オモコロ杯2022 春
結果発表
まずは発表がめちゃくちゃ遅くなって申し訳ございません!!!!!!
去年の応募総数が443本だったのに、今年いきなり1024本と倍以上に投稿数が増えた結果、普通に倍以上に読む時間と審査の時間がかかってしまいました!!!!!
発表までが長くやきもきされた方、早く結果が知りたいと感じた方も多かったと思います。改めまして、オモコロ杯へのたくさんのご参加ありがとうございます。「なんでこんなに?」という驚きの気持ちと、「まだまだ世界にはWeb記事を書く人がこんなにいるんだ!」という嬉しい気持ち、さらには読んでも読んでも全く終わりが見えない絶望的な気持ち、全てがここにあった今回のオモコロ杯でした。嬉しい気持ちが当然多めです。
そしてオモコロ杯における「優勝」である今回のオモコロ大賞ですが、昨年に引き続き審査員の間でも意見が分かれ、オモコロ杯では恒例の「突き抜けた大賞」1つではなく、賞金額含めて分割した「優秀賞(2本)」を選ぶ形となりました。つまりは、同率優勝2名のダブル受賞。「そこは頑張って1つにせい」というご意見もあると思いますが、2本とも甲乙つけ難しの良作だったので、こうなった以上は1人が優勝するよりも2人が優勝した方が、世界の喜びが2倍になるかもしれないという持ち前のポジティブシンキングで、ダブル優勝という結論に辿り着かせていただきました。
優秀賞以下、個人賞(金賞)、銀賞、銅賞と表彰が続きます。賞として表彰できるのは1024本の中のほんの一部となってしまいますが、どれもこれも唯一無二の面白さがある記事ばかりでしたので、読者の皆様におかれましては、ぜひ銅賞の記事までじっくり楽しんでいただければと思います。長くなりましたが、オモコロ杯2022の結果を発表させていただきます!
オモコロ編集長原宿
優秀賞
もっともよかった2作品に与えられる本イベントの最高賞。
資料修復の技術をガッツリと学んだ後に、エロ本をあえて捨て、丁寧に手順を追って修復していくという見ごたえ知りごたえのある記事で、一人の人間の手によって成される偉大な仕事、そしてそのバックグラウンドに脈々と流れる人類の叡智に思いを馳せることができる感動的な内容でした。知恵を蓄えてきてくれた人たち、ありがとう。
本当の本当に理想を言えば、修復する本にさらなる思い入れや理由があると、さらに心を揺さぶられる作品になったと思いますが、細かい部分まで読みやすく調整された太鼓判を押せる良記事です!感服!(原宿)
写真の撮り方や余計なネタの挟み方も「慣れてる~!」と感嘆してしまうほどで、なんかもう逆に評価したくないなとヘソが曲がりそうになりました。レポート記事における一種の理想形というか、放った打撃の全てがHITしたような感覚です。悔しい。(恐山)
しいて言うなら、何日間も工程がある記事のときには、日をまたいだ際に洋服を少しでも変えるとより日数経過がわかりやすいかもしれません!今回でいうと、エアストリーム乾燥法のときと完成後の服装が同じ柄シャツ+白Tシャツだったので、流し見をした際に「これいつの写真だっけ?」となってしまうのが未然に防げたかもしれませんね!(僕もよくやっちゃうので人のこと言えないのですが…)
でも、全体的に非常に力量を感じさせる素晴らしい記事でした!最高!!!!!!!(ARuFa)
ただ、本をドブ漬けにする行為について自覚的である説明にはもっと筆を割いた方がいいと思いました。泥んこになる本に対しての眼差しなど、エロ本が企画の小道具以上の存在として描写されていたら、情緒面での企画の一貫性が損なわれず背骨の通った記事になったと思います。(かまど)
そのあまりの執拗さに、正直途中読み飛ばしてしまった箇所もあったのですが、子供を寝かしつけてからまたPCで遡って読み直している自分がいました。こんなことを言うのは野暮かもですが、僕の故郷、岐阜の実家近くのあぜ道には、グズングズンになったエロ本が今でも普通に落ちているので、機会があれば実際に落ちていたエロ本の復元も見てみたいです。(宮川)
