私はコメダ珈琲店が好き。

疑いようのない事実である。

しかし同時に、いま現在あんまりコメダ珈琲店のことを覚えていないという事実もまた、存在する。
理由は簡単に言うと、店舗が近くになくて滅多に行けないからだ。
難しく言うと、資本と資源の都市一極集中という経済構造に起因する、地方周縁部におけるインフラの棄却とサービスへのアクセス不全。その煽りを喰らっているからだ。

だからこそ、私はこの抱きしめたら壊れちまいそうなほど儚い記憶を頼りに、うろ覚えでコメダ珈琲店を再現してみようと思う。
そしてその後、電車を乗り継いで実際のコメダ珈琲店に足を運び、自らの記憶の正確さを確かめることにする。

 

本題に入る前に、これを読んでくれている都会人の皆様へ。
私はコメダに行くために 電車を乗り継ぐ。

 

本当の本当にうろ覚えでコメダ珈琲店を再現する

うろ覚えコメダは、座席を再現することから始まる。

これが当記事のベースラインである。
この、ホームスケイプの親子がガタガタ震えて座っていそうな貧相な椅子でさえ、この記事の中では及第点なのだ。

触り心地のいいコーデュロイの椅子だったことは、確かに覚えている。
その生地を撫で付けながら読んだ本の結末も。

なのに、どうしてこんな。

 

私がよく座っていた一人用の座席にはこのあたりにコンセントがある。
はじめてコンセントのある店に出会った時の、「俺を長く座らせようとしてくれてありがとう」「この世界から匿ってくれてありがとう」という気持ちが今でも鮮明にある。
他の何を捨てても、これだけは抑えておきたい。

続いてメニュー。

「他の何を捨てても」の『何』の部分にあたる。
覚えている順に絞り出したため、後半あたりになると、目の隅っこに映った景色といった趣がある。

あと塩。

モーニングのゆで卵にしか使わない塩がここにあったと思う。
それだけ思い出したのでそれだけ置いた。

 

正直な話このあたりはしょうがない。
覚えてないんだから。
答えられないことが明白すぎて、誰よりも早くペンを置いた世界史の中間考査。
薄曇りの教室に充満した諦めの気配が、この座席から漂ってくる。



座席周辺が完成した。
今からこの偽りの玉座に座り、『実際にコメダに行ったときの流れ』を再現してみる。
接客まで含めてのうろ覚えコメダ(いや……うろコメダか!)というワケだ。

 

うろコメダ、来店

お、こんなところにコメダがある。
この暗黒ゾン字フォントを見ると、コメダに来たんだなあという実感が湧いてくる。

カランコロンカラーン♪(ドアの上に取り付けられた鈴の音ではなく、機械から流れている)(鳴ってなかった気もする)

あ、ひとりです
そうですか、一人なんですね(寄り添う姿勢) お好きな席へどうぞ〜

 

このひときわ落ち着く窓際の席にするか
おしぼりでございます。ご注文決まりましたらナンタラカンタララ〜♪
あ、はい。今もう注文いいですか、店員さん

店員。
背が高く、清潔感がある。今回はたまたま部屋にあった電柱の模型にその役を担ってもらった。

はい。お伺いいたします
このシロノワールと、コメダブレンドと、かつパンをください
コーヒーに甘みとミルクはお付けいたしますか?
抜きで

 

『甘み』という概念。ヤダみとか、もにょるとかと同じ系列のものだろうか。私は怖いからこれを付けたことはない。

かしこまりました。こちらは豆です。おくつろぎください♪

豆だ。
毎回これくらいの不意打ち感があったような気がする。
小さいお皿に乗せられたパッケージは青を基調としていて、味はでん六のポリッピーと完全に一致する。
レジ横で買えるが、買ったことはない。

お待たせいたしました。シロノワールと、コメダブレンドと、かつパンでございます。

 

 

シロノワールをシロノワールたらしめるものは熱々の生地とつめたい上のやつである。
私は生地をクロワッサンと分析し、『開き』にして円形に成型した。

上のやつは市販のソフトクリームから摘出したソフトクリームだ。文章が終わっていることを感じているが、そうとしか表現できない。


↑市販のソフトクリームからソフトクリームを摘出しているようす

コメダブレンドの特徴はしっかりとした深みと、それでいて尾を引かないあっさりとした後味。
これを再現することは不可能なので、「マジで頑張ってくれ」と豆を激励しながらドリップした。
そしてこのロゴ、うろ覚えなりに書いたものの、著しく精彩を欠いている気がする。

かつパンに関してはかなり頑張ったと思う。

まずはTwitterユーザーを何度でもびっくりさせるボリューム感。
そしてこの切り口!!!!


これだけはこの記事で唯一確信を持てる部分だ。
厨房の奥に盲目の剣豪がいて、そいつにかつパンの気配だけで斬らせているのではないかというほどの、大胆な切り口。

いただきまーす

多く、おいしい。
コメダブレンドに関しては豆たちに激励届かずといった印象だが、コーヒーだからそもそも美味しい。
シロノワールとかつパンも、材料がそもそも不味くなりようがない精鋭たちなので言わずもがな。
それほど似ていないモノマネ芸人が根本の歌のうまさだけで説得力を出しているのと同じ状況である。

ごちそうさまでした。すみません、お会計をお願いします。
はい。お客様のお会計、2610円になります。

シロノワール  850円。
コメダブレンド 700円。
かつパン    1060円。

コメダの椅子が柔らかいのは、伝票を見て失神した客を再び受け止めてあげるためだという説がある。
コメダは多く、そして高い。
私の脳に克明に刻まれた真実だ。


 

うろコメダを堪能したところで、いよいよ本物コメダ珈琲店へ赴く。

>>本物コメダ珈琲店へ<<