西暦2362年、増え続ける地球人口の生活資源が枯渇し、かねてより提唱されていた宇宙移民計画が始動した。

それから500年、宇宙に進出した人類は星々に国家を築いたが、星ごとに得られる資源量の違いに端を発する権力抗争が勃発、以来長きにわたる戦争の時代へと突入していた。

この物語は、のちに二百年戦争と呼ばれる長い戦争の歴史のほんの一幕の出来事である。

 

 

 

「本日の訓練は以上だ!」

「すっげー……あいつ、また模擬戦で勝ち星だってよ」

「こないだも教官を負かしちまうしな。シミュレーターでの訓練とはいえすげーよ」

「天才ってやつなのかね」

「……」

 

「コーダ、すごいじゃないか!」

「フォルテ」

「模擬戦じゃもうコーダに敵う奴はいないんじゃないか?」

(俺の手で奴らを討つために、もっと……)

 

「諸君、これまでのムジック訓練ご苦労である。シミュレーターでの訓練はここまでだ。今後は実機での訓練をおこなう」

「ムジックの実機訓練を監督するクレシェド大尉だ」

「大尉は2年前のスラー戦役で我が地球軍のエースとして活躍された方だ。存分に学ぶように」

 

「スラー戦役って、たしか……」

「ああ、土星連合の地球圏侵攻。多くの民間人の命が失われた戦いだ」

「コーダが家族を亡くしたのもその時だったんだよな……」

(父さん、母さん……)

 

「クレシェド大尉」

「なんだ?」

「あんた、スラー戦役の英雄なんだろ?」

「そんな大層なもんじゃないさ」

「俺と模擬戦してくれよ」

「「!?」」

「……へえ」

「おいコーダ! 大尉にいきなり……」

「いいぜ」

「……」

 

「訓練に使うムジックの調整ついでだ。ペイント弾でやろうか」

「大尉、コーダはまだ実機を扱ったことが……」

「教官殿、甘やかしちゃいかんよ。戦時下じゃ初めてだからって敵さんが手加減してくれるわけじゃないんだ」

 

 

「これが、ムジック……」

「訓練に使うとはいえ、実戦配備されているデリカートだ。シミュレーターのようなチャチじゃねえぞ」

 

有人操縦式人型機動兵器ムジック

惑星探査及び資源採掘の用途に使用されていた人型探掘機メロデをベースとし、スラスターの出力を向上、各種兵装を搭載し宇宙戦闘を可能にした。

 

「さあ、おぼっちゃんにとっては初めての実機訓練だ。思いっきり来な」

「舐めんなよ……」

 

「なあ、どうなると思う?」

「コーダは天才だぜ。クレシェド大尉の実力がどんなもんかわからねえけど、けっこう良い線行くかも……」

 

 

数分後

 

 

「くそ!」

「俺の勝ち、だな」

 

「コーダ、初めての実機をあそこまで操縦できるとは……」

「けど、模擬戦じゃ負けなしだったコーダが赤子扱いだなんて……」

「スラー戦役の英雄ってすげえんだな……」

 

「俺が的を塗り潰せないなんてな…… なかなか良いセンスしてるじゃないか」

「なんだと……?」

「俺なんかよりよっぽど強くなるだろうぜお前」

「あんた、俺をからかってるのか!?」

「からかってなんていねえさ」

「手も足も出なかった…… なのにセンスが良いだと!?」

「ああ、お前の操縦センスは本物だよ。いろんな奴を見てきたからな、わかるのさ。だがな……」

 

「お前の操縦姿勢は最悪だ。それじゃ実力の1割も発揮できねえさ」

「操縦姿勢……だと?」

「良いか、操縦姿勢はムジック戦闘の要(かなめ)だ。姿勢訓練を疎かにするんじゃない。死にたくなければな」

「クッ……」

 

「いいかお前ら! ムジックを扱うには正しい操縦姿勢を身に付けることだ! ビシバシ鍛えてやるから覚悟しろよ!」

「「「「「「は、はい!」」」」」」

 

(……俺なりに、必死にやってきたんだ)

 

(こんなんじゃ、仇を討てないじゃないかよ……!)

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