ごあいさつ

ライターの彩雲と申します。僕は尖ってるので今までオモコロではほぼ特集の枠でしか記事を書いてこなかったのですが、この度ブロス編集部からお声がけいただき、こちらでも記事を書かせてもらうことになりました。よろしくお願いします。

とはいえ僕なんて趣味もなければおいしいグルメも便利なガジェットも知らず、ただもう漠然とそこに存在しているだけの人間なのでブロスで書けることなんかあるだろうかと思っていたところ、編集部から「行ったことのない飲食チェーン店に行ってみるのはどうか」とネタをいただきまして、これ幸いとその記事案を実行することにしました。というわけで今回、僕が訪れる行ったことのないチェーン店は……

 

そう、すかいらーく系列の和食ファミレスチェーン「藍屋」です。ぱっと思いつくファミレスには大概行ったことのある僕ですが、そういえば藍屋だけは行ったことがありませんでした。

近所に店舗がないというのもありますが、そもそも「ファミレスで和食を食べる」ということ自体あまりピンとこないんですよね。ファミレスはハンバーグやクラブハウスサンドをドリンクバーのコーラで流し込むための場所だと思っているからです。そしてデザートにはコーンフレークとゼリーでかさ増しされたパフェを食べて、レジ横のおもちゃ売り場でスーパーソーダガムを買って帰るのがファミレスに行く甲斐というものじゃないですか。そういう場所で「だし」とか「素材本来の味」みたいな話をされても反応に困ってしまいます。

しかし、ファミレスのようなラフな空間で和食をたしなむという面白味も存在するのでしょう。それを知るためにもまずは藍屋に行ってみて、ゆくゆくは他のファミレスでも「銀鮭御膳」みたいなメニューを躊躇せず注文できるような悟りの境地に達せられたらと思います。

 

それでは、藍屋にレッツゴー!

 

※上の「藍屋待たれい!」の画像ですが、やっぱり顔は白塗りしていたほうが面白かったでしょうか? ちゃんと白塗りすることも考えたのですが、手元に白粉の類がなく、この画像1枚のためにわざわざ買うのもなと思って結局素顔のまま撮影してしまいました。正味、白塗りしていようがいまいが記事の内容には影響しないと思いますが、こういうちょっとした妥協に僕が大成しない理由が表れている気がします。じゃあ白塗りすればよかっただろと思われるでしょうか。あるいは実際に白塗りしなくても、画像を加工して顔を白くすればいいではないかと。そう言われたら、僕は愛想笑いを浮かべることしかできません。その笑顔の醜いこと。あなたにも見せてやりたいですよ。きっとあなたは、こんな風に笑う人間がいるなんて想像したことすらないでしょうね。

 

藍屋に到着!

というわけで「藍屋 浜田山店」にやって来ました。なんと「むさしの森珈琲」が1階にあるではないですか。でも僕はむさしの森珈琲にも行ったことがないので、この状況に対して何と言ったらいいのかわかりません。むさしの森珈琲に行ったことがあれば、何か言えたのに……。

ちなみにこの店舗は別に全然最寄りではないのですが、浜田山というと僕が行こうと思って結局行かなかった高校がある感慨深い町なので、せっかくだしここの藍屋に来てみることにしました。

その高校には確か出願もしていたはずなのですが、受験直前に急に全部が面倒臭くなって出願を取り下げ、先にすべり止めで受けて合格をもらっていた私立高校に進学したというのが僕の高校受験の思い出です。今思うとなぜそんな突然スイッチが切れてしまったのかわかりませんが、ティーンエイジャーは不安定なものですからそれくらいのことはありますよね。

 

僕の受験エピソードはおいといて、早速藍屋に入店……

 

え!?!?

 

どういうこと?!??!?

 

何か間違った??!?!??!!?

 

すみません、ガストやジョナサンに行く時と同じテンションで入店したらこの光景が広がっていたので取り乱してしまいました。藍屋ってけっこう、マジなんですね。僕は人生経験が浅いものですから、こういう建物の造りを見ても「〇〇みたい」と例えることもできないんですよ。料亭、居酒屋、小料理屋……それっぽい単語は思い浮かびますが、自信を持って言い切ることができない。入っただけで自分の未熟さと向き合わされるとは。藍屋、恐るべしです。

 

あれよあれよという間に掘りごたつ席に通されてしまいました。まるで状況が飲み込めていませんが、テーブルの上に並べられたメニュー類は確かにファミレスのそれです。ちょうど平日のお昼時に来ていますし、お得なランチメニューでも頼むことにしましょう。

 

そう思ってランチメニューを開いたところ、1ページ目の1番上に「お昼の彩り弁当」なる1800円のメニューが掲載されていて度肝を抜かれました。店内の雰囲気から察してはいましたが、藍屋は一般的なファミレスと比べてお高めの価格設定のようです。

 

 

 

メニューはうどん・そば類や定食系、鍋物など和食と聞いて思い浮かべる料理を一通り網羅している印象。だいたいのメニューは1000円超えなので、普通のファミレスのつもりで行くと歯を食いしばることになるかもしれません。値段のぶん質も良いのだとは思いますが、申し訳ないけれど心底「記事の撮影で来て良かった」と思いました。

 

特に驚いたのは、メニューの中に握り寿司があること。まさかファミレスで握り寿司を食べられるとは。しかもこの「さざんか」なんて寿司と天ぷらの盛り合わせですよ。今までの人生で日本から一歩も出たことがないのに「日本に来た」と思ってしまいました。

 