金賞(個人賞)
優秀賞には一歩届かなかったけど太鼓判を押せる作品にお送りする賞です。
初見でプテラノドンに見せるには無理があるフォルム、「ドタマくらってる」というパッションを感じる表現、全てが嘘なのに全てが愛おしい。この世界観にもっと溺れたくなりました。間違いなく次世代を牽引する才能だと思います。
霊界に導く音色、「シンギングボウル」をお送りします。(原宿)
賞品:
ひたすらあぜ道を走りながらひたすら喋り続けるだけの動画ですが、過度な運動で足りなくなった酸素が脳からウソを剥がし取り、ほんの一瞬だけ「本当」に触れさせてくれるような、そんな爽快感があります。こんなアプローチ、瀉血療法みたいなもので方法論としては間違ってるのかもしれませんが、「ファンタ飲んでるときって一番時間がゆっくりに感じるもんな」この言葉を私は忘れない。
米を送ります。(恐山)
賞品:
ただ、ちょっとボリュームがあり過ぎて、倒しても倒しても死なないラスボスと戦っている感覚に陥ってしまったかもしれません!こういう記事は一貫した目的があってこそ読者に読み進めてもらえるので、突然のフィクションみたいのは止めたほうがいいかもですね! でもそんな熱量も大好きなので、個人賞とさせていただきました!
デカビタCをこよなく愛した華美たパンさんには、賞品として「ガツンゴールド」を210本プレゼントいたします!(ARuFa)
賞品:
画像と文章のリズムやテキストの豊かさ、必要な情報を過不足なく差し込む配慮の細かさなど、人に読んでもらうためのスキルが凄い!動画と比べても遜色ない情報処理の手際の良さに感服しました!
贅沢を言えば、記事終盤は白パズルという特殊な状況ではなく、日常の中にこの時計があるシーンを描いた方が成果物をより活かせた気がしますし、この方ならそれでも面白く書けただろうな〜と期待もしてしまいます。
とにかく、きっと高水準の記事を量産できる方なんだろうなと感じたので、「これからも記事を書いてください」の気持ちを込めて個人賞に選ばせていただきました!(かまど)
インテリア極振りの置き時計をお贈りしますので、ぜひ持て余してください。
賞品:
無茶苦茶さだけの作品はネット上に数多あれど、ロリサキュバスちゃんには狂気と人間味が共存していて、それがまたなんともイイ塩梅でした。自分だけの理想の世界を作ってそこで暮らすことって可能なんだ…漫画って凄いな…と、この作品を通じて改めて漫画の持つ可能性の凄まじさを思い知らされたのも事実。
これで人類は肉体を失っても大丈夫、そう思わせてくれるパワーに溢れた怪作です。茅乃舎だしパックをお送りさせていただきます。(宮川)
賞品:
銀賞
すごく面白かったけどもう一声!惜しい!という作品にお送りする賞です。
単にダーク要素があるという意味じゃなくて、カワイイ界の「外側」からいろいろ仕入れてきている感じがあるからではないでしょうか。これからも不純物混ざりまくりのカワイイ漫画を読みたい!(恐山)
街頭調査したら、7:3ぐらいで「ちいかわ」に負けるかもしれませんが、それでもあの「ちいかわ」に3筋も爪痕(切り傷)を残せたら大したものだと思います。お金の匂いがほどよく漂っているのもまた良くて、「ちにがみ」がケーブルをまとめるデスクトップフィギュアとしてガチャガチャで売られている未来が見えました。5回まわして3個ぐらい〝最後に登場するいかつい死神〟がカブって落胆→その日は一旦家に帰る、そんな未来でした。(宮川)
今大会、後悔のないように思いついたネタを詰め込んで相当なボリュームにしてくる記事も多かったのですが、比べてみるとやはりこのくらいの分量の記事が読みやすいのかなと感じます。行き先の「何もなさ、知らんさ」も、ちょうどよくて面白かったですね!(原宿)
企画も面白いですし、冗長になりがちな旅行記事をサクッと読みやすく整えているのも素晴らしいです!
