ここは香川県の小豆島(しょうどしま)国際ホテル。

とある部屋の前にいる。何の変哲もないドア、これからこのドアを開けたいと思う。

 

 

 

あ……!

 

 

 

なんか見えた。気のせいだろうか。今度は勢いよく開けてみよう。

 

 

 

あ!!

 

 

 

この空間は一体……?!

 

 

ようこそ、ヤドンのお宿へ

 

すみません、もったいぶってしまって。もう本当にうれしくて。

というわけで、ヤドンに占領された客室こと「ヤドンのお宿」に来た。

 

 

すでにご存知かもしれないが、「ヤドン」について説明しておきたい。

ヤドンとはポケットモンスターに登場するモンスターである。

いつも ボーッとしていて なにを かんがえているか わからない。しっぽで エサを つるのが とくい。(『ポケットモンスター 赤・緑』より)

 

実を言うと私はポケモンをよく知らない。子どもの頃にポケモンブームに乗らないまま大人になってしまった。なのでヤドンのことも最近まで知らなかった。

ところが、先日友人から送られてきたヤドンのLINEスタンプに心を動かされたのだ。

ずんぐりとした体つき、なにを考えているのか分からない表情……なんだこの生き物、気になる。

それからアニメを見たり、ヤドンの公式サイト「ヤドンパラダイス」を眺めているうちに、ヤドンの魅力にどんどんのめり込んでいった。

 

この背景がキラキラのヤドンで私の好きが限界突破してしまった。

私、もっとヤドンのことを知りたい。ヤドンが何を考えてるのか分かりたい。

そんな時に香川県にヤドンのお宿があると知り、これは是非泊まらないといけない! と興奮しながらやって来たわけだ。

 

さて、前置きが長くなったが、お待ちかねのヤドンのお宿をじっくり見ていきたいと思う。

 

まずは一番賑やかなベッドまわりだ。惜しげもなくヤドンまみれだ。うれしい。ここで寝ころべば私もヤドンの群れに仲間入りできるだろうか。

ヤドンは水辺に住んでいるので、壁に砂浜が描かれている。よく見ると手前に大きいヤドンを、奥へいくほど小さいヤドンを配置して、砂浜の奥行きを演出しているのもいい。

 

 

客室で一番目立つ壁には、小島の上でくつろぐヤドン。ちょっと想像してみたい。仮にこのヤドンが乗っている島が現在地の小豆島だとすると、小豆島の面積は153K㎡なのでもう絶望的なサイズのヤドンになるわけだが、どういうわけだか可愛い。

顔と態度を見てほしい。愛らしさの化け物だ。たとえ絶望的なサイズだとしてもこちらは全てを受け入れてしまうしかないのだ。

 

 

クローゼットにもヤドン。この部屋にはヤドンがいないスペースなどない。

もちろんクローゼットの中にも……

 

知らないやつがいた。

一緒に来てくれた友人に聞いたところ、これはヤドンに変身したメタモンというポケモンとのことだ。

クローゼットを開けないと気づけないところがいい。なんて粋な隠し要素なのか。

 

 

さり気なく飾ってある小物からも目が離せない。こちらは首振りヤドンだ。香川県の伝統工芸品「張子の虎」をヤドンバージョンで作ったものらしい。

手作りなので一体ずつ顔の趣きが違う。手前のヤドンは幼くて、奥のヤドンはおじさんに見えるから不思議だ。

 

ユラユラユラ……

あどけない顔で首を揺らすヤドンを眺めていたら胸が張り裂けるかと思った。かわいいものを見続けるのは心臓に悪い。

 

 

ヤドンに囲まれて興奮が止まらないので、いったん落ち着いてお茶でも……と座ったが、お皿とグラスにもヤドンが。いよいよ発狂するかもしれない。

ヤドンのお宿に着いてからずっとヤドンに見られている。見られているけど、ヤドンと目が合ってるようで合ってない気もする。そして気がつくと、こっちがヤドンをじっと見つめてる。ヤドンのことを考えると哲学になってしまう。

 

 

そうこうしていたら日が暮れ始めた。

 

 

いよいよ、あえて放置していた特大ヤドンに取りかかりたいと思う。

 

 

なんとこちらのぬいぐるみは等身大なのだ。ヤドンの佇まいを実際に目で見て感じることができるなんて夢みたいだ。

 

 

ふかふか……それでいて肉厚……背中が広い。

それではちょっと失礼して抱かせていただこう。

 

 

あーすごい、でっかい。全身預けられる。すーごいでっかい。あーいい。ヤドンすごくいいよ。自分が子どもだったらこのサイズの動物ってこわいかも。いや、こわくないか。かわいいもんね。ヤドンはでっかくてもかわいいね~~

 

 

逆にヤドンに乗られたらどう? どういう気持ちになる?

