俺の名はナ月。好きな本の紹介がしたいという欲望でダークサイドに堕ちてしまった。好きな本の紹介するのは楽しいからな。友達と遊ぶスマブラくらい楽しい。

 一口に本と言っても色々ある。絵本からエロ本まで、なにか書いた紙が綴じてあったら本だしな。
 みんなはどんな本が好きだろうか。当てよう。サブカル本だ、オモコロを読んでいる層はエログロナンセンスがギッチギチのサブカル本が好きに違いない。俺と同じだ。違ったらごめん。

 本棚から何冊かサブカルっぽい本を紹介させてくれ。なんで「っぽい本」などと言っているかというと、サブカル本の定義が曖昧だから「これサブカル本じゃなくない?」などと言われたら悲しくて塞ぎ込んでしまうから。

 オカルトやエログロナンセンスみたいなのがドバドバ出てくるので苦手な人は引き返して清らかな記事を読みにいってね。

『世界の幽霊出現録』

 タイトル通り、世界中の「幽霊が出たとされる話」をドサドサと65話も収録している本。

 人間のインチキが疑われるような怪しい話から、原因不明でそれこそ霊の仕業とでも言わなければ納得できないような不思議な話まで。古今東西様々な幽霊話が読める。幽霊、出過ぎだ。
 幽霊話とはいえ人を怖がらせるための怪談ではなく、あくまでも「実際にあった出来事のレポート」という形式で淡々と書かれているのが好奇心をグリグリ刺激されてかなり良い。

『スーパーナチュラル・ウォー』

 化学兵器などがバリバリ使われ始めた近代的な戦争である第一次世界大戦中、オカルトはどんな存在だったのか。みたいな本。
「俺は戦場で超自然的な何かに救われたんだ」みたいな兵士の体験をまとめたりしているが、「超自然現象はあります!」という本ではなく、あくまでも「そういう体験をしたと言っている人がいっぱいいるんだよね」という本。

 他にも、占いが規制されるレベルで流行りすぎてヤバかった話や、兵士が戦場に持ち込んだお守りについての調査がめちゃめちゃ面白かった。
 ポケットサイズの聖書が大流行りしたが、読むために買った人はほとんどいなかった話とか。ついには防弾聖書が売られていた話とか。

「この科学の時代にオカルトなんてくだらないぜ」と思われるかもしれない。だがもしも自分が戦場に送られる事になったら、お守りを何も持って行かないかどうか。そう考えてみると、オカルトもバカにできないかもしれない。

『闇に魅入られた科学者たち 人体実験は何を生んだのか』

 NHKの番組「フランケンシュタインの誘惑」の書籍版。歴史上実際に行われた人体実験について書かれている本。有名なロボトミー手術やスタンフォード監獄実験、旧東ドイツの国家ぐるみのドーピング事件など。ここを読んでるみんなはそういう話が好きに違いない。

 本書の人体実験はどれも現在の倫理観では許されないことだ。しかし人体実験をしている当事者は、実験中は基本的に世のためや国のためにほぼ100%よかれと思ってやっているんだな〜というのが面白いところ。後の世でマッドサイエンティストだと言われている人ってほとんどそういう人なのかもしれない。

 逆に今の科学だと当たり前のように行われていることも、数十年後にはどういう扱いになっていることか。本書を読んでいるとそんなことを考えてしまう。未来人に「ええ〜!? 昔の人は米に魚を乗せて食べていたんですか〜!? ありえね〜!! 非人道的〜!!」とか言われているかもしれない。

『デス・パフォーマンス』

 医学、精神医学の専門誌からめちゃめちゃ特異な事例だけを抜き出して紹介してある本。
・第1章 自慰死
・第2章 頭蓋貫通
・第3章 自己去勢と四肢切断愛好
・第4章 サイキ・アウト
 という目次からどういう本なのか察してほしい。スーパー悪趣味ではあるが、こういう話が好きな人もここにはいることだろう。

 全裸で愛車のフォルクスワーゲンに引きずられながら「フォルクスワーゲン全裸引きずられオナニー」をしていたら、自分とフォルクスワーゲンを繋いでいる鎖がホイールに絡まって巻き取られて死んでしまった人の話が凄すぎて忘れられない。

『変態性慾ノ心理』

 19世紀の精神医学者が集めた、性欲がおかしくなってしまった人のカルテ集。一冊読み終わる頃にはほとんど全てのエロがノーマルに見えるようになってしまう。一つここに載せてもギリギリよさそうなのを引用して紹介する。

ウィーン在住の男

ウィーン在住の男は娼婦の顔に石鹸の泡をたて、それから髭を剃るように剃刀で泡を取りのぞいた。顔に傷をつけたりはしなかったが、ひどく興奮して射精した。

クラフト=エビング (2002) 変態性慾ノ心理 原書房 P88

 こういうのがめちゃめちゃ掲載されている。すごい。

 19世紀と比べれば「性の嗜好って人それぞれだからな」という理解が深まっている現代だが、ここまで人それぞれだとは思わなかった。性欲って奥深い。

『描かれた病』『描かれた手術』

 まだカラー写真がない時代に描かれた医学書の挿絵集。めちゃめちゃ分厚いが、ほとんど絵なので絵本のようにサクサク読める。超面白い。あと絵が上手い。

 特に『描かれた手術』の方は時代もあいまって現代に比べてやや強引な医療器具がいっぱい出てきて、読んでいるだけで痛くなる。尿道に長い杭みたいなのを差し込んでハンマーでバシバシ叩く結石治療の図が怖すぎる。

 歯科医療バージョンの『描かれた歯痛』という本もある。欲しい。

『異形再生』

 今回紹介する本の中では唯一のフィクション。誰もが一度は「人魚とかペガサスとかケルベロスとか、神話や伝説の生き物って骨格とか筋肉とかどうなってるんだろうね」というのを考えたことがあると思う。そういう本。実写リトルマーメイドに人魚の白骨死体が出てきた時真っ先に本書を思い出した。

 本書は2章立てになっている。前半は、絶滅した伝説の生き物に狂った科学者が自分の手で伝説の生き物を作り出そうとする小説「スペンサー・ブラック博士の生涯」
「ハルピュイアの血を引く人間に羽を縫い付けたら体の中で眠っているハルピュイアの遺伝子が目覚めて羽が使えるようになるんじゃねえの」みたいな強引なやり口で、ややグロくて超面白い。
 後半はそのブラック博士が残したという設定の「絶滅動物図録」になっている。こちらもめちゃめちゃ面白い。

 ミノタウロスは、じつに悲しい生き物だ。二種類の動物の短所だけを受け継いでおり、優れた能力は受け継いでいない。

エリック・ハズペス (2014) 異形再生 原書房 P122

 本書で一番好きな一文。言われるまで完全に気が付かなかった。ミノタウロスより100%牛か100%人のが強いわ。

読もう

 中学生みたいだと言われるかもしれないが、こういう本が好きなんだ俺は。気になったものがあったらぜひ読んでみてほしい。絶版のやつでもインターネットや古本屋を執拗に探せば見つかるかもしれない。

 あと俺が好きそうな本があったら教えてほしい。