このテの記事って、演者でカメラを回し合いながら撮影するとライブ感が失われがちなので、誰かカメラ担当に同行してもらうか、思い切ってご自身は撮影係に専念する構成にしてもよかったかもしれません。それでも十分面白い企画ではあるので!(かまど)
一方で、自分の住む街の景観や環境を守ろうと落書きと戦う人たちがいることも忘れてはいけないですが、文化をよりよく知ることで人が見る景色も変わってくるかもしれないと思うと、語ることを怖がってばかりもいられないと自分の編集意識に今一度目を向けたくなりました。やっぱり面白いんだよなこういう話!(原宿)
ただ、読後の後ろめたさが拭いきれていないのも事実で、僕自身「楽しみ方」という建付けにはかなり抵抗を覚えました。違法性に自覚的な記述はあるものの、正直建前としての機能しかないので、例えば落書きされている側の視点もフォローするなど、グラフィティ容認のワンサイドに見えない構成を意識なさると万人に受け容れられる記事になったんじゃないでしょうか。
そういった指摘は免れない記事だと思いますが、それでも取材記事としてのスキルはダントツでした!他の記事も読んでみたい!(かまど)
無の味噌汁が完成した時点でこのクジの『妙』が出てしまったので、味噌汁の2回目の挑戦はせずに別の料理に挑戦しつつ、「次の指示を2回する」みたいな特殊カードを入れるとさらに発展できたかもしれません!
ただ、もしこれが初めての記事執筆だとしたら、「初めからこういうことができるのはすごい!」ということを結構サラッとしていて凄いので、今後も記事を書き続けていってほしいです!(ARuFa)
様々な画角から写真を撮っていたり、料理以外にも展開を作っていたりと、見た目が単調にならないための気配りを素でこなしているのも凄い!お父様やご友人のコメントまで面白いので、会話を拾い上げる目も正確だな〜と感服しました!これでまだ高校生なんだ…。ちょっと凄すぎるかも。
細かいところではデコボコした部分もあるにはあるんですが、この方の根底にある「いい子っぽさ」が眩しくて、あまり気にならなかったかも。どうかこのまま健やかに大人になってください!(かまど)
ラストについては読み返すと伏線らしきものがちゃんとあることがわかるのですが、解釈が委ねられているというよりはやや唐突に感じたので、もう少し露骨に導線を敷いてもいいのかもと思いました。(恐山)
もしかしたら今のコロナの時代をイメージしたお話なのかなとも推測したのですが、違ってたら恥ずかしいのでそれは伏せておくとして、ラストの主人公の感情の部分がもうちょっと親切に描かれていると、自分のような鈍い人間には嬉しかったかもです。(宮川)
自分だけで完結させず、様々なスキルを持つ人を巻き込んでいく行動力もすごいですね。三国志好きとしては「政治力72ぐらいの感じ」という表現に巧さを感じました。会話文はもう少し読みやすくもできたかも。(原宿)
写真だけで終わらず肖像画を描いてもらうという展開も、記事に奥行きが出て満足度が非常に高かったです!
