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この写真を見て欲しい。後ろの店員の鋭い視線は、まるで僕の動向を監視しているようである。

 

 

 

僕は、開けてはいけないパンドラの箱を開こうとしているのではないのかという錯覚に陥った。たけしくんの存在、そして彼を探すことは、この街ではタブーとなっているのではないか。そんなオカルトじみた疑念が頭によぎる。

 

 

しかしいくら違和感が募るからといって、諦めるわけにはいかないのだ。たけしくんの手がかりを掴みたい一心で、僕は聞き込みを続けた。

 

 

聞き込みを続けるうちに、通りにはぽつぽつとネオンの明かりが灯り始め、昼間はどこにいたのやら、夜行性の人々が蛍光灯に群がる虫のように溢れ出てきた。いつの間にか通りは人で埋め尽くされ、特別な記念日であるかのようにビールを手に持ち騒ぎ出す。いつものカオサンの夜が始まった。

 

 

 

 

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昼間からたけしくんの痕跡を探していた僕は歩き疲れ、喉はカラカラだ。お金がないのでカフェには入らず、コンビニで7バーツ(約25円)の水を買い、通りの歩道ブロックに腰掛けてタバコを吸っていた。すると、ジャラジャラした大量のアクセサリーを持った奇抜なばばあが話しかけてきた。聞けばこのばばあ、この地で10数年、奇抜な格好でアクセサリーを売り続けているとのこと。そんな奇抜な格好で街を歩いて恥ずかしくないのかと思ったが、彼女の身の丈話を聞いていると奇抜な格好とは裏腹に、とても優しくて温厚な人だと分かった。

 

 

 

10数年この地でアクセサリーを売り続けている彼女ならもしかしたら、と思い、ばばあにもたけしくんのことを聞いたが、心当たりはないという。この人もダメか・・・。ばばあが、手に持っていた派手なアクセサリーを買わないかと言ってきたが、僕はそんな浮かれた気分じゃないんだと言って立ち上がり、とぼとぼと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

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結論を言うと、結局たけしくんを探し出すことはできなかった。カオサンには、頭のおかしい人はたくさんいた。しかしそれはたけしくんではない。たけしくんは、おかしい頭の人である。

 

 

カオサンでは頭のおかしい人を探すのは簡単だ。DANGERと書かれたプレートを下げた超弱そうなおじいさんもその一人である。そういった人たちはその辺にゴロゴロしている。しかし、いくらカオサンといえど、大きなトリュフを頭に乗せた人を見つけるのは非常に困難を極めた。

 

 

 

それでも僕は、あきらめたわけではない。まだまだ人生は長い。これからも僕は人生という旅の中で、たけしくんを探し続けるだろう。そして彼と友達になり、一緒に再びカオサンを訪れたいと思っている。そう、僕はまだ旅の途中で、これからも旅は続いていくのだ。

 

 

 

 

いつの日か、彼と再開できることを夢見て、日本に帰って仕事を探そうと思う。

 

 

 

 

 

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日本に帰って、仕事を探そうと思う。

 

 

 

 

 

(おしまい)

 

 

 

 

 ※たけしくんの情報をご存知の方はご一報ください。

 

 

 

 

 

 

【参考文献】

 

 

「深夜特急」 沢木耕太郎著

 

「バックパッカーズ・タウンカオサン探検」 新井克弥著

 

「バンコク楽宮ホテル」 谷垣生著