コーダたちのムジック訓練は佳境に差し掛かっていた。
訓練兵たちは操縦姿勢を鍛えることで、操縦技術もみるみる向上した。
しかしコーダは、未だ操縦姿勢を鍛えあぐねていた……
「俺が着任して3ヶ月、ずいぶんと動きが良くなったじゃないか!」
「大尉の指導のおかげですよ!」
「最近じゃコーダともけっこうやり合えるようになってきたしな!」
「……」
「お前は相変わらず姿勢が悪いな。ちったあマシになったが、それでも発揮できる実力は3割程度だろう」
「……フン」
「まあ、それでここまで食らいつけるんだから大したもんだがな」
「俺は、必死にやってるだけだ。家族の仇を討つために……」
「……スラー戦役で両親を亡くしたそうだな」
「そうだ、あんた達が守れなかったから俺の家族は死んだ!」
「その俺にも勝てないんじゃ、亡くなったご両親が浮かばれないな」
「なんだと!?」

「もっぺん言ってみやがれ!」
「おい、コーダ!」
「や、やめなよ!」
「その怒りは真っ当なもんだよ。だがな、未熟なまま戦場に出て死ぬことを俺は許さん!」
「な……!?」
「お前は未熟なりにムジックの扱いを勉強しセンスを磨いたようだが、そのこだわりを捨てなければ本当の実力は発揮できない」
「お、俺はこの手で奴らを」
「今のままじゃ、お前は奴らに討たれるさ」
「……」
緊急警報!
緊急警報!

「なんだなんだ!?」
「こ、これ、訓練なの!?」
「お前たち、これは訓練じゃないぞ!」
「……来やがったのか!」
───司令室───

「高熱源体、多数接近! 土星連合のムジックです!」

「2年の沈黙を破り、再び地球圏に侵攻してきたか……」
「訓練兵は後方で支援に徹しろ! 無理はするんじゃないぞ!」
「前線は俺が指揮を執る! 教官殿、支援を頼みたい」
「了解です!」
「フォルテ、ピアノ、それから……」

「コーダ、お前たちにも前線に出てもらう」
「ええ!?」
「僕たちが前線に!?」
「……望むところだ!」

「ほ、本当に土星連合だ……!」
「やるぞ……やってやる……!」
「お前ら、敵を討とうと思うんじゃないぞ。生き延びることだけを考えるんだ!」
「んな甘いこと言ってられっかよ……!」
「大尉! 敵ムジック、来ます!」
「行くぞ!」




「ふ、先手はもらったぞ」
「大尉、すげえ……!」

「何!?」

「威勢の良いのがいるじゃねえかァ!」
「あの機体は……!」

「このレランドが蹂躙してやるよ、2年前のようになァ!」
「貴様! 土星連合のアッチェだな!」
「なんだァお前? 俺を知ってるのか?」
「貴様らのために散った命、忘れたとは言わせんぞ!」
そうかお前、2年前の戦いで落とし損ねたヤツだなァ?」

「せっかく生き延びたってのに、俺とまた出逢っちまったんだなァ!!」
「やらせん!」



「「うおおおおおおおおお!!!!」」
「す、すげえ……」
「大尉がいなかったら僕たち、とっくに全滅してるかも……」
「……」

「間違いない……」

「あいつだ…… 俺の暮らしていたコロニーを撃ったのは、父さんと母さんを殺したのは!!」

「ヒャハハハハハ!! やっぱ戦争は楽しいなァ!!」

「なんだァ?」

「貴様がああああああ!!!!」
「おーおー、元気なことだなァ」

「元気なだけのザコはお呼びじゃないんだがなァ」
「あのバカ……ッ!」
「クッ……!」
「遅せェんだよノロマがァ!!」

「コーダ!!」

「大尉!!」

「な、なんであんたが……!」
「英雄なんて大層なもんじゃないんだ、俺は……」
「え?」
「守るべき人々を、守れなかった俺が……」
「クレシェド大尉……」
「いいかコーダ、お前の操縦センスは天才的だ。姿勢さえものにすれば、奴に負けはしない……」
「……」
「お前が、奴を討つんだ……」
「……ッ!」

「おいおい終わりかよ呆気ねえなァ」

「なにッ?」

「ふっ、やりゃできるじゃねえか……」

「お前は許さん!」
「こいつ、急に動きが!?」
「うおおおおおお!!!」

(機体が思い通りに動かせる!)
「コーダ、すげえ……!」

(相手の動きが手に取るようにわかる!)
「行けッ! コーダ!」

「そうだ、コーダ……」
(そうか、こいつ……)

(操縦姿勢が悪いんだ!)
「バカなァ! こんなはずが!」

「落ちろ! 落ちろよォ!!」


「終わりだ」

「うわああああ!!!!」

(父さん、母さん…… 仇は討ったよ……!)
西暦2873年、第二次スラー戦役は地球軍の勝利で幕を閉じた。
だが、一時の勝利はさらなる戦いの序章に過ぎなかった。
地球軍の兵士コーダは、己を取り巻く運命の行方を、まだ知らない……
この物語は、のちに二百年戦争と呼ばれる長い戦争の歴史のほんの一幕の出来事である!

りきすい








酉ガラ







