられていきます。

人喰い雑居ビル。

 

雑居ビルに入居している居酒屋などは軒並み閉店しています。

しかし1つだけ、ネットカフェだけが営業していました。

 

確かに、こんな時間に沼津駅にいて、まさか駅前を散策する人なんていないでしょう。

わざわざ誘導してあげる必要がある人なんて、寝過ごしてネットカフェで寝たい人くらいなものです。

配慮の行き届いた街、沼津。終点の地としてのシチズンシップを感じます。

 

こうして僕も、他の虫たちと同じように、カラーコーンを伝ってビルに吸い込まれていくのでした。

 

沼津駅には、他に何もありませんでした。

 

 

 

あれから10年以上経ちました。

年輪を重ねたためか、ここまで派手に寝過ごすことはなくなりました。

たまに終電で1-2駅だけ寝過ごして、歩いたり、タクシーに乗ったり、という「ただただ嫌な出費(疲労)」があるのみ。

そうなったらそうなったで、もう一度体験したくなります。

 

人喰い雑居ビルを、再びこの目で見たい。

 

 

ということで、

 

寝過ごしに行こう!

寝過ごしに行きましょう。

 

品川駅ではなく職場から近い上野駅から、沼津行の最終電車に乗り込みます。

寝過ごすことが目的なので、乗車駅はどこでも良いんです。

 

ちなみに、寝過ごすことは確定事項なのですが「どうせなら、より寝過ごしやすくしたい」と思い立ち、1人でめちゃくちゃお酒を飲んでしまいました。

深酒と寝過ごしは、黒糖焼酎と島らっきょうくらい相性が良い。

 

そのため、カメラロールの多くの写真がこんな具合になっています。

まともな写真も撮れてて本当に良かった。

 

電車が来ました。

寝過ごすことを決めて乗る電車って、とても変な気持ちです。

今回は「寝過ごす」ことが目的なので、沼津に行きたいという気持ちは正直ありません。

通勤通学でもないし、かといって旅でもない。

目的なき移動。移動のための移動。移動の中の移動。

 

電車の中で「よし、寝よう」と思って寝たことがないので、もし寝つけなかったらどうしようと思ったのですが、

 

あ、全然イケそう。

 

 

 

 

 

 

早川・・・?

 

起きて、頭が働いていない状態で「知らない駅名」を見ると、混乱します。

 

結構寝過ごせましたが、沼津まではまだかなり距離があります。

予定より早く起きてしまったようです。

 

沼津まで行って、人喰い雑居ビルを見届けることも目的のひとつなので、このまま沼津まで乗り続けます。

そのためここからは、ただ知らない駅を通り過ぎるだけの、移動のための移動です。

 

どこまでが駅舎で、どこからが夜空なのかもわからない。

 

気づけば、同じ号車にはもう誰も乗っていません。

10年前の僕は、こんなポツンと状態でガーガー眠りこけてたんですね。

沼津駅で起こしてくれた駅員さん、ありがとうございます。

 

あと、めっちゃおしっこしたい。飲み過ぎた。上野駅で2回おしっこしたのに。

これは沼津行の最終電車なので、中途半端な駅で降りたらもう沼津まで寝過ごすことはできません。

それはさすがに意味が分からなすぎるので、もちろん我慢します。

家を遠く離れ、何の用もない終点まで乗り続け、途中下車さえも許されない。

 

沼津に着く

着きました。沼津!

知らない駅同士に挟まれているのも、「寝過ごして、来るところまで来た」感じがしてとても良い。

 

10年前当時とほぼ同じ時刻に、沼津駅で放り出されることに成功しました。

 

改札に人が並んでいます。

どうやら、JR東日本からJR東海への管轄跨ぎが関係していて、「自動改札ピッ!」だと通れないらしい。

そういえば、こういうくだりあったかもしれない。当時も。

脳の底の底に薄~く貼り付いていた無用な記憶が、もう1回寝過ごしに行くという行動によって図らずも再び日の目を見ることに。

さすがに脳もびっくりでしょう。

 

さて、駅舎を出ましょう。

 

あれ?

 

あれ???

 

カラーコーンが、

 

ない。

 

それに、全然ビルとかいっぱいある。

 

カラーコーンはないし、ビルは結構ある。

あの日、僕が降り立った駅は本当に沼津だったのだろうか?

ちょっと怖くなってきたところで、

 

ロータリーの反対側に、それっぽい雑居ビルを見つけました。

 

 

間違いない。このネットカフェです。

店名も、受付の間取りも、1回しか来たことないけどちゃんと既視感があります。

 

10年経って、ネットカフェはまだありましたが、カラーコーンはもうありませんでした。

沼津駅も発展して、ネットカフェだけに誘導する必要がないくらい「朝まで」の選択肢が増えたということでしょうか。

確かに、当時はカラオケボックスとかはなかった気がします。

 

しかしどれだけ推理を重ねようとも、過去は過去。

今となっては確かめようのないことです。

 

寝ましょう。ネットカフェのフラットタイプで。

 

寝過ごすことをあらかじめ決めていると、寝間着も歯ブラシも着替えも持参しておけるので、便利です。

 

こちらの耳栓は、軍の射撃用にも使われているらしい、激強耳栓です。

着けたら最後、雑音どころか目覚まし時計もシャットアウトしてくれます。

ネットカフェで寝ることを予め知っていないと持ち歩かない、今回のキーアイテムですね。

 

それでは、おやすみなさい。

 

沼津に居座る

おはようございます。

 

ネットカフェのクッションが硬すぎて首が折れるかと思いましたが、クッションを置いてくれるだけでも有難い。

終電で寝過ごしてもちゃんと朝を迎えられたことに感謝しましょう。

 

寝過ごしたり、徹夜で麻雀して迎える朝って、いつもよりまぶしいですよね。

 

朝の沼津は、行き交う人たちも、ビルの表情も、昨晩とは全く異なり、気持ち良いです。

 

本当はすぐ帰ろうと思っていたのですが、

 

来ました。沼津港。

 

食いました。魚。

 

図らずも沼津を満喫してしまいました。

 

寝過ごすって、気持ち良いなあ。

 

車窓から見える景色も、夜と昼では全く違いますね。

同じ街の2つの顔が見れることも、寝過ごしの良さかもしれません。

 

僕たちは、寝過ごしたって、良い。寝過ごした方が、良い。

 

 

それでは、

 

 

 

 

次回は高崎駅編でお会いしましょう。

 

(おわり)