3.説明書を読もう。

 

パラパラとめくってみたところ、68ページもあった。

内容はざっくり4つのセクションに分かれている。

 ① 概要

 ② 使い方

 ③ テクニック

 ④ トラブルシューティングメンテナンス

書かれている全ての内容を紹介するわけにも行かないので、今回知りたいポイントを2つに絞ってみようと思う。

 

まずは何といってもこれである。

コマンドーのヒロイン・シンディはただの一般市民(客室乗務員)であり、ロケットランチャーはおろか銃器を扱った経験もほぼ無かったと思われる。しかし、彼女は説明書を読んだだけで、ロケットランチャーを使用できている。果たしてそんなことが可能なのだろうか? 確かめてみたい。

 

そしてこれだ。

調べてみたところ、このM202という型のロケットランチャーは、「コマンドー」以外にもいくつかのフィクション作品に登場していることが分かった。それらの映画やゲームのクリエイターたちは、製作時にこの68ページの説明書を読み込んでいるのだろうか? いや、そんなことは無いだろう。

そこで、今回はこの2作品をピックアップして、作中のロケットランチャーの使用方法が正しいかを検証してみる。

 

■『バイオハザード』(TVゲーム 1996年発売)

ホラーゲームの金字塔、バイオハザード。ロケットランチャーが登場するのはこのシーンだ。

ゲーム最終盤、最強の敵・スーパータイラントと対峙する主人公・クリス。苦戦する彼に、ヘリコプターで駆け付けた仲間のブラッドが「これを使え!」とロケットランチャーを上空から投下する。そのロケットランチャーでスーパータイラントと雌雄を決するというクライマックスである。

主人公のクリスは訓練された特殊部隊隊員ということもあり、正しい使い方ができていそうだが果たして……?

 

 

■『おそ松さん』 第2期 11話(テレビアニメ 2017年12月12日放送)

続いては赤塚不二夫原作の大人気コメディアニメである。ロケットランチャーが登場するのは、このシーンだ。

怒り狂ったチビ太から逃げる、主人公の六つ子たち。その過程でチョロ松と十四松が、降りしきる雨の中、追いすがるチビ太に向けロケットランチャーを発射する。

コメディ作品にツッコミを入れるのも無粋な気がするが、パッと見た印象、2人でロケットランチャーを構えるのは危険なように見える。子供が真似したら危ないので、しっかり確認していきたい。

 

では、以上を踏まえて説明書の中身を見ていく。

 

説明書の出処

まず表紙を見ると、この説明書はどういった用途で使われていたものかが読み取れる。

 

画像は表紙と、表紙の裏だ。

赤線を引いた部分を見ていただくと、「United States Army Infantry School」、つまり「アメリカ陸軍歩兵学校」と書かれているのがわかる。検索してみたところ、 ジョージア州フォート・ベニングに実在する施設のようだ。掲げるモットーは「“Follow Me”俺について来い」。かっこいい。

そしてどうやらこの説明書は、その学校で使われているロケットランチャーの使い方に関する教科書のようなものらしい。

表紙にはしっかり「JORDAN」と記名までしてある。かつて僕も学校で、教科書に記名していないと怒られたものだが、それは陸軍歩兵学校でも同じなようだ。

 

 

① 概要

続けて、最初のセクション「概要」部分を見ていこう。ここではロケットランチャーの性能などがまとめられている。

意訳を簡単にまとめてみたものが下の画像だ。我々はおそらく実際にロケットランチャーを使う機会はないと思うので、フレーバーテキストだと思って流し読みしてもらって問題ない。

素人目にはロケットランチャーと火炎放射器は全くの別物に思えるが、そこが比較対象になっているのが少し驚きである。食器洗浄機の説明書に「ルンバより手軽です」と書いてあったら、しばらくはその意味を考えこんでしまうだろう。

 

 

 

さらに射程距離に関する記述が続く。

 

興味深いのは、「20メートル以内のターゲットに撃つのは危険」という記述である。

 

ここで、フィクション作品内に登場するロケットランチャーを振り返ってみよう。

 

クリスの身長が180cmほど、スーパータイラントが250cmほどと考えると、これは近すぎる。10メートルも離れていないように見える。

もちろんこれはゲームなので、実際にプレーするときは自分で距離を取ることが可能だ。クリスの安全を思うなら、しっかり距離を取ってロケットランチャーを撃とう。

 

反対におそ松さんはしっかりと距離を取っているように見える。このカットを見る限りだが、発射点からチビ太までの距離は20メートル以上ありそうだ。

意外なことに、『バイオハザード』より『おそ松さん』の方が安全に配慮されていることが分かった。

 

 

 

またこの項目内に、重さの表記があった。いわく、

なかなかの重量だ。

ちょうど自宅の隅に重量可変式のダンベルが飾ってあったので、12㎏のダンベルを担いでみた。

重っ。

僕がめちゃくちゃ非力ということもあるが、なかなかの重量である。これを軽々と扱っていたシンディはすごい。

シンディは客室乗務員(CA)だ。思えば客室乗務員は、乗客の荷物を頭上の棚に乗せたり降ろしたりなどしているため、意外と力持ちなのかもしれない。

 

 

 

② 使い方

そしていよいよ、ロケットランチャーの発射方法である。該当のページを見てみると……

長い。

こんにゃくの製造工程ぐらい複雑な手順を踏んでいる。詳しく見ていくととんでもなく長い記事になってしまうので、要点だけをまとめてみよう。

 


 

『コマンドー』のシンディや『バイオハザード』のクリスがこれだけの手順を踏んでいたとは到底思えない。

もしリアル路線を追求するのであれば、『バイオハザード』なら「味方がロケットランチャーの発射準備を整えるまで1分間耐えろ!」のようなミッションを追加するのがいいかもしれない。

 

 

 

 

さらにこの章に、安全に関する注意書きもされていたので紹介しよう。

 

 

 

いわく、発射するロケットランチャーの後ろに立つのは非常に危険だということらしい。皆さんもロケットランチャーとゴルゴ13の背後は取らないよう気を付けていただきたい。

 

ここでもう一度、『おそ松さん』のシーンを見てみよう。

 

発射するチョロ松の真横でロケットランチャーを支える十四松。一見危険そうなこの場面だが、実際にはロケットランチャーの真横こそが最も安全な場所だということが分かった。ただのギャグシーンに思えるが、ここには”正しさ”が凝縮されているのだ。

 

 

 

続けて、ロケットランチャーを撃つ際のテクニックを紹介しよう。

 

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