上を気にしながら失礼します。ライターの寺悠迅です。僕の身の上(物理)の話は後でするので、まず身の上(生い立ち)の話を聞いてください。

 

あれはそう、小学生の頃――ある日、体育館に行くと天井にくす玉がスタンバイしていました。

こんなもの小学生には劇薬です。誰かが結婚するんだとか表彰されるんだとか、あることないことで大盛り上がりします。

ボールをぶつけてかち割ろうとする悪童も勿論いました。猫に鰹節、盗人に蔵の番、クソガキにくす玉ですね。

 

とにかく、小学生の頃にくす玉でとても盛り上がった思い出があるのですが……不思議なことに、そのくす玉が割られたイベントは思い出せない

 

つまり、割るイベントは実は大して重要ではなく……

 


そういうワケで、自宅にくす玉をスタンバイさせました。これと一週間過ごします

 

くす玉の中身はこんな感じで友人に頼んで書いてもらいました。二つ返事どころか一つ返事です。怖。

なので、僕は当然中身を知らないし、親愛なる読者の皆さまも知る由はない

 

こういう趣旨となっております。よろしくお願いします。

 

一日目

すみません、キーボードを叩きながらで。ライターらしさが出るかと思いまして。

わたくし、兼業ながら腐ってもライター。それなりに記事の構成というものを考えています。くす玉の中身を友人ではなくオモコロ編集部の人間に書いてもらう手もありました。

いやらしい話、編集部の方に出演していただくとPV数が伸びます。そして読者の皆様もそっちの方が嬉しい。なんなら僕も編集部の人と会えて嬉しい。

 

Q. しかし、その考えは即座にボツにしました。何故か?

 


A.友人はマジで何を書いてくるか予想がつかないから

「オモコロ編集部だって腰を上げればゆびをふる、口を開けばパルプンテの集団じゃねえか」とのお声が聞こえてきます。仰る通り。

しかし、です。敬愛する編集部が繰り出す七色の巧技は、記事や動画、はたまたイベント等で浴びるほど見てきました。

故に、切られるカードの傾向がぼんやり予見できてしまうのです。

完全にランダムに見えても、試行回数により背景の乱数テーブルがうっすら解読(よ)める、みたいなコトです。大丈夫ですか? ゲームの喩えが多いですが、伝わってますか?

 

その点、友人Bは読者の皆様にとって未知の存在。そして、僕にとってもまあまあ行動が読めないヤツです。

ウン十年の付き合いがあるけど、こういうとき何をしてくるか全然わからん。

何の変哲もない祝い事を書いてくる可能性もあるし、本人の説明がないと意味わからん事を書いてくる可能性も全然ある。

しかし「祝い事を書いてくれ」という最低限のルールだけは絶対に守ってくれるし、即座に了承してくれる。そういう信頼の置けるヤツです。

どうだい。ソワソワしてくるだろう。

 

二日目

すみません、またしてもキーボードを叩きながらで。

くす玉の中身を書いてくれた友人――便宜上友人Bとしますが――友人Bについて、全く知らぬ存ぜぬでは想像も広がりませんよね。

一週間のあいだに情報を小出しにし、彼の輪郭を少しずつハッキリさせていきたいと思います。

人物像が明らかになるにつれ、くす玉の中身も予想しやすくなるかもしれません。

 

使える鍵盤の数が多ければ表現力も増すってモンよ。

 

友人Bは幼馴染であり、読者です。

書いたオモコロ記事が公開されたら、真っ先に報告します。感想をくれたりくれなかったりするけど、それくらいがまた丁度いいんですよね。

 


実物

また、僕は小学生の頃に漫画を描いていて、それの熱心な読者でもありました。顔を合わせるたび「はよ続き描け」とケツを蹴られてた気がする。比喩表現じゃなく。

今日まで続く「作ったものを見てもらえるって……嬉しい!」の、原体験ってここだったのかも。

 

そういえば、何だかんだでライターデビューして一年以上経つけど、まだ正面から祝ってもらったことがない。今回のくす玉で、こんな感じに祝ってくれるかもしれない。

 

三日目

もうね、私服のパターンがないから、こういう格好をするしかないんですよ。

 

別に何をクリエイトするわけでもないから、はんだも間違った持ち方しちゃうもんね。

 

クリエイトといえば、友人Bは幼馴染であり、優れたクリエイターです。

「クラスで一番絵が上手い」とかじゃなくて、コンクールで賞を獲りまくるタイプの絵の上手さの子っていませんでした?

