ついに、

 

ついに完成したぞー!

 

 

 

 

 

ハカセ、今度はなにが完成したの?

 

 

 まなぶくん

好奇心旺盛な男の子。みんなからは”まなぶくん”と呼ばれているが本名は誰も知らない。本人でさえも。

 

 

 

ふっふっふ

 

 

 はつめいハカセ

発明が得意な博士。学会から追放されることに憧れがあるがそもそも学会の入り方がよくわからないので困っている。

 

 

 

これが今度の新発明だ!

 

 

 

 

 

これはいったいどんな発明なの?

 

それについて説明する前に、まなぶくん、まず外に出てみようか!

 

うん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャアアアアアン!

 

 

 

なにうす汚え手で勝手に発明にさわってんだクソガキ!!!

 

うぐぅっ!

 

 

 

わたしの崇高な発明はそんじょそこらのガキがおいそれと手にとっていいもんじゃないんだよ

 

うう~、まさか『外に出てみよう』というのが『表に出ろ』という意味だったとは

 

でもハカセ、さすがに瓶でドタマはやりすぎだよ

 

相手によって態度を変えないのがわたしの良いところだよ

 

バーサクすぎるよ

 

 

 

でもねまなぶくん、実際この道具は使い方を間違えると大変なことになるんだ

 

そうだったんだね。それでこれはなんなの?

 

これは“クローン生成銃”!この銃はうったもののクローンをつくることができるのさ

 

えっクローンって同じ細胞をもったコピーみたいなののことだよね。そんなことができるの?

 

試しにこのペンをうってみよう

 

 

 

 

 

 

わあっ!本当にペンが増えた!

 

ふふふ、どうだすごいだろう。
しかもこの銃のすごいところはこれだけじゃあないんだ

 

 

 

今度はこの紙になにか文字を書いて

 

 

折りたたむ

 

 

そしてまたクローン生成銃で紙をうつ

 

 

 

 

 

クローンもたたまれた状態で出てきた!

 

その通り、生成されるクローンはうたれた時点での状態を100%完全に再現するんだ

 

だから折り目のつき方はもちろん、さっき紙に書いた文字も完全にコピーされてるはずだよ。開いてごらん

 

 

 

す、すごい!!

 

不愉快だけど道具のすごさがそれを上回ってる!

 

いやあ開発には苦労したよ。でもこれでついにリビングの扇風機を寝室にも置くことができるぞ

 

動機ショボっ、それなら扇風機をつくりなよ

 

 

 

ねえハカセ、頼みがあるんだけど・・・あした一日だけでいいからそのクローン生成銃、ちょっと貸してくれないかな?

 

 

 

は?やだよ。さっきも言ったけどこれは君のような子どもが扱っていいものじゃないんだよ

 

お願い!壊したりしないからさ!

 

ダメだね。コンビニでペットボトルじゃなくてストロー刺すタイプの容器に入ってるコーヒー飲料を躊躇せず買えるようになってから出直してきな

 

ハカセの中の大人像ってそんななの?

 

でもこれだけ頼んでダメなら仕方ないか。おとなしく諦めるよ・・・

 

 

 

・・・とでも思ったか!ヒェイッ!!

 

コイツをくらいなっ!

 

 

 

カカカッ!

 

 

 

なにぃ!?う、動けない!これは“影縫い”!!?

 

わるいねハカセ、動きを封じさせてもらったよ

 

くっ!外に出たことがあだになったか。まさかこんなガキが術を使ってくるとは

 

 

それじゃあこいつは借りてくよ。心配しなくてもあした用が済んだらちゃんと返すからさ

 

 

 

おいガキ、

 

 

 

絶対に後悔させてやるからな

 

こわっ

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

(はやく給食の時間にならないかな~!今日の給食にはぼくの大好きなプリンが出るんだ!)

 

(いつもなら余ったプリンはジャンケンで争奪戦になるけれど、ぼくにはクローン生成銃があるからわざわざジャンケンなんてしなくてもいくらでもプリンのおかわりができるのさ!)

 

他の連中が群がり醜く争うさまを見ながら食べるプリンはさぞ格別だろうなぁ!

 

 

 

よーしお前ら席につけー、授業始めるぞー

 

 

 

えー、前にも少し話し合ったが、クラスのみんなで保護していたあーちゃんをこれからどうするのか、みんなで議論して決めようと思う

 

前回の授業で話しあったときは『野生にかえす』、『これからもみんなで世話をする』、『マグレガーも腰をぬかす絶品のパイをつくる』という意見が出たが、とくに多かった『野生にかえす』と『世話を続ける』のどちらかから選ぼうと思う。先生は口を出さないから、みんなで意見を出し合って決めるんだぞ

 

 

やっぱりあーちゃんはもともと迷子になってここへきたんだから、元気になったら家族のいたところに帰してあげるのがいいと思うよ

 

でも私達だってもうあーちゃんの家族よ。それにもしかしたら前にいたところに住めなくなって逃げてきたのかもしれないじゃない

 

それに一度人間に育てられた動物はうまく野生にかえることができなくなるって聞いたことがあるよ

 

世話をし続けるとして本当にちゃんと全員が続けられるの?いまでさえちゃんとする人としない人で偏りがあるのに

 

 

 

(うーん、みんな白熱してるなあ。意見が却下された身としては静かに動向を見守ることしかできないや)

 

(難しい問題だし、どう決着したとしても可決されなかった側の人たちには不満がのこるだろうな)

 

(例えばどちらともの意見が実現できればいいのかもしれないけど、そんなことできっこないし・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

はあ・・・、今日はつかれたなあ

 

 

 

お~い!まなぶく~ん!