ただ、こういう『プロに委託する系の企画』は自分のやることがなくなってしまいがちなので、自分ができる工夫を前もって準備するなどして、自分の見せ場を用意しておくとより最高の記事なるかと思いました!(ARuFa)
銅賞
なんかわからんけど未来を感じるあなたへお送りする賞です。
大会総括
みんなみんな、面白すぎる……!!!!! いい記事が多すぎて、もはや総括と言っても、そのぐらいしか言うことがありません。考えてみたらオモコロ杯への応募作だけでメディアが2年ぐらい運営できるんじゃないかという規模になっているので、誰かが声を上げて「オモコロ2」を作れば、一瞬でオモコロの役割は終了するのかもしれません。こりゃ早いもの勝ちだ。子育てが落ち着いたらやってみようか、オモコロを打倒する存在、オモコロ2(ツー)。
そんな疾風怒濤のオモコロ杯2022で、応募作品1000通超えの中から優勝したオグラホロさん、シュゴウさんはもはや偉大すぎてギリシャ神話の神々にも近い存在だと思います。998人を倒すなんて、凄すぎて僕にはできません。本当におめでとうございます。まさに一騎当千、三國無双、猛将伝。
こうした公募企画で拝読できる作品には、あまり多くの時間や視線を経てきていない「丸くなさ」があり、そこが魅力の一つと思います。そのカドのとれてなさは、かつてのオモコロにも多くあったものかもしれず、でも今となってはその「カド」の中に自分の大切なものもあったのかもしれないと思うと、究極的には全ての段階で人はオモコロなのだと思います。いや、オモコロではないだろ。1000記事を読んだことで、ちょっと頭がおかしくなりかけているのかもしれませんが、言いたいことは「カド」があっても全然アリ、とにかく何かをひとつ書き上げたということがこの1000人にとってめちゃくちゃ凄いことであり、人が何かを書き上げるきっかけの一つにオモコロ杯がなれたということであるなら、それは自分にとっても望外の喜びであります。
そして書き手がいるということは、ひとえに読み手あってのものですから、同時に凄いのはオモコロをいつも読んでくれている人ではないか。それぞれにみんながいるこの状態、これがオモコロ。これがオモコロ杯。これ今、かなりやばい精神状態にあります。早く布団に入ろう。人はみな、布団に行き着く。オモコロ杯をご覧になっていただいた皆様、誠にありがとうございました!
オモコロ編集長原宿
審査員紹介
漫画家。エッセイ漫画「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」をはじめ、「宇宙戦艦ティラミス」「ワンオペJOKER」など漫画原作も多数手掛ける。好きな信号機は押しボタン式。
最終問題の題材のみ、少しネットミームというテーマからは外れるかな? と感じましたが、ライティングや撮影の奥深さを楽しめるきっかけになるコンテンツとして大いに知的好奇心を刺激されました。この企画の新しさは、どうにかしたらどうにかなっちゃうかもしれない!最高!(原宿)
「自分がすごく好きなことや興味あること、他人はそうでもない」という事実、しっかり向き合うのはけっこうしんどいし、興味ない側の感性に寄り添うこと自体難しいのですが、カジュアルさと情熱を両立する手腕が素直にすごかったです!(恐山)
見慣れたネットミームを違う角度から解説して、新たな発見を作っているのは素晴らしいです!ただ、オモコロの写真を解説されると本当に何も考えずに撮っているのがバレるので、それはご遠慮ください。(ARuFa)
専門性と共感性を兼ね揃えた企画はもちろん、丁寧な図解と抑制の効いたテキストで読解をフォローしていて素晴らしいです!読者の理解度を精緻に見積もった寄り添い方をなさっているのも素敵!
照明というほとんどの人にとっては縁遠いテーマにも関わらず、推進力を失わずに読み切れましたし、何より読者の「知らんし」を「ちょっと面白いかも」に変移させることって本当に凄いことだと思うので、相応の賞がふさわしいと思いました!(かまど)
かつて「スキージャ●プ・ペア」って流行りましたけど、自分はあのオシャレさになんとなく乗っかれなかったのですが、この記事も一瞬「それ系かな?」と身構えたものの、そんな警戒心は全く必要なく、素直に最後まで楽しめました。それはきっと、この記事の此処彼処に、読者を突き放さない筆者の人柄が滲み出ているからなのかもしれません。(宮川)