第32回「月が綺麗ですね」

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OP/いとしいご主人様 ED/悲しみのラブレター
唄/森の子町子

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みくそば

月が綺麗ですね

 

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金曜日の昼過ぎに、みくのしんから突然ラインが来た。

 

「15時半に渋谷にしよう」

 

これだけだと分からないだろうから捕捉すると、「(今日のかまってみくのしんの収録だけど、集合時間と場所は)15時半に渋谷にしよう」という意味。

人を呼び出すのにこんなに機能的な文章があるだろうか。機嫌の悪い時の僕なら複数回のゲンコツも出るであろう無礼な連絡だ。

 

「いや、前後のやり取りを省いてそう見せてるんでしょ」と言われるかもしれないが、マジでこんな連絡が突然届く。みくのしんからのラインは毎回「なにこれ、送り間違えてんの?」ってくらい独りよがりな文章なので、読解力が試される。その都度ラインの履歴をたどって意味を理解する僕の苦労を分かってほしい。

 

 

ただ、この日の僕に怒りはなかった。

 

なぜか、を説明すると長くなるのだが、長い付き合いの僕だからこそ分かる「みくのしんの真意」をここに嗅ぎ取ったからだ。

 

前提として、このラジオの収録はだいたい「中目黒」という場所で行われる。

中目黒にはみくのしんお気に入りのカラオケボックスがあり、いつからかそこで収録するのがお決まりとなっているのだ。

また、みくのしんの家から歩いてでも行ける距離にあるので、そういう面でも都合がいい。ちなみに僕の家からは1時間かかる。

 

また、集合時間も17時と決まっている。

みくのしんのバイトが終わる時間を考えると、だいたいこれぐらいの時間に落ち着くらしい。僕はと言うと、曜日によってはこの時間が無理な場合もあるが、調整をしようとするとだいたい会話が成立せずにストレスをためる羽目になるので、ほとんど諦めている。

 

要するに、いつもは「17時に中目黒で」このラジオを収録しているのだ。

「なんで時間も場所もみくのしん優先なん?」という多少のイラつきはあれど、なんとなく今まではそれでやってきた。

 

 

そこへきての冒頭の連絡である。

「15時半に渋谷にしよう」

 

集合時間も集合場所も全くのイレギュラー。初めてのケース。

特に連絡がないからいつも通り行こうと思ってたのに、いきなりこの注文だ。当日だぞ。当日の昼過ぎだぞ。俺の家からの移動時間を考えると、「15時半に渋谷」はイコール「今すぐ準備して家を出ろ」になるんだぞ。バカかこいつ。

 

 

ところが、である。

僕に全く怒りはない。むしろ「とうとうこの日が来たか」という興奮すらある。

 

試しにラインを送り返してみた。

「いつも通りに行くつもりだったけど、なんで今日は渋谷なん?」

 

みくのしんの返信は、

「ハンズに行こうよ」

だった。

 

 

 

やっぱり、である。

賢明なかまみくリスナー諸君にはわかっただろうか。このみくのしんの見せた隙、決定的なほころびが。

いや、付き合いの長い僕だからこそ、彼の意図が汲み取れたのだろう。これだけのヒントで正解にたどり着ける者はそうはいまい。

 

 

一応説明しておくが、「みくのしんはラジオを収録する前に東急ハンズに行きたがっている」と読み取るのは間違いだ。だって意味わかんないし。だったら「ラジオ収録前に○○買いたいからちょっと付き合ってくんない?」とか言え。

 

もっと言うと、みくのしんがかまどと一緒にハンズに行こうとしているのもおかしい。彼は僕とショッピングしたくないはずだから。

まあこれは、なんというか、かまどがみくのしんといるとテンションがバグって、公共の場でも人としてあまりよろしくない行動を繰り返すので、みくのしんがそれにマジでヒいているという事情があるから、まあみなさんには分かりようがないだろう。

 

 

つまり、こういうことだ。

「みくのしんはかまどに嘘の予定を伝えている」

 

 

さらにわかりやすく言うとこうだ。

「みくのしんは、かまどに『ラジオ収録』と思いこませて『何か』を仕掛けようとしている」

 

 

 

そう、ドッキリに違いないのだ。

 

バカめ。見破ってやった。不器用なみくのしんなりに頑張ったのだろうが、あいにく俺にはお前と違って知能がある。この程度の見え透いたニセのお誘いにホイホイ引っかかるほど、ご機嫌な脳みそではないのだ。あぁ…秀才に生まれた己が恐ろしい…。

 

 

みくのしんが僕に仕掛けようとしているドッキリは「かまちゃん大パニック!どきどきホラーゲーム実況(SE:叫び声)」だ。

 

これも説明すると長くなるが、だいぶ前に意味のわからない理屈で僕がこのラジオでホラーゲームを実況することが決まっている。なんやかんやで延び延びになっていたが、ここにきてみくのしんはその準備を整えたのだ。

 

僕は怖いものがマジで嫌いなので、「うわあマジか…やだな〜…」と反応するのが正しいのだろうが、やはりどうしても「みくのしんも成長したな…!」という感慨にふけってしまう。

 

僕が嫌がる企画を僕が準備するというのも変な話なので、この件はみくのしんに任せっきりだった。ところが、というか案の定というか、これがまあ遅々として進まず気づけば2017年も終わろうかという時期。ひょっとしてあいつ忘れてるんじゃないかと危惧していたが、何のことはない、僕の知らないところで彼は着々と準備してくれていたのだ。

まだ人間としての自我も芽生えていない彼が、一つの仕事を終えたのだ。

 

 

しかし、彼は詰めが甘かった。

 

と言うより、相手が悪かった。

この僕、大天才のIQMAXスーパー頭良し男ギフテッドかまちゃんは、それを事前に察してしまったのだ。あらまあ!

 

 

しかし、ここはひとつ

「騙されてやる」のが、大人というもんだろう。

 

スペシウム光線を撃ってきたちびっこにはやられたふりをしてあげるように、みくのしんの安い計画に甘んじて乗ってやろうじゃないか!

みくのしんが世界の広さを知るには、まだ早い。俺様の手のひらの上で、あくせくと自己肯定感を育むが良い!

今日のところはお前に花をもたせてやるよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、何もなかった。

ドッキリのドの字も出んかった。マジでただハンズに行ってラジオ録っただけだったわ。

一応「何でハンズに行きたかったん?」と聞いたら「ハンズに行きたかったから」だって。何それ。バカじゃん。誰がって俺がよ。

 

END