現代の狩猟シーンが抱える悩みについて話しながらも、シカ角の探索はつづく…
足跡がありました!
シカの足跡だ。これは大きさからオスかな。俺たちの来る音に気が付いてとっさに逃げたんだろうね。そのときの脚力で地面がえぐられて、まだ土が湿っているからホントについさっきまでここにいたんだ。
すごい、猟師はそんなことまでわかるんだ。シカがさっきまでここにいたんだな~
まだ近くにいるかもしれないね。
おっ、フンだ。大きさからしてキツネあたりのフンかな。
キツネ! この毛だらけのやつがフンなんだ。
フンにシカの毛が多量に含まれている。シカを食べたんだね。もしかしたらこのあたりにシカの死体があるのかもしれない。
シカの死体が。
ンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワ
なんか遠くで大興奮してるやつがいるな
あっ!
骨!!
どうやらサブリナがシカの骨を見つけたようです! すごいぞサブリナ! かわいい!
これは後ろ足の関節の骨かな。まだ肉がついてるからけっこうあたらしそう。
ほえ~
骨だ。アホみたいな感想だけど、ホントに骨だ。
ざらざらしていて、軽い。プラスチックのつくりものじゃない。生き物はこんなに細かいパーツの組み合わせで立っている、ってのはやっぱり不思議だ。
ンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワ
今度はなんだ。
あ!!
頭蓋骨だ!!
すごい! 理科室で見た標本みたい!!
まだ若かったオスの骨みたいだね。ここが角が生えていた場所。
歯もかなりしっかり残っている
人間の構造にも同じことが言えるけど、シカの頭のなかにこうした頭蓋骨があるというのは不思議な感じがするな。まだどこか『そんなわけないだろ』、という気持ちがある。
ンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワ
確変入った?
あ!!
シカの角だ!!!!!!!
とうとう見つかったね!
落ちたての角には血がついてるんだけど、これは雨で血が落ちてるからそれより前に落ちたものだね。きっと一週間ぐらい前のものかな。
わ~ すげ~
持ってみると、かなりずっしり重い。武器の重さだ。真剣や拳銃を持った時の『こんなに重いの!!?』という感覚に近いかもしれない。肌ざわりはツルツルしてやさしいけど、これで突かれたらと思うとゾッとする。
シカの角は産まれてから一年ごとに1枝ずつ増えていって、最終的には4枝になる。これは4枝に分かれているからシカの角としては完成形のものになるね。
こうして実際に手に持つとどこか感動するものがあります!
ツアー中にちゃんとシカの角が見つかってガイドとしてもホッとしました。
これと『活力剤』を調合すると『いにしえの秘薬』ができますね。
そうだね。
お目当てのシカの角も見つかってホクホクですが、ツアーを通してシカ以外の動物の痕跡もたくさん見つかりました。
『エビフライ』だ。リスやムササビがマツボックリの種を狙ってかさを削るとこういう形の食痕が残る。
マツボックリがこんなふうになっちゃうんだ。子エビフライじゃん。
ちっせ~フンがありました。
これはきっとテンとかの小型動物のフンじゃないかな。
イノシシが地面をめくった跡だ。こうして広い範囲の地面をひっくり返してエサを探していく。
これは農作物をやられたら終わりですね。めちゃめちゃ広範囲の地面をめくっていってる。
これがイノシシの牙。
対峙したときの危険度でいえばイノシシはクマより怖い。クマは人の顔をひっかいてすぐ逃げるから、重症ぐらいで済む。だけどイノシシは太腿あたりを狙って牙で刺してくるから、山中で攻撃されると太腿の太い血管から出血して簡単に死ぬ。
こわすぎる。ゲームのイノシシは弱いのに。
モンハンのやりすぎ。
タヌキの溜めフンだ。黒っぽいところはぜんぶタヌキのフン。タヌキはこうして決まった場所でフンをする習性があるんだよ。
ここですね。タヌキは律儀だなあ。
これによって、このあたりにどんな食料があるかほかのタヌキとの情報交換をしてるらしい。
