作るでし!

 イメージ図を描こう。できるガンスミスはイメージ図を描くもんだ。

 描いた。完璧だ。しかしこう見るとあれだな、あの構造に似ている。

 農業で使う噴霧器とほとんど同じ構造をしている。噴霧器を買えばインクの射出機構にそのまま使えるのではないか。

 

 早速ホームセンターで一番安い噴霧器を買ってきた。タンクに水などを入れてポンプで圧力をかけてやるといい感じに噴霧できる。こうしてみるとこの時点で結構スプラトゥーンのブキっぽさがあるな。

 

 傘も買ってきた。この傘をベースとする。

 

 スパイガジェットを作るならこういうタイプのものを選んだ方がいいに違いない。
 中棒がぶっといし、このタイプのジャンプ機構は中棒の内側を使っていないので中棒内部を利用する工作がしやすい。
 傘の真ん中のメインの棒、中棒って言うらしいぜ。この記事書いてて初めて知った。

 

 逆に、こういう昔ながらのジャンプ機構は中棒内部に部品が入っているのでスパイガジェットには向いてない。傘にも向き不向きがあるんだ。人間と同じだ。他には骨と皮でできているところも人間と同じだな。

 

 ネジ一本で柄とジャンプ機構を簡単に分解できた。助かる。傘の持つ部分、正式名称はハンドルとか手元とか言うらしいが本記事では「柄」でいかせていただく。

 

 ゴツい機械を借りて、余分なところを切り落とす。

 

 最低限のジャンプ機構とネジ穴だけ残した。ゴツい機械最高。

 

 柄もいい感じに切る。いい感じにとしか言いようがない。世の中には職人のフィーリングでなんとかなっている部分というのがいっぱいある。そういうのが現場職の「見て学べ」みたいな悪習を生むのだが、職人側も「説明しようがない」ということだってあるから仕方ない面もある。なんだこの嫌な話は。前々職を思い出して憂鬱になってきた。

 

 銃口となる先端も切り落としてしまう。よっしゃ。穴が開くだけでかなりブキっぽくなってきた。もうほとんどスパイガジェットと言っても過言ではない。

 

 中を覗いてみたら何やら傘の先端側に棒が通っていることに気がついた。なんだお前は。こんなのがあったら中にチューブを通せないじゃないか。邪魔だぞ。

 

 多分これだろう。骨の付け根を固定しておくための金具に違いない。下手に引っこ抜いたら傘としての形を保てなくなるかもしれないな。それは困る。

 こういう作戦でいこうと思う。多分なんとかなるだろう。意味わかりますか、この図。わからなくても大丈夫。

 

 傘の中棒に入るたがねなんか持ってないので万能工具であるマイナスドライバーを突っ込むことにした。

 

 件の金具が曲がった手応えがあったので、そこら辺にあったちょうどいい棒を差し込んで綺麗に曲げてしまう。ちょうどいい棒がそこら辺にあって助かった。信仰の賜物だろう。スパイガジェットを信じる気持ちが我が手にちょうどいい棒をもたらしたのだ。
 ちょうどいい棒はこの後ガッチリハマってしまったので抜くのに大変苦労した。

 

 件の金具が綺麗に折り曲げられている。これで中棒内の障害物はなくなった。清々しい気分だ。中にチューブを通すことができる。

 

 ホームセンターで買ってきたちょうどいい太さのチューブを入れる。カマキリから出てくる寄生虫みたいな写真でちょっと嫌だな。カマキリの寄生虫を見たことがないみんなはハリガネムシで検索してみてね。

 

 噴霧器のコックを加工する。このコックのレバーがそのままスパイガジェットのトリガーになる予定だ。持ち手が長すぎるので良い具合に切断する。こんな感じでくっつく予定。

 

 傘先端から通してきたチューブとコックをつなぐ。元々の噴霧器の棒が奇跡のようにちょうど良いサイズだったので、そのままチューブとコックのジョイントとして使う。
 この工作はこういう運の良さと思いつきで成り立っている。真似するときはちゃんとサイズとか測った上で、どうやって部品を繋ぐか考えてからやった方がいい。

 

 部品は固定できるけどチューブまでは貫通しない絶妙な長さのビスを買ってきて念の為三箇所くらい留める。

 

 柄に慎重にドリルで穴を空けてチューブを通す。完璧。もうこの時点でほとんどスパイガジェットと言っても過言ではない。

 

 切断した噴霧器の持ち手側、これをさっきの傘の柄に差し込んで繋げたい。

 

 なのでいい具合のサイズに削りたい。色々試したが、ニッパーでネチネチとちょっとずつ削るのが一番よかった。
 ポリプロピレン製で思ったより柔らかい。ニッパーを使えばキャラメルを噛み切るようにネチネチと切れる。しかしこのネチネチとした作業は地味だし、かなり時間がかかる。スパイガジェット単独でガチホコのバリアを割ってる時くらい。