このようにさまざまな魅力的なメニューがありますが、僕が注文することにしたのはこちらの「上天丼ランチ」。これを記事にするということを考えるともっとやりようはあっただろと言いたくなるようなチョイスですが、普通に天丼が食べたかったので普通に天丼を頼んでしまいました。

 

掘りこたつの下は、畳になっている……

 

では注文が届くまでしばし待ちましょう。初めは少し焦ってしまいましたが、やっぱり外食をするというのは嬉しいことですね。自分には普通の食欲とは別に、「外食欲」とでも言うべき欲求があるような気がします。空腹を満たすとかおいしいものを食べたいというのとは別に、純粋に「外食をする」こと自体に快楽を感じているというか。実際僕は普段、家で昼飯を食べてお腹は減っていないのに、15時くらいに近所の吉野家とかドトールコーヒーにふらっと入ってしまうことがあります。こういうのはまさに「外食欲」に操られての行動でしょう。

誰しも外食となると多少はテンションが上がるものかもしれませんが、それにしても僕の外食に対する執着は人より根深いもののように思えます。なぜこうなってしまったのでしょう。小さい頃住んでいた家の近所にロイヤルホストがあり、よく連れて行ってもらっていたからでしょうか。人生の最初期にいきなりロイヤルホストという蜜の味を覚えたせいで、「外食=無条件に素晴らしいもの」という刷り込みがなされてしまったのかもしれません。余談ですが当時住んでいた家の近所にはロイヤルホストのほかにミニストップもあり、今思うとなんて恵まれた環境だったんだと我ながら驚いてしまいます。(でも家自体はめちゃくちゃ狭かったし、空き巣にも入られた)

 

追憶にふけっていると上天丼ランチがやって来ました。天丼の具は海老2本にきす、ホタテ、かぼちゃ、れんこん、オクラという豪華版。付け合わせは味噌汁とサラダ、おから、香の物です。お膳の横にある黄緑色の冊子のようなものは伝票です。藍屋ともなるとあの透明な竹みたいなのは使わないのですね。

 

いきなり天丼にいくのはなんかダサい気がしたのでまずは香の物に箸をつけてみると、これが思わぬ美味! なんなら香の物単体でも全然ご飯が進みそうなポテンシャルを感じました。その後も小鉢から先に味見していったところ、味噌汁は具のあおさが面白く、サラダとおからも特筆すべき点こそないもののおいしかったです。

 

そして主役の天丼は、まさに「和食屋さん」といった感じの上品な味付け。満足感はありつつも、たっぷりの具材を胃もたれせずに楽しめそうな軽やかな味わいです。中でもおいしかったのはホタテ天。肉厚でみずみずしいホタテに甘辛いタレがしみていてホント最高でした。ただ僕はホタテ天を食べるの自体が初めてだったので、藍屋のホタテ天が特別に優れているのか、それともホタテ天とは全部こういうものなのかの判断はつきません。

 

あっという間に完食してしまいました。普段はこんなことしませんが、藍屋の空気に呑まれて使用後の割り箸を袋にしっかり戻しています。でも僕はそもそも箸やペンの持ち方がおかしい(『善悪の屑』の園田と同じで薬指にタコができる)のでここだけちゃんとしてもあまり意味はないかもしれませんが……。

 

食後にはデザートとして「豆かんてん」も注文しちゃいました。スイーツメニューに「豆かんてん」を用意してるの、かなり気が利いてませんか? ちょっとデザートが欲しいけど、そこまでがっつりとは食べたくないという時の欲求を見事に満たしてくれます。

 

食事を終え、改めて店内を見回してみます。ここの藍屋、今までに行ったファミレスの中でもかなり居心地が良いほうかもしれません。混み合ってはいないながらも適度に人がいるし(もちろん時間帯にもよるでしょうけど)、店員さんの距離感もちょうどいいです。読書や作業なんかもはかどりそう。読書や作業のために藍屋を使う人がいたら凄いですけど。

「もし浜田山の高校に通ってたら、学校帰りに藍屋に寄ることもあったのかな」とも一瞬思いましたが、価格的にも雰囲気的にも藍屋は学生が気軽に立ち寄るような店ではないですね。いやでも、一度くらいは帰り道に藍屋に寄る世界線もあり得たのでしょうか。普段はみんな1階のむさしの森珈琲にたまってるんだけど、たまには上の藍屋にも行ってみようという話になり、いざ入ってみたら今日の僕みたいに雰囲気や値段にびびって、ジュースを1杯だけ注文してそそくさ退店し、駅までの道すがら「藍屋やばかったなー」「ファミレスなのに高くね?」などと言い合う……そんな高校生活もあったのかもしれません。無いか。僕は高校生の時誇張ではなく友達が0人だったので、通う学校が違っていたところでそんな青春を過ごせていたとは思えません。そう考えると学校なんて別にどこに行っても同じような気がしてきますね。そうか!?!?

 

そろそろ帰りましょうか。お会計はPayPayが使えて便利でした。

 

終わりに

というわけで、今回は僕が初めて「藍屋」を利用する様子をお届けしました。一般的なファミレスのつもりで行くとけっこう驚くこともあるかもしれませんが、その雰囲気も込みで一度体験してみるのもいいのではないでしょうか。

 

せっかく浜田山まで来たことですし、最後に僕が通っていたかもしれない高校を一目見ておきましょう。

 

ここが僕のかつての志望校です。この並木道、ぼんやりだけど見覚えあるな〜。

 

え? ちょっと待って……

 

文芸部が全国大会に出場してるじゃん!!!俺とどっちが面白いか勝負する!?!!?!???!!!?