チョコチップ入りメロンパンというものがある。
その名の通り、メロンパンにチョコチップが入っている代物だ。
チョコチップもおいしいし、メロンパンもおいしいのだから、当然、チョコチップ入りメロンパンもおいしい。
でも、ふと冷静になってそのビジュアルを見てみると、そのキモさに驚く。
「そうかな?」「そんなことなだろ」と思う人は、固定概念に縛られている。
「チョコチップ=可愛い、メロンパン=可愛い、すなわちチョコチップ入りメロンパンも可愛い食べ物なのでア~ル」
そんな思い込みがあなたの目を曇らせている。
もう少し近付いてみよう。
どうだろうか?
ゴワゴワの質感に、ブツブツの黒い斑点。
テーブルの上にあるから「これは食べ物だ」という意識が芽生え、そのキモさは普段、隠蔽(いんぺい)されている。
じゃあ、これが庭の隅っこにあったらどうだろうか?
雨で濡れた道路の脇にポツンと置かれていたらどうだろうか?
古ぼけた室外機の上にいたらどうだろうか?
ボールを探していたら、グラウンドの草むらの中からいきなり現れたらどうだろうか?
僕は、人間が創り出した食べ物の中で一番キモいと思っている。
ミミズに模したゼリーや、目玉にそっくりのケーキなど、ハロウィン時期に見た目がキモい食べ物はたくさん作られる。
しかし、それらは意図的に「キモく作ろうぜ!」と作られているものだ。
チョコチップ入りメロンパンは、そうではない。
「おいしいものつくろうぜ!」と作って、このキモさなのだ。
ただただ、おいしく食べてもらいたかっただけなのに……
生まれた時から悲哀を背負っている食べ物、チョコチップ入りメロンパン。
そんなことを考えながら、コーヒーと一緒に食べるチョコチップ入りメロンパンはとてもおいしかった。