 

 

気持ちいいーーなにこれ、この圧迫感クセになる。落ち着くなーーでもちょうど寝られない重さだなーーこのヤドン何kgあるの? 7.8kg? そりゃ重いはずだなーー

 

 

ちょっとこのまま仰向けになってみよう。

 

 

全然うまくひっくり返れない。自分の体が自分のものじゃないような。なぜかというと私の脇腹にヤドンが丸々一匹乗っかっているから。

 

 

ヤドンの捕食シーンではない。勢いをつけてセーイ!! をしているシーンだ。

 

 

ハァハァ……苦しいけど……おなかで受け止めるヤドンの重圧もグッドだよ……

ヤドンの等身大ぬいぐるみと過ごしているだけなのに息が上がってきた。

 

 

ローアングルのヤドンは迫力がある。大型動物そのものだ。口が私の肩幅より広くて、人間の頭なんか丸ごと口の中に入ってしまいそうだ。

あと下から見ても、やっぱりヤドンは何を考えてるのか分からない。

 

 

全身でヤドンの佇まいを感じ楽しんだ。

 

 

そんなことをしていたら日没だ。

 

 

食事を済ませてそろそろ寝ようとベッドに入ったら、畳の上で寝そべるヤドンが目に入った。なんだか寂しそう。一緒に寝たいけど、シングルベッドだからな……

 

 

試しに隣のベッドから友人をどけてヤドンを置いてみた。嘘みたいにしっくりくる。整骨院にこういう患者さん、よくいる。

 

 

なんか隠し撮りのお泊りスクープ写真みたいになっちゃったけど……。ゆっくりおやすみヤドン……。

等身大のヤドンと無数のヤドンに見つめられながら眠りについた。

 

 

ヤドンのお宿は、気が狂いそうになるほどヤドンがいてまさにパラダイスだった。

本当に大変いいお宿でございました……

 

 

 

 

ヤドンでラッピングされたフェリーで帰ってみる

 

帰りは小豆島の土庄港から高松港までヤドンのフェリーに乗ってみることに。

 

車ごと乗船できるような大きなフェリーだ。船体に描かれたでっかいニコニコのヤドンがお出迎えしてくれた。

 

 

船内はもういきなりヤドンだらけだ。ヤドンに見惚れて階段を踏み外さないように気をつけたい。

 

 

階段を下りて振り返ったらモンタージュみたいになっていたヤドン。

 

ここのゆっくりこっちを見てくる流れが好きだ。

 

 

壁一面の見事なヤドンの輪を発見した。圧巻だ。

ヤドンの群れが輪を作るのは理由があって、それにはヤドンの生態が関係している。

ヤドンのしっぽの先からは甘みがにじみ出ていて、噛んでいると幸せな気分になれるそうだ。ただし栄養はない。あと、鈍感なのでしっぽを噛まれても痛くないらしい。

だからヤドンが集まるとしっぽをかじり合って自然とこういうウロボロスみたいなことになるようだ。始まりも終わりもない「完全」がここに存在している。

 

 

船内はとにかくヤドンでいっぱいだ。

壁いっぱいのどーんと大きなヤドンもいれば、

 

 

ワンポイント的に景色となじんでいるヤドンもいる。

 

 

靴を脱いで上がるスペースではゴロゴロできるのでヤドンと一緒にヤドンになれる。

 

 

あと、自動ドアが閉まると同時にぬる~っとヤドンが現れてうれしかった。ヤドンの意思と関係なく動いている感じがすごくいい。

 

 

最後は黒目で笑うスーパーハッピーなヤドンをどうぞ。

 

そんなこんなでヤドンに夢中になっていたら、あっという間に港に到着してしまった。

夢のような1時間の船旅だった。

 

 

 

香川県は想像以上にヤドンまみれだった

 

ヤドンのお宿に泊まってヤドンのフェリーに乗ったら、いつでもどこでもヤドンがいるのでずっと幸せだった。

ヤドンのしっぽから出る甘汁を吸うと幸せな気持ちになるらしいが、私もそれと同じ気持ちになれたかもしれない。香川県でヤドンに囲まれているうちに、いつの間にか私は吸っていたのだ、ヤドンのしっぽを。

相変わらずヤドンが何を考えているのかは分からないが、ちょっとだけヤドンの気持ちに寄り添えた気がした。

 

 

 

※ヤドンのお宿は香川県内の4つの旅館やホテルで開催中です(終了時期は未発表)。ヤドンのお宿、フェリーなどの詳細は公式サイトをご覧ください。

 

ヤドンのお宿 | うどん県×ヤドン「ヤドンパラダイス in 香川 2021」- うどん県

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