いなかった? じゃあすみません。ウチの友人Bが賞を乱獲したばかりに。

 


漫画二作目(コピー)

前述の通り僕は小学生の頃に漫画を描いていまして。そういう時期に実力のある人間に褒めてもらうと、そりゃあもう自信が付くってもんです。

喩えるなら、SNSにアップした絵で神絵師からリプ貰えた、みたいな。急に俗っぽくなったな。この喩えは聞かなかったことにしてください。

少年期に自己肯定感の基礎工事を終えたのは幸いです。上モノが建った後に基礎工事に取り掛かって苦労する人も多いですからね。人生設計にも建築基準法があったらいいのにね。行政指導は入るから一応あるようなもんか。

 

友人Bはその後も実力を磨き、現役でデザインの仕事等をしています。じゃあ、もしかしたら自分の仕事のお祝いを書いてるのかも。

 

四日目

おはようございます。すみません、寝ぼけ眼で。昨日の今日で少々不安になることがありまして……

 

友人Bは幼馴染であり、ときに信用できない人間です。

まあ、その、基本的には信頼できるヤツなんですが、人間なのでアレな点もなくはない。

 

「大丈夫! 怖くないよ!」ってホラーを勧めてくるけど、怖くなかった試しがないとかね。

無警告でサムネイルにデカい虫が映ってる動画を共有するなよ。Falloutみてえなサイズのやつをよ。

あと主語がないメッセージを送ってくんな。いちいち聞き返すのも面倒だし、聞いても答えないパターンをやめろ。脳のギガ消費さすな。

三周遅れくらいのコラ画像をわざわざLINEで送らないでくれ。それでいて頻繁に「今月はギガ足りなくて」とかほざくな。ギガ消費すな。

笑いのツボに関して、年二回くらいのペースで「いつまで朝目新聞を引きずってるんだよ」と呆れることがある。

 

こういうのだったらマジで今後の友達付き合いを考えるぞ。

 

そうでなくとも「信用できなさ」×「クリエイティブさ」というスキルの掛け合わせは危険極まりなく、ゆくゆくは天下取り or 打首獄門の大博打の器。

くす玉の中身も何らかの配慮に欠けてるものを出してくる可能性が大いにある……

 

リアルに厄介なところでいうと、直近で音楽アーティスト関連のデザインの仕事をして、それの宣伝チックなお祝いをする……とか。

最近は景品表示法が変わって、ステルスのそういうのがマジで厳しくなったのを彼奴は知っているだろうか。

僕は別にいいけど、メディアで万が一そういう傷が付くのってマジでシャレにならんし。

……

 

 


 スペランカー40周年おめでとう!

2023年はAtari版スペランカーから数えて40周年の記念イヤーでした。

だからといってスペランカーの新作が出ているというワケでもないんですが、溢れるお祝いの気持ちで書いた記事もありますので、そちらの方もどうぞよろしくお願いしますね!

最弱の中の最強は誰だ!スペランカー強さランキング
https://omocoro.jp/kiji/393321/

 

広告記事で、関係ないものの宣伝は出来ない(たぶん)。

逆説的に、ここで唐突に無関係なもののアッピールをしておけば、広告記事を疑われることもない。しかも個人的な推し(スペランカー)の話もできる。辣腕だねえ。

 

……これで中身が「スペランカー40周年おめでとう!」だったらどうしよう。

 

五日目

室内の写真が続いて飽きてきた頃だろうと思い、秋頃に撮ったお外の写真でお送りします。

僕も外の空気を吸いました。澄み渡る空を見て、友を信じるべきだと思い直しました。

 

友人Bは幼馴染であり、トリックスターである。

突拍子もないことをする奴ではあるが、決して敵ではない。たぶん。

 

数年前、藤本タツキ先生の『ルックバック』が公開された時のことだ。

友人Bから「読んだ?」とLINEが届いた。僕もたまたま読了していたので、「圧倒されたわ」的な返信をしたためている途中、

「懐かしいなあ、俺もお前の漫画が面白かったから漫画描くのやめたわw」という二の矢が飛んできた。

当該作品を読んだ人間にしかわからない話で申し訳ないが、読んだ上でこの言葉は洒落にならない。裁判であれば故意の有無が争点になり、弁護側がだいぶ不利になる。

 

しかし、本人に悪気はない。思ったことを伝えただけに過ぎない。僕は今でも、心臓を氷柱が貫く感覚をありありと思い出せるのに。

 