シカだけじゃなくていろいろな動物の痕跡を見ることができて楽しいな。山にはたくさんの動物がいて、それぞれがそれぞれの食料を食べて、フンをしてるんですね。あたりまえのことだけど。
そしてツアーの終盤、写真を載せることはできませんが、身体が白骨化しつつあるシカの死体に遭遇しました。
やっぱり死体があった。さっきのキツネのフンはこのシカの死体を食べたものかもしれない。
白骨化が進んでるけど、かなり肉も残っていて生きてたころの姿がわかりますね。どんどんほかの生き物に食べられていくんだな。
こうして死んだシカは他の生物のエサになって分解されていく。最初はテンやキツネなどの小型肉食獣、その次には野ネズミなどのげっ歯類、その次はナメクジや虫なんかに食べられていく。あっという間に分解されて3か月もすれば白骨化してしまう。
こうしてみると、やっぱり、顔の中には頭蓋骨があるんだなぁ。これまでに拾った骨とかも、ほんとに数か月前までは生きて歩いていたのかもしれないんですね。
そうだね。
生物って本来こういうサイクルの中で生きてるものなんですね。人間の社会に生きてるとあんまり実感できないけど。
死んだものは生きるものの糧になる。そうして、個ではなく全体を活かしていくんだ。
こうしてみると人間がいかに特殊な生き方をしているかがわかって不思議な気持ちになりますね。人間が住むところからすぐ近くの森でも、この何億年も続く”本来”のサイクルは切れ目なく回っている。それなのに人間はいのちを繋ぐ役割さえ放棄してしまった。ただ自ら作ったルールに囚われ苦しみながら生き、死んでいくだけ。
金銭、地位、承認欲求。この社会を構築するすべてが”虚”であると理解しました。
きょうのツアー代って領収書は必要?
領収書は”虚”ではないので要ります。
シカの角とたくさんの動物の骨が見つかり、無事ツアーは終了。
きょうは楽しかったです! こんなに骨が見つかるなんて驚きました。
やっぱり犬が多いといろいろなものが見つかるね。
また今度は他のツアーにも参加させてください。
今度は青木ヶ原樹海のツアーにでも行こうか。野外のツアーだし、感染症対策もしっかりやってるから安全に楽しめるよ。
ぜひ!
シカの角みつかりました。
生きる自然動物を眺めるツアーと同じくらい、自然動物の生きた”跡”に触れるこのツアーは生と向き合うことができたように思います。なによりたのしかった。
みんなもありがとう。犬もかわいいね。
記事中にも木の皮をシカに食べられた木がありましたが、山の草木を食べつくすシカは森林にもダメージを与えており、年間3千ヘクタールを超える森林が被害を受けています。
また農作物への食害も深刻で、農林水産省のデータでは令和元年度の農作物被害額は158億円。そのうちもっとも大きな被害額を上げているのがシカによる食害とされています。
その獣害への対策の一つとして、猟師という役割があります。
猟師という仕事に荒っぽい印象を持つ方もいるかもしれませんが、猟師は自然のサイクルに身を置き、生死を見つめる時間がふつうの人よりも長いです。野生動物に攻撃されて命を落とす猟師もいます。だからこそ、猟師は野生動物に銃口を向けるとき躊躇はしません。
都心に住む方々にはあまり身近に感じられる存在ではないと思いますが、あなたが口にする野菜や果物も、猟師の尽力によって守られたものかもしれません。猟師の活躍によって助かる人がいることを知っていただけたらうれしいです。
熾烈なじゃんけん大会の結果、シカの角はサブリナの手に。ガシガシすることでハミガキになるらしいです。いっぱいガシガシするんだぞ。
シカの角をガシガシできない非力な私は鹿肉カレーを購入しました。これなら毎夜の歯ぎしりで歯がすり減っている私でも口に入れられます。
みんなもジビエ食べてみてね~
おわり
取材協力:THE HIGHEST PEAK
www.the-highestpeak.com
〒401-0501 山梨県南都留郡山中湖村山中865-230
TEL090-5550-6966
今シーズンのシカ角採集ツアーは終わってしまいましたが、大森さんのガイドツアー会社THE HIGHEST PEAKでは青木ヶ原樹海探索や星空観察など楽しい野外ツアーをたくさんやっています!!
感染症対策もバッチリやってますので、どうかよろしくおねがいします!!
マジのマジ!!!