秋。

植物は枯れ、動物は生き絶える季節である。

丁度この季節までにはほとんどのカブトムシは死ぬ。

この時期になると小学生の頃、飼っていたカブトムシを思い出す。

害虫は嫌いだが、昆虫は昔から好きでバッタや蝶々、クワガタそしてカブトムシを飼っていた。

特に日本のカブトムシの、丸々とした身体とつぶらな瞳が大好きだ。

オスとメス1匹ずつ親から買ってもらった。

戦わせる為ではなく純粋に愛でていたから、角のないフンコロガシのようなメスも平等に可愛がるのである。

オスメス一緒のケージに入れると交尾して、卵を産んで育てるのが大変なので別々で飼育していた。

お互い隣のケージで意識しているのかはわからないが、各々が口から筆のような毛を動かしゼリーを啜って暮らしていた。

時折メスが脱走し、猫に見つかり仰向けにされブレイクダンスのように回転していたのもいい思い出だ。

 

子供ながら世話はちゃんとやり、週一回寝床を掃除し、霧吹きで体を湿らせ、ゼリーを取り替え、スイカをあげて、散歩もさせ、時々肩や手に乗せて一緒の時を過ごした。

 

しかし昆虫の寿命は短い。

秋頃には2匹ともポックリと亡くなってしまった。

いつものようにのそりと動き、ゼリーを啜る姿が見れなくなるのが悲しい。

子供ながらに深く悲しみ、死に対する憤りを覚えた。

なぜこんなに早く死んでしまうのだ。

 

私は2匹の亡骸を抱え、シルバニアファミリーの家のベッドに寝かせた。

生きている間は出会えなかった2人を会わせられるね。

広いお家で伸び伸びと過ごしてほしい。

テーブルに座らせ、ミニチュアのご飯を用意した。

生きている間はゼリーとスイカしかたべれなかったからね。

バスタブのおもちゃの中にも入れた。

生きてる間は霧吹きの水しか浴びれなかったもんね。

 

一通り遊んだら、惜しみながら土の中に埋めた。

死んだらすぐに冷たい土の中に入れるのは可哀想だと思ったから、シルバニアファミリーのお家で遊んだのだ。

子供らしく、ピュアで素敵な思い出である。

 

しかし、この話を知り合いにすると全員に引かれる。

 

なんで?

 

 

 

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