 

 無事いい感じのサイズに削ることができた。なせば成る。スパイガジェット単独でも割ろうと思えばガチホコのバリアだって割れるように。
 接着するのはやめておこう。分解できる方がメンテナンスしやすいし、ポリプロピレンを接着できるボンドは高いので。

 

 全部合体。柄に空けた穴からチューブが入ってコックの手前まで届いている。
 ほとんど形が見えてきた。君には何が見えるだろうか。スプラトゥーンの最強ブキか。それとも噴霧器が繋げられた哀れな傘か。

 

もうちょい見た目にこだわろうぜ

 あのままでは噴霧器が繋げられた哀れな傘なので、もう少し見た目にこだわりたい。


©︎Nintendo『スプラトゥーン3』より引用

 これがゲームのスパイガジェットだ。銃口のデザインと、何より柄のデザインが特徴的だ。

 

 先端。上のスパイガジェットと見比べると恥ずかしくて見てられない。服を着ていないような落ち着かなさがある。

 

 先端のちょっと出ているチューブにちょうどいいゴムパッキンをつける。何かの拍子に傘の中棒内に水が入ってこないようにするためだ。

 

 そしてちょうどいい長さに切ったちょうどいい太さのホースを用意する。ホームセンターで買える。

 

 これをテープでうまいことやる。

 

 かなりスパイガジェットではないだろうか。見違えるぜ……。

 

 柄もいい感じにしたい。今のままではなんだか異様に細長いので。こちらもちょうどいいホースでいい感じに太くしよう。

 

 スパイガジェットの柄はバンブーハンドル風だが、あくまでもバンブーハンドル「風」といった感じだ。完全に竹にしてしまうとあまり似ないだろう。このなんでも木目調にできる便利なシートを使う。元ネタのキングスマンのアレも柄は木製だった気がする。

 

 これでどうだ。柄側のカバーは接着して、コック部分のカバーは取り外しできるようにした。分解できる方がメンテナンスに便利なので。

 

 うーん微妙、似てない。バンブーハンドル風でもなく、木製っぽくもなく、木目シートを貼ったホース包みといった見た目だ。カーブに合わせるために細かく切ったホースが竹の節目に見えないかと期待したが、全然見えない。
 改善の余地はあるが、今回はもうこれでいいことにする。遠くから見れば気にならないだろう。撃つ時は手元なんか見ないし。

 

試射、そして改良

 いよいよ試射だ。今までの段階で一度も試射をしていないのが信じられないな。見た目を気にするまえに試射をすべきだったのではないか。お風呂とかで。

 

 ガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャ(ポンプでタンクに圧力をかける音です)

 

 試射、ジョボボボ

 

 ジョボボボボボボ。これは酷い。よく見えないと思うので水流を図示しよう。

 

 ジョボボボボボボ。ご覧の通り全然勢いがない。ゲームのスパイガジェットもたいして射程距離は長くないが、これはあんまりだ。なんだこの情けない水流は。

 これじゃあまるで高校生活最後の大会で惜しくも優勝できなかったが、部員の前では最後まで気丈に振る舞っていた女子バレー部部長が、その日の帰り道で人知れず流す悔し涙くらいの水流じゃないか。それか全然おしっこしたくないのに検尿のために無理やり出す時のおしっこくらいの水流。

 あとついでにコックの手前の節から水漏れしてる。改良が必要だ。

 

 このだだっ広いノズルが悪い。ノズルの穴は小さい方が水の勢いが良くなる。物理で習ったから間違いない。

 

 ダイソーで空気入れを買ってきた。

 

 この、ボール用のやつ。

 

 チョキーン。

 

 もう二度とボールに空気は入れられないぜ。でもいい。俺は球技が苦手だから。

 

 これがノズルにピッタリ入る。一応サイズを測って買った。

 

 この小ささなら十分な勢いが期待できる。鉄製だから遊ぶごとにちゃんと拭かないと錆びそう。そこだけ注意が必要だ。もっといい何かが見つかったら差し替えよう。

 

 コック手前の水漏れ対策もする。せっかくなので、さっきの空気入れの風船用ノズルを使う。

 この先端をちょっとだけ切る。

 

 噴霧器からきているチューブの先端に入れる。チューブがちょっとだけ太くなり、中がミチミチになって水漏れを防ぐという算段だ。

 図で示すとこういうことなのだが、全然説明できてる気がしない。ここまでの途中でいくらか細かい説明を省いているので読んでる人も困惑しているだろう。なんだこのクソみたいな図は。いや、そんなに自分を責めるもんじゃない。よくやったよ俺は。俺にはこの図が伝えたいことが伝わっているよ。

 余談だがノズルを両方工作に使ってしまったので空気入れ本体が使い物にならなくなった。数回シュポシュポした後で処分した。

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