ある種、友人Bは心のままに行動できる人間なので、あらゆる計算を抜きに、誰かの結婚祝いを書いてくるかもしれない。

そしてこの記事ごと新郎新婦に送るかもしれない。説明の手間など考えずに。

「友達がオモコロというWebメディアに寄稿しているライターで、ある日突然『何も言わずにくす玉の垂れ幕を書いてほしい』と頼んできたので、お二人へのお祝いのメッセージを仕込みました」

最低限、これくらいは説明する必要があると思う。僕なら、面倒だし説明されても意味わかんないからやらない。

でも、これしきのことやるヤツなんだよな……そこが恐ろしいんだよなアイツ……

 

六日目

ごきげんよう。

 

友人Bは幼馴染であり、神が振るサイコロである。

それは、あまりにも気ままに推量を凌駕する。

 

随筆0001

青年になってから、ある日のこと。「週刊少年誌の編集者に漫画を見てもらえる機会があるから、一緒に漫画描こうぜ! お前原作な!」と連絡が来た。期限は一ヶ月

詳細は伏せるが、どう聞いても普段から漫画を描いている漫画家志望の人間(原稿のストックがある人間)へ向けたイベントのようだ。

僕は、小学生の頃しか漫画を描いたことがなかった。

 

まずは「真剣に漫画を描いている人達に対して失礼だ」と説教した。すると「機会に恵まれたのに行動しない奴は馬鹿だ」と返す刀があった。

僕は「本当に絵を入れられるんだな?」と何度も念を押しながら作業し、結局、ネーム(漫画の設計図)が出来上がったのは期限の一週間前のことだった。

友人は「一週間もあればなんとかなる!」と言い残し、ネームを持って去っていった。

一週間後。案の定、漫画は完成しなかった。

(あまつさえ、完成しなかった漫画、つまり僕のネームをそのまま見せに行ったらしい)

 

随筆0002

昨年のことだ。「なんかさあ、漫才のネタ考えて!」と連絡が来た。期限は明後日

仲間内で催し物でもやるのかと思ったのだが、話を聞いたところ、ずばり、素人同士でコンビを組みM-1に出るという。

まず「真剣に漫才をしている人達に対して失礼だ」と説教した。次に「相方も相方だ。顔も知らねえヤツからネタ頂戴しようとすな。君らのキャラに合うネタかわからんだろ」と説教した。

 

翌日、僕はネタを送った。

後日、「相方の体調不良で出場を逃した」と連絡が来た。

 

気ままなサイコロはファンブルを恐れない。ファンブルを恐れるのは人間だ。

 

ここに詰まっているのは、本当に祝福なのか?

 

七日目

七日目だ。相変わらず、我が頭上に御座すくす玉は、そこに存在するだけで吉兆の使徒たるたたずまいだ。

 

今日、友人Bの秘めたる祝福がこの場に溢れる。

 

友人Bは幼馴染であり、僕の人生に多大なる影響を及ぼす者である。

 

僕は、オモコロ杯2022での入賞をきっかけにオモコロで記事を書かせてもらっている。

アナログ時計とデジタル時計の精神を入れ替えて能力を変質させる』という記事で入賞に至ったのだが……

 


何を隠そう、記事中に登場するRGBデジタル時計をコーディングしてくれたのが友人Bだ。

 

そして、僕と友人Bは一人のバーチャルYouTuber(紙)を創造したこともある。

バーチャルYouTuberが流行り始めた頃に「紙人形でバーチャル名乗る奴が出てくるだろうから、俺らで先に作ろうぜ!!!」と持ちかけたら、メチャクチャ乗り気でデザインしてくれた。

 

ここ、オモコロというメディアに掲載されている記事は、オチで全部ひっくり返るだとか、実は全部架空の存在だった、みたいなのを平気でやる。

ここまでのエピソードも全てフィクションで、読者に架空の友人像を想像させ、僕は暗く散らかった部屋でチョコバー片手にキヒキヒと笑う……という展開も、全くあり得ないパターンではない。

 

だが、全て事実だ。友人Bは実在するし、幼馴染だし、色々共作してきた。表に出したものも、そうでないものも。

 

僕は本当にくす玉の中身を知らない。オチと呼べるものではないのかもしれない。

この一週間、心をざわめかせたくす玉は割られ、その効力を失う。

 

ともよ、くす玉がスタンバイしているソワソワ感を知っているか

 

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