―都内某会議室
「本日みなさんにお集まり頂いたのは他でもありません」
「Instagramを利用したマーケティング戦力を考えよ、と本部からの通達があったからです」
「むむむ…」
「はぁ…、インス? タグラム?……ですか?」
「はぁ~、なんですかなこれは…。若い女性がパンケーキの写真を並べたり、コーヒーの写真を撮ったり、私ども旧世代の人間では理解が追いつきませんなぁ…」
「やはりお二人ともご存じないですか……」
「いえ、実は私、前々からInstagramには興味がありまして…」
「なんと…! では既にInstagramをやられていると?」
「それができていないのです…。何の変わり映えもない生活…。一体何をアップすればいいものか…」
「ははは! それはそうですな! 原さんがパンケーキの写真を上げてもただの甘党のおじさんですな!」
「はは…、ただの甘党のおじさん、ですか……」
「くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「ええええっ?!」
「は、原さん…?」
「し、失礼しました! 今はギャップがウケる多様性の時代! おじさんがInstagramで人気者になる日もきっと遠くは…」
「貴様に何がわかるっ!?」
「ひいっ!」
「は、原さん、落ち着いてください…! おじさんインスタグラマー、決して悪くはないと本心から…」
「貴様も黙れ!!!」
「ひっ!」
「私はねえ…! 私は……」
「女の子になってInstagramがしたいんだっ!!!!」
「!!」
「!?」
「女の子になってパンケーキ写真をアップしたい! ラテを撮りたい! 空も撮りたい! 新しいネイルをアップして自慢したい! 何かの影がちょうどハートマークみたいな形になってるところを撮りたい! 明らかに男と行ってるだろという店の料理写真を上げたい!」
「そういう…素敵な…女子のInstagramがやりたいんだ~~~~~~!!」
「ううううう………」
「ご安心を。私もあなたと同じ志を持つ者です」
「あいや、先ほどは大変失礼しました。女性としてInstagramを…。とても興味深い話ですなぁ…」
「それでは改めて、Instagram女子になるためにインスタ映えというものを検討していきましょう」
「ひとまず『自然』というものはテーマの1つに入るかなとは思うのですが」
「異議なし。真のインスタ映えを目指すならあまりごちゃごちゃした感じの写真は嫌ですな。スッキリとシンプルでそれでいて映えていてほしい、もちろんこれはあくまで個人的な願いに他なりませんが」
「勉強になります」
~30分後~
「――というわけで、最もインスタ映えするスポットは離島ではないかと」
「この条件を全て満たすとしたら、海だけじゃなく自然も動物も山もある、沖縄の離島『伊江島』で決まりですな」
「勉強になります」
「それでは女子3人の伊江島旅ということで、それぞれなりたい女子を決めていきたいと思います。原さん、何かご意見ありますでしょうか?」
「ほの香」
「?」
「佐伯ほの香」
「誰?」
「今後、私を呼ぶ時はほの香と呼んで頂きたい」
「……ほの香さん?」
「はいっ!」
~30分後~
「――つまり、私はマクロビ系女子で、養蜂家と結婚するのが夢なのです。ご理解頂きたく」
「なるほどなるほど、だいぶ固まってきましたね」
「この調子で我々のプロフィールも決めていきましょう」
~2時間後~
(※クリックで大きい画像が表示されます)
「できましたなぁ」
「ええ、やりきりましたな」
「大変結構かと。では、参りましょうか」