 

 

 

 

あっ!はつめいハカセ!動けるようになったんだね。
きいてよ、今日学校で

 

 

 

ガシャアアアアアン!

 

よくもやってくれたなこのクソガキ!!!

 

 

うぐぅっ!

 

お前・・・

 

 

 

殺すぞ!!

 

ひいぃ~、すでに二度もドタマをいかれてるから言葉に真実味がある

 

ごめんハカセ、やっぱりハカセの言ったとおりだったよ。ぼくにこの道具を正しく使うのは難しいみたい

 

おや、その様子だと学校でなにかしでかしたね。いったいどんなおイタをしたのかな

 

うん、実はクラスで保護してる動物がいて、それを野生にかえすのか世話し続けるのかみんなで議論してたんだ。ぼくはどうにかみんなが納得できる方法がないか考えてたんだけど、そのときクローン生成銃のことを思いだして

 

えっ君まさか

 

 

 

 

 

先生を増やしたんだ

 

は?なんで?

 

先生が二人になれば両方のグループにうまいことフォローをいれてくれて禍根が残りにくいかなと思ったんだよ

 

だけど先生、議論には口を出さないって決めてたからかな。いきなりもう一人の自分が現れてもオリジナルもクローンも二人とも一切動じずに沈黙を保ったままだったんだ

 

どっちも言葉を失ってたんじゃない?

 

しかも先生が増えたことで議論のテーマが『二人の先生をどうするか』に変わっちゃって、『オリジナルが存在する以上クローンの方は不要』『クローンといえど100%同じ自我をもつのであれば両者に実質的な差はなく、個として平等に扱わなければならない』ってそこでまたクラスで意見が割れちゃったんだ

 

なんか君のクラス妙に議論慣れしてんね

 

それで「先生のクローンが現れてからなんだかクラスに狂いが生じているな」と思ったから、バランスをとるためにぼく以外のクラス全員分のクローンもつくったんだ

 

そしたらみんなパニックになっちゃって自分自身のクローンと殴り合いの喧嘩を始めちゃってさ、

 

さすがに喧嘩は二人の先生がおさめたんだけど、問題はそのあとの給食の時間だよ。人数に対して給食の量が絶対的に足りなくて、全員で奪い合いになったせいでクローンをつくろうとする前に給食がなくなっちゃったんだ。だからいますごく腹ペコだし本命のプリンも食べれず仕舞いってわけ。トホホ

 

すげーなエゴが。全然トホホでオトせる話になってないし途中ミュウツーの逆襲みたいになってたよ

 

 

 

しかしうーむ、まなぶくん、それはかなりまずいことをしたよ。もしこのままクラスのみんながオリジナルとクローン、一緒に家に帰ったらどうなると思う?

 

地域で鏡コントが流行る?

 

嫌だろそんな地域

 

そうじゃなくてまず家族がパニックになるし、各所でそれが起きるわけだからパニックがパニックを呼んで最終的には国全体、いや世界全体を巻き込むほどのドえらいことになるよ

 

ええっ!そんな!ハカセ、どうしよう

 

 

え?どうするもなにも

 

 

 

 

この“クローン消去ボタン”を押せばクローンと、そのクローンを生んだオリジナルの個体からクローンに関する記憶が全て消去されるよ

 

 

 

はいポチっとな

 

 

さすがハカセ、そんなボタンもつくってたんだね!でもクローンが消えるなんてちょっとかわいそってえ?いま押した?軽すぎない?

 

こういうのは早い方がいいんだよ。時間がたてばたつほどそれぞれに差がうまれちゃうから、それはいずれ個性になって余計に消去しづらくなるからね

 

差が個性になる?ちょっと難しいな、どういう意味?

 

たとえば同じホームランボールでもプロ通算100本目のホームランボールと、ウンコの上で垂直に高くバウンドしてから同じウンコの上に着地したホームランボールでは価値が違うだろ

 

なんとなくわかったけどその例えなら普通のボールとホームランボールでよかったよ。ウンコの上で高くバウンドさせる意味がないよ

 

 

 

でもまあこれでクローン問題は解決ってことか。安心したよ

 

ハカセはクローンを消すのに抵抗とかないんだね

 

 

 

まあ、ドーナツの穴の部分も元々はドーナツだけど、穴になってもドーナツがドーナツであることになんの影響もないからね

 

うーん、なにいってるか全くわかんないけどやっぱりこういう頭脳系あたおかが身内に一人いると心強いなあ

 

 

 

それじゃあオツムのできが悪いガキもシメたことだし、帰って次の発明にとりかかろうかな

 

ハカセ、次はなにをつくるの?

 

 

ふだんよく朝の星座占いを見逃しちゃうから、いつでも観直せるようにタイムマシンをつくろうと思うんだ

 

だから動機がショボいって。それならレコーダーをつくりなよ

 

 

あとタイムマシンが完成したらまた貸してほしいんだけど・・・

 

やだよ。もしまた道具にさわったら牛車(ぎっしゃ)でひくぞ

 

こいつマジでやりかねないんだよな

 

 

 